PMOの仕事内容
これらPMOの役割を担っていくためにはさまざまな仕事をこなすことがもとめられます。
プロジェクト運営事務局
全体のプロジェクトを運営していく事務局としての役割。それぞれの部署のマネジメントを手掛けつつ、プロジェクト全体を円滑に運営していくための環境づくりと維持を日々行っていきます。PMをサポートしつつ、PMO同士も連携しながら仕事を行っていくことになります。そのプロジェクトの中枢頭脳といったところでしょうか。
内部基準や標準化
メールやシステムの利用といった内部基準を標準化する仕事もあります。多くのスタッフが参加するプロジェクトの場合、こうした内部基準を標準化しておかないとAの部署では使えるアプリケーションがBの部署では使えない、メールのやりとりが煩雑になりすぎて時間ばかり食ってしまうといった問題が起こりかねません。統一したルールを作り、部門間の連携も含めてプロジェクトの進捗をスムーズに進めていくための環境づくりが欠かせないのです。
PMOに求められるスキル
こうした役割や仕事内容をこなすためには幅広い知識やスキルが求められます。キャリアの最初からすべてを身に着けている必要はありませんが、経験を積みながら知識とスキルを蓄積させてPMOとしてさまざまなプロジェクトに参加できるよう目指していくことになります。
IT業界全般に通じる幅広い知識
当然のことながらIT業界全般に通じる幅広い知識が欠かせません。「この分野はよくわからないので…」などと言っていてはPMOとしては務まりませんし、いざPMOとしての役割が求められたときにどうしたらいいかわからないではマネージャー失格です。基本的な知識を幅引く身に着けたうえで担当するプロジェクトに関連する知識を深めていく、そんな向上心も求められます。
文書作成スキル
資料や各種書類の作成はもちろん、報告書やプレゼンテーションにおいて文書作成スキルが求められます。ワードやエクセル、パワーポイントといったソフトを使いこなすスキルはもちろん、文章力そのものも必要です。
コミュニケーションスキル
マネジメントにはコミュニケーションスキルは必須。管理職という面もあるため、部下にあたるスタッフとのコミュニケーションはもちろん、PMやクライアントとの間に信頼関係が構築できるようなスキルも必要です。
開発スキル
実際に開発作業を行うのはエンジニアやプログラマーですが、その内容の把握や進捗状況の確認、課題の解決などの際にはやはりPMOにも一定レベルの開発スキルが求められます。少なくとも「何をやっているかわかる」程度の知識は欠かせないでしょう。
あまり開発についての知識・スキルに無知だと現場のスタッフとのコミュニケーションが難しくなるだけでなく、リーダーとしての資質を疑われてしまう恐れも出てきます。
トラブル対処スキル
万一トラブルや課題が生じたときに対処できるか。自分が担当する部門内で解決できるトラブルだけでなく、他の部署との協力やプロジェクト全体で取り組まないと解決できないトラブルに対する対処能力も求められます。状況を冷静に分析し、理論的かつ説得力のある形での解決策を迅速に見出す。そのためにも普段から状況をしっかりと把握し、トラブルのリスクを想定し、万一起こったときにはどのような対処方法がベストなのかを検討する。そんなリスクマネジメントも重要なスキルとなるでしょう。
PMOの年収
まだ日本ではなじみが薄く、現場で実際に活躍する機会も限られているので平均年収のようなデータはまだ存在していません。ただしITプロジェクトの推進に欠かせない重要な役割を担う仕事だけに高収入が期待できます。相場としては500~700万円程度といったところでしょうか。
PMの平均年収が600~800万円程度のため、PMOでもPMに近い年収を期待できます。そのため、PMにはスキル不足とされたSEのキャリアチェンジとしてもPMOはおすすめです。PMOでプロジェクトマネジメントの経験を積み、そこからさらに上の責任者としてPMを目指すことも可能だからです。
正社員の平均年収
プログラマーやエンジニアから正社員として現場でキャリアを積みながらPMOになるケースも多いため、この仕事を担当する環境になる段階ですでにかなり年収が高い水準に達していることが多いのも特徴です。PMOとしてのキャリアをスタートさせた段階で年収600万円を超えていることも珍しくはないでしょう。
フリーランス案件の単価相場
フリーランスのPMO案件の報酬単価はプロジェクトの内容や経験によって大きな差が出てくるため全体の平均を出すのは困難です。ただし、実際の求人では80~120万円程度のものがよく見られるため相場といってもよいでしょう。長期にわたるプロジェクトや規模の大きなプロジェクトとなると150万円を超えるケースも出てきます。
しかしながら、こうした高単価の案件には豊富な経験やスキルが問われるなどハードルが高く、PMOならだれでも担当できるというわけではありません。
PMOの需要と将来性
日本ではまだまだこれからといった印象のPMO。それだけに「伸びしろ」はたくさんあります。今後需要が高まっていくのは間違いないでしょう。
ただ一方で将来性に関しては適正が求められる部分がでてくることが予想されます。もともとPMOという職種そのものがプロジェクトの専門化や細分化によって生まれた面があるだけに、PMOには高度なスキルや専門知識が求められます。
こうした高い要求に応えられる人はフリーランスとして引っ張りだこになり高収入も期待できる一方、なかなか応えられない人は低めの単価を請け負い続けなければならない、または仕事そのものを見つけられない可能性も出てきます。
PMOそのものは将来性が期待できる一方、高いハードルをクリアできるかどうかが問われることになりそうです。
コンサルティングファームで需要が高い
PMOが注目されている背景にはコンサルティングファームの求人案件において業務委託で稼働するフリーランスの需要が高まっている点が挙げられます。現代では経営戦略や事業課題の解決はIT化や情報化と密接に関わるため、大手コンサルティングファームでもDX(デジタルトランスフォーメーション)に関するプロジェクトが増加しているためです。
ともすれば、納期や開発工数がかさみがちなITプロジェクトの円滑な進行に関わるものとしてPMOの役割やスキルが注目されているのです。もともとPMOにはトラブル処理能力が求められますし、プロジェクトを成功へと導くためのスキルやマネジメント能力はコンサル出身者にも適しているからです。
コンサルタントがPMOとなる理由
そのためSE(システムエンジニア)がキャリアアップの過程としてPMOを目指すだけでなく、コンサルタントがキャリアパスの一環としてPMOになるケースも増えているのです。
これまで何度か触れたようにIT業界に限らずビジネス全体でプロジェクトの大規模化や専門化が進んでいます。そうなるとコンサルティング業界でもそうした環境に対応するためのスキルや知識が求められます。かつてのように税務や法務といった分野だけでなく、プロジェクトの推進に深くかかわる形でマネジメントを行っていく必要も出てきているのです。
そのためPMOとしてのスキルや知識を身に着けることで「時代が求めているプロジェクトマネジメント」を提供できるケースが増えていると考えられています。逆に言えばプログラマーやエンジニアからでもPMOを目指して正しいステップを踏みキャリアチェンジをおこなうことで、マネジメント業務も担当できる環境になりつつあるともいえそうです。
PMOの将来性
将来性に関しては先ほども触れたように需要は間違いなく高まっていくものの、求められるスキルや技術がどんどん高くなっていくことが予想されます。現代ビジネスは移り変わりが非常に激しいだけにPMOになれたからといって油断せず、つねに最新のビジネスの動向や専門知識を学び続けながらキャリアを磨きをかけていく意識が求められるでしょう。
またPMOをPMへの足がかりにするケースが今後増えていくことが予想されます。PMOをゴールにするのではなく、キャリアの一つの過程と位置付けたうえで目指していく。そんなアプローチも可能になっていくことでしょう。