セキュリティエンジニアの仕事内容
ソフトウェアやネットワーク・インフラなどITシステムに関連したセキュリティ業務を担うのがセキュリティエンジニアの役割です。ただその仕事内容の範囲は年々拡大しており、セキュリティ業務そのものが専門分化していくとともにエンジニアには幅広い業務を担当できるスキルや知識が求められるようになっています。
企画・提案
セキュリティのためのソフトやシステムを作り出すための企画、提案力が求められるのもセキュリティエンジニアの大きな特徴として挙げられるでしょう。これまでのようにシステムにセキュリティソフトなどを組み入れるのではなく、セキュリティのためのシステムやソフトウェアそのものを企画する必要も出てきますし、企業や企業が提供しているネットワークの中でいかに効率性と確実性を備えたセキュリティ環境を維持・管理できるかを見越した提案も必要です。
まったく新しいソフトウェア・ハードウェアを生み出す想像力や発想力よりもシステム・ネットワークの全体像を把握したうえで効率的なセキュリティ環境を企画できるかどうか、豊富な知識と柔軟な提案力が問われる面があるわけです。
また、企業からセキュリティ環境の構築の依頼を受けた場合にはそれぞれのクライアントの環境に合わせた企画・提案が求められますし、予算の範囲内で求められるサービスを提供できるかといった視点からも企画・提案力が問われる部分もあります。
設計
そして設計。セキュリティほど即効性が求められるエンジニアの仕事も少ないでしょう。すぐに効果が挙げられるセキュリティ環境のために設計を行います。セキュリティ・システム環境が広ければ広いほど、扱っている情報が多ければ多いほど複雑なセキュリティ環境を構築していく必要があるため、エンジニアには専門的かつ幅広い知識が求められるようになります。
単にシステム面のセキュリティ設計だけでなく、必要な機器を導入・選択するのも大事な役割です。そうなると他の問題も出てきますし、既存の機器との相性、現場がその機器を使いこなせるかといった視点からの設計も求められるでしょう。この設計の点でも柔軟性が問われることになるわけです。
実装
設計の次は実装、エンジニアとしての専門的な知識がもっとも問われる部分といってもよいでしょう。ネットワーク、ソフトウェアなどセキュリティをきちんと機能させるためのプログラムの作成を行っていきます。
その際には現代のセキュリティに欠かせないセキュアプログラミングなど最低限の知識が求められる一方、ケースバイケースでさまざまな知識が問われるようになります。例えばクライアントのシステム環境、パソコンをはじめとした機器の性能によっても行うプログラムの内容が変わってきます。いくら優れたセキュリティ環境でも現場のハードウェアに負荷をかけてしまうようなシステムでは業務に支障をもたらしてしまう恐れがあります。
安全性が高いだけでなく、「きちんと動いて」はじめて質の高いセキュリティ環境となるわけですから、高度な知識で高いセキュリティ環境を追い求めるだけではいけないわけです。脆弱性をしっかりカバーしつついかに快適に動く環境を追及できるか。ここにも情報通信の分野に特化したセキュリティエンジニアの手腕が問われるでしょう。
テスト
膨大な情報を扱い、広大なネットワークを構築しているシステムの場合、ちょっとしたプログラミングの不具合が全体に大きな支障をもたらしてしまうことも少なくありません。それを防ぐためは実用化する前にテストが欠かせません。
このテストの目的は2つ、まず「ちゃんと機能するかどうか」。そしてもうひとつはセキュリティ環境の改善の余地があるかどうかを確認するかです。セキュリティに脆弱性がないか、「抜け道」のようなものが存在しないかどうかをわざと攻撃を行うことで確認します。
そのうえで万一脆弱性が発見された場合、あるいはさらなる向上・改善の余地があった場合にはそれを行う。このテストと改善の繰り返しを行うことでよりセキュリティ環境に磨きをかけていくことができます。
難しいのは脆弱性を確認するための意図的な攻撃の内容です。自分の都合の良い、つまりきちんと撃退できる攻撃だけを繰り返してもテストにはならず、悪意を持った人たちがどのようなアプローチで攻撃を仕掛けてくるかを想定したうえで自分のプログラムにとって「都合の悪い」攻撃も試してみる必要があります。そのためには築き上げたセキュリティ環境やシステム・ネットワークそのものの状況に合わせて攻撃方法を選択する必要も出てきます。
運用・保守
セキュリティは継続的に機能してはじめて意味を持つものです。しかもサイバー攻撃とセキュリティの関係はいたちごっこにも通じる部分があり、最新のサイバー攻撃を防ぐために新たなセキュリティ環境が生み出され、さらにそれを打ち破るための新たなサイバー攻撃が生み出され…が繰り返されています。
ですからセキュリティ環境の構築は完成したら終わりではなく、つねに状況に合わせたアップデートが欠かせません。ある意味開発以上に最新の知識・スキルに基づいた業務が求められる部分です。
またサイバー攻撃だけでなく、システム・ネットワークの利用環境によってセキュリティに不具合が出てくるケースも見られます。システムを利用していくうちに扱うデータの量が膨大になったことでセキュリティ環境が適さなくなるといったケースも出てくるからです。こうしたさまざまな面で刻一刻と変化していく状況に合わせた保守管理が求められます。
セキュリティエンジニアの求人の多くはこの保守管理の役割を期待されていると考えてもよいでしょう。
セキュリティエンジニアの年収・フリーランス単価相場
こうした仕事内容からセキュリティエンジニアは現代ビジネスシーンで非常に重要性の高い業務であることがわかります。それだけに年収も上昇傾向にあり、他のエンジニアの仕事に比べると若干ながら高い水準にある傾向が見られます。
正社員で働くセキュリティエンジニアの平均年収
会社員とフリーランスの収入の違いは雇用環境はもちろんのこと、業務内容とも深く関わっています。先ほども触れたように正社員としてセキュリティエンジニアを雇用する場合、継続的なシステムの保守運用が重要な業務になるのに対し、フリーランスの場合は企画・提案や設計、実装の仕事が多くなるからです。
そして企画・提案や設計、実装の仕事は内容によって単価が大きく異なるため、一概に正社員よりもフリーランスのほうが年収に個人差が出やすい傾向が見られます。
その点、正社員のセキュリティエンジニアの年収は相場が出しやすい面があり、全体で600万円~760万円程度といわれています。やはりかなり高い水準にあるのは間違いないでしょう。
フリーランスのセキュリティエンジニアの単価相場
正社員のところで触れたようにフリーランスのセキュリティエンジニアの年収は個人差が出やすく、全体の相場を出しにくい面もあります。また単価の相場も業務内容や契約期間によって違いが出てきます。保守運用の場合は契約期間が長期に及びやすいのに対して企画・立案や開発の契約期間はそれほど長くない一方、単価が高くなる傾向が見られます。
初級スキルの単価では50万円程度のものがある一方、上級スキルの単価では100万円を超えるものもあります。どのレベルの仕事をどれだけ担当するかによって収入が決まってくるわけです。上級レベルで活躍しているフリーランスのセキュリティエンジニアの中には年収1000万円を超える人も多く、単価が100万円を軽く超える案件を継続して扱っているケースも少なくありません。
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