AI・データ分析のフリーランス向け案件が業界最大級
IT技術を駆使してビジネス上の課題を解決する職業に「ITエンジニア」があります。システムやソフトウェアの設計・開発・運用といった案件で活躍するフリーランスも多く、仕事の種類や報酬単価、求人情報、スキルなどについて興味のある方も多いのではないでしょうか。
この特集では、ITエンジニアの求人動向から始めて、フリーランス案件に求められる能力、給料・年収、さらに今後の動向や将来性まで詳しく見ていきます。
ITシステムへの投資やWeb開発などの活発化からIT技術者を募集する求人案件は増加傾向にあります。また、開発現場で活躍するITエンジニアの働き方として、正社員だけでなく業務委託や派遣などの契約で稼働するパターンも増えているのです。
現場でコーディングを行い開発を進めるプログラマーの需要は高いですし、上流の設計を行うスキルを備えた人材への要望が増加傾向にあります。また、プロジェクトマネジメントの経験を備えた人材は常に不足しており、求人のニーズが非常に高くなっています。
ITエンジニアのフリーランス求人は需要こそ高まっているものの、スキルセットによっては収入・報酬の面でやや低めの水準の案件も見受けられます。それだけに求人探しをする際にはいかに条件の良いものを探し出すことができるか、受注を勝ち取ることができるかが重要です。
IT業界で技術者が個人事業主として業務を請け負うフリーランスでの働き方が普及する背景として、ITエンジニアを必要とする会社の側とスキルや技術を提供するエンジニアの側でそれぞれの思惑が一致する面が多いことが理由として挙げられます。在宅ワークやリモート業務など自由な働き方を希望するエンジニアも増えていますし、副業解禁などから人材をシェアする考え方も広がりつつあります。
また、エンジニアに仕事を発注する側としては後述する即戦力を備えた人材を調達するのにフリーランスが適しているという点、エンジニアの側としては自分が追求したキャリアや技術を磨くことができるなどお互いをプロとして尊重することで、双方にとってメリットがでてくる面もあります。
正社員のITエンジニアの場合、必ずしも自分がやりたい仕事ができるとは限りません。現場経験が重要な職種だけに、やりたい仕事で経験を積めないとキャリア形成が思うようにできない面もあるのです。
フリーエンジニアが必要となる現場では、すぐにパフォーマンスを発揮できる即戦力の人材が求められます。そのため、フリーランスエンジニアとして働くには最低1年程度の実務経験が必要といわれています。顧客との商談で説明できる実績や経歴がないと引き合いがあっても、なかなか仕事の発注まで進まないということもあるでしょう。
エンジニアの育成に時間とコストがかかるからこそ、ノウハウや知識を求めてフリーランスを頼る企業もあります。必要な業務経験を積んでおりスキルをすでに身に着けた状態のフリーランスを活用すると対応スピードが向上するのです。
人材不足から正社員としてエンジニアを雇用する難易度があがっており、エンジニアの採用・育成には時間もコストもかかります。また、専門分野とは異なるプロジェクトを立ち上げようとしたときに、社内の人材だけでは経験が少ないために十分に対応できない可能性が出てきます。そこで即戦力のフリーランスの力を借りることで、社内の人材だけでは対応できない業務や開発を行うことができるわけです。
そうした事情からフリーランスのITエンジニアを募集する求人案件が増えており、仕事そのものは探しやすい傾向にあります。
フラーリンスエンジニアやゼネラリスト人材が注目されている背景にはITエンジニアに必要なスキルの種類が多彩であることが挙げられます。ITエンジニアを目指す場合にはどの種類・分野をメインにキャリアを形成していくかの選択も必要になってくるのです。
まず基本ともいえるプログラミングの仕事を行うのがプログラマー（PG）です。システム開発の分野で広く需要があり、プログラミング言語を駆使した開発はもちろん、動作やバグなどを確認するテストも担当します。ITエンジニアを目指すうえでもっとも基礎的な仕事であり、ここからキャリアをスタートさせるケースもよく見られます。
それからシステムエンジニア（SE）。プログラマーよりも少し仕事の範囲が広くなり、実際の開発だけでなくシステムの要件定義や基本設計、運用設計なども担当する仕事です。この分野で着実にキャリアを積んでいくとマネージャーやディレクターといった全体を統括する役割に就くチャンスにも恵まれます。
インフラエンジニアとはサーバーやネットワークなどのインフラ環境を設計・運用する役割を担当することです。ネットワーク社会ではこのインフラがきちんと機能していることが大前提となっており、万一問題が発生すると業務そのものが滞ってしまうようなトラブルが起こりかねません。特に現在はセキュリティ方面の対策が重視されています。
システムエンジニアのキャリアアップの選択肢ともなっているのがプロジェクトマネージャー（PM）です。プロジェクト全体の責任者として要件定義や基本設計の土台となるクライアントとの調整、プロジェクトのスケジュール管理、プログラマーやデザイナーなど現場で働く人たちの統括などを担います。これがITエンジニアのキャリアにおけるひとつの目標ともいえるでしょう。
これだけ多くの種類があるわけですから、仕事内容も多岐にわたります。そのすべてを完璧にこなすのはなかなか難しく、プロジェクトマネージャーやITコンサルタント、ITアーキテクトのような上流工程を担当するゼネラリスト人材を目指すか、特定の分野においてエキスパートになることでITスペシャリストのようなレアスキル人材を目指すか、これがキャリアを追求していくうえでのターニングポイントにもなります。
以下では、ITエンジニアの一般的な業務内容についてみていきましょう。
どのようなシステムを作るのか、ヒアリングや業務観察など行いながら企画をまとめていきます。すぐに設計を開始できるわけではなく、クライアントの要望・指示をふまえ事前の検討から進めていく必要があります。現場で作業を担当するスタッフ全員が目標とするべきことについて認識共有できるような企画書・仕様書を作成することも求められます。
IT案件のメインともいえるのが開発業務です。この場合、先述したプログラマーのように直接開発を担当するケースと、システムエンジニアやプロジェクトマネージャーのように実際の開発はプログラマーに任せ、運営や統括、設計などに専念するケースとに分けられます。
システムが正常に機能するために必要なのが運用・管理です。規模の大きなシステムともなると開発作業も分業で行われるようになるため、それぞれのプログラミングが個々だけでなく全体でもうまく作動するかどうかを確認し、要件定義や基本設計で求めている役割を果たすことができるかを確認します。
また開発が終わった後にも継続してセキュリティ対策やデータのバックアップ、システムのアップロードなどを担当します。ITエンジニアを常駐させていない企業の場合はフリーランスにこの役割を任せるのが一般的です。
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これだけ種類も多く、さまざまな役割があるとITエンジニア全体の年収を把握するのが難しくなります。レアスキル人材やプロジェクトマネージャーのように選ばれて雇われるタイプと、ITエンジニアが不足しているので補充される形で雇われるタイプとでは当然単価も違いますし、年収にも大きな差が出てきます。
全体的な傾向としてもっとも多いのが年収400万～450万円の範囲と言われています。次いで450万超～550万円。ですから全体平均としては450万～500万円程度となるでしょうか。ただ高収入の契約になると700万円を越えるケースも見られます。
これからITエンジニアとしてのキャリアを追求していく場合には年収600万円を超えることがひとつの目標になるでしょうか。
正社員の場合、安定した雇用環境で昇給が期待できます。ですから全体の平均とかなり近い水準になることが多く、30代で年収450万～550万円程度となります。ただ安定した年収水準を確保できる一方、飛びぬけた高収入を得られる機会が少なくなります。
例えばフリーランスのITエンジニアの中には年収1000万円、さらには1200万円を超えるケースも見られます。その一方で不安定な雇用環境で低い年収水準が続くケースもあるので、安定をとるかキャリアの飛躍と高収入を目指すか、選択が求められる部分も出てきます。
30代前半までは会社員で働きエンジニアとしての基本的なスキルを身につけ、その後フリーランスに転身して幅広い分野で活躍する、というキャリアプランで活躍している人も見られます。
ITエンジニア案件の単価については、仕事の種類によってかなり異なります。プロジェクトマネージャーともなると150万円を超える単価も珍しくありませんし、規模の大きなプロジェクトやエンド直、元請などの商流が浅い案件であれば、さらに高い単価が得られることもあります。
それに対してプログラマーの場合は、単価の幅は案件により様々といえるでしょう。50万～60万円程度の比較的低い単価に抑えられている傾向も見られます。平均すると相場は月の単価で60から70万円程度でしょうか。また、運用・管理の場合は継続的に仕事を担当する必要があるため、ひとつの案件ごとの単価は低くなる傾向が見られます。
IT系のフリーランス案件では、副業のように複数の案件を掛け持ちで担当することもできるため、スケジュール管理をうまくできるかどうかも年収アップを目指すうえでのひとつのポイントとなるでしょう。
多彩な役割を担う必要がある以上、必要なスキルも幅広い範囲に及びます。ただ、すべてのスキルがないとITエンジニアになれないわけではなく、たいていは基本的なスキルを身に着けたうえで、後は現場経験を積みながら学んでいくことになります。その意味では向上心や積極性が求められる職種でもあります。
やはり基本中の基本となるのが基礎IT知識です。プログラミング、開発に欠かせないプログラミング言語はひと通りカバーしておきたいところです。なお、プログラミング言語にもさまざまな種類がありますが、もっとも多く利用されているのがJava、PythonついでPHP。このなかの1つは必須として踏まえておきましょう。そのほかにはJavaScript、C#、C++なども身に着けていると活躍の場が広がります。
後述するハードウェアのイメージも強いITエンジニアですが、もちろんソフトウェアの知識も欠かせません。OSはもちろんのこと、開発ツール、アプリケーション、オープンソース、さらにミドルウェア、ファイルシステムなど。
とくに近年ではスマホ用を中心としたアプリケーションの開発の需要が急増しており、フリーランスのITエンジニアの貴重な活躍の場にもなっています。
入出力に関するデバイスや装置、メモリ、プロセッサ、バスなどに関連して、プログラミングが正常に作動し、システムが機能するためのハードウェア環境を構築する知識・スキルです。ソフトウェアと同様、技術の進歩によって環境が大きく変わって行くため、リアルタイムで知識・スキルをアップデートしていく努力や向上心も欠かせません。
現代ビジネスはデータの時代ともいわれています。データベース（DB）の管理・運用はもちろん、データの操作、SQLなどでのデータ抽出、データベースそのものの設計、トランザクション処理など、膨大なデータを蓄積・管理しつつ有効利用するための環境づくりがITエンジニアの重要な役割になっています。
後述するセキュリティともかかわってきますが、安定した通信環境で安全に利用できるネットワーク環境を構築するためのスキル・知識です。ネットワーク管理、データ通信の制御、通信プロトコル、ネットワーク方式などに関する幅広い知識が求められます。
データと並んで現代ビジネスにおける最重要ポイントとも言われるのがセキュリティです。膨大なデータを扱い、そのデータの価値が高くなればなるほどシステムの安全性が問われ、セキュリティの重要性が増していくことになります。セキュリティ対策の手法に関する知識はもちろん、相応しい対策を行うためにも情報セキュリティの種類や管理方法、マルウェアなどの想定される脅威に対処する知識なども欠かせません。
基礎ITスキルにも分類されますが、ソフトウェアエンジニアとして働くうえでプログラミングスキルは当然必須です。IT分野では、Java、C++、C#などが代表ですが、業界によりもとめられる言語経験はことなります。Web系の開発案件では、PHP、Rubyなどスクリプト言語が必要です。
システムやプロジェクトの規模が多くなることで分業やチームでの活動が多くなっているのもITエンジニアの特徴です。もはや一人で黙々とプログラミング作業にいそしむ時代ではなく、スタッフ同士の連携や情報の共有、さらにはクライアントとの調整といったコミュニケーションスキルも欠かせないのです。特にプロジェクトマネージャーなど、管理する立場を目指すうえではこれが重要になります。
コミュニケーションスキルを補足する形で求められるのがドキュメント作成スキルです。クライアントへの報告だけでなく現場スタッフへの連絡や情報の共有のためにもドキュメント作成スキルが問われます。要件定義書や基本設計書といった基本的なドキュメントから単体テストの仕様書や結合テストの仕様書などさまざまな文書を作成する必要があるからです。
ITエンジニアを巡る状況から見て高単価で契約できるフリーランスエンジニアの特徴には「レアスキル人材」と「ゼネラリスト人材」の2種類を挙げることができます。
レアスキル人材、つまり企業からの需要に対して、ほかのエンジニアにはなかなか備わっていないスキルを持っていればピンポイントで「この人が欲しい」と積極的に採用してもらえるチャンスが大きくなります。そのスキルがレアで高いレベルであればあるほど報酬の単価も高くなるでしょう。
一方ゼネラリスト人材は幅広いニーズにこたえられる点で需要があります。先述したように、ITエンジニアにもさまざまな役割があり、あるプロジェクトで活躍したエンジニアが別のプロジェクトでも活躍できるとは限らないのです。
それだけにエンジニアには専門性だけでなく汎用性も求められることになります。幅広い分野で実績を残していたりマネジメント経験があるゼネラリスト人材は即戦力として役立つだけでなく、さまざまな業種から誘いの声がかかり、高単価で契約するチャンスに恵まれます。
これから企業・ビジネスのIT化がさらに加速していくことでITエンジニアの需要はますます伸びていくことでしょう。一方で業務の細分化が進むことで先述したゼネラリスト人材とレアスキル人材のどちらを目指すかキャリアの選択が求められる傾向が出てくることも予想されます。
テクノロジーの進歩がITエンジニアの環境に影響を及ぼすことも多く、今後は人工知能やIoTといった高度な技術やネットワーク環境を有効に活用するための仕事が増えていく可能性が考えられます。それからVR関連がエンターテイメントのみならず観光や教育などの分野でも需要が伸びているため、これらの幅広い分野で活躍の機会が増えていくことでしょう。
最終的にはレアスキル人材にしろゼネラリスト人材にしろ、「自分にしか出せない価値」を身に着けることが高単価・高収入を実現するためのカギとなるでしょう。簡単に言えば「この仕事は彼/彼女にやってもらうしかない」と思わせるような付加価値と評判を獲得することができるか。常に向上心を持ちつつ、自分のスキル・知識を磨いていくようなキャリアプランが望まれるところです。