データサイエンティストの将来性って?需要がなくなる?気になる疑問を徹底解説
ビッグデータを扱う職業「データサイエンティスト」への注目が急速に高まっています。データサイエンティストは統計学やコンピュータサイエンスなどの技法を駆使し、企業のビッグデータの整理・構造化・分析を行い、業務改善やビジネス上の課題解決に取り組みむ仕事です。データサイエンティストは最先端の仕事というイメージがある一方で、将来性や今後の需要について疑問視する声があるのも事実です。
本記事では、データサイエンティストの将来性や需要といった気になる疑問を徹底解説していきます。
目次
データサイエンティストの将来性
まずは、データサイエンティストの将来性について説明します。
ビッグデータの活用が求められている
ビッグデータの活用は、今やあらゆる企業の課題となりつつあります。ビッグデータをうまく活用することで、新たな事業やサービス、異業種とのコラボレーションといったビジネスチャンスを捉えることが可能となると言われており、企業としては経営戦略を定めるためもデータ分析を進めたいと考えています。しかしながら現代のビジネスは、従来のような表面的かつ一面的なデータ分析だけでは十分とは言えません。多様化する需要やニーズに対応するためには、一見無秩序とも思える膨大なデータの中に潜んでいる傾向を明らかにすることができる、機械学習や統計的な分析の手法が必要不可欠です。そうなると当然、それを扱えるデータサイエンティストの需要は高まることになります。
データサイエンス教育の強化が進んでいる
文部科学省は、令和元年に「AI戦略等を踏まえたAI人材の育成について」と題した資料を発表しています。この発表によると、データサイエンス教育の強化を進めるとし、大学の数理及びデータサイエンス教育の全国展開については12億円もの概算要求が記されています。
このように、データサイエンス教育は国を挙げて進められており、それほどデータサイエンスの重要性は高いと言えます。こういった人材育成の動きからも、データサイエンティストは将来的にも需要があると言えます。
経験豊富なデータサイエンティストは少ないため、獲得競争が過熱している
IT業界は慢性的な人手不足です。特に、企業が是が非でも確保したいスキルセットや実務経験を備えた人材はその絶対数が限られています。日本国内の求人需要に限っても、データサイエンティストだけで数万人が不足しているといわれているほどです。そのため、企業間での獲得競争は過熱しています。具体的には、他の会社の人材をヘッドハンティングしたり、一定数の人材をまとめて確保するために会社ごと買収したりといった具合です。しかし、もともと日本にはデータサイエンティスト自体の数が圧倒的に少ないため、そうした手法にも限界があります。所詮は限られたパイの取り合いであり、業界全体の需要の高さに対して供給は少ないままということになってしまうのです。
データサイエンティストの需要が高い業界
データサイエンティストが求められているのは、IT業界だけではありません。そのニーズはあらゆる業界にあるとも言えますが、各業界ごとにその理由を見ていきたいと思います。
IT業界
IT業界では、データサイエンティストの需要は非常に高くなっています。AIやビッグデータに関連する開発案件を受注しているような企業であれば、データサイエンティストはまさしく必要としている存在でしょう。開発受託だけでなく、ITサービスを提供しているような場合でも、作業の効率化や自動化、新規事業の発見を実現するための分析基盤が必要となってきます。そうした分析基盤等の開発を推進する存在として、やはりデータサイエンティストは求められています。
金融業界
金融業界では、顧客へのオペレーション改善などにデータサイエンティストが必要とされています。例えば、AIやビッグデータを活用することで、ローンの審査やクレジットカードの不正利用を検知するといったことも可能となります。また、将来的な窓口業務の無人化や、生体認証技術の実現といったテーマにも、AIの技術などが求められてきます。こうした金融業界ならではの課題においても、データサイエンティストの活躍が期待されています。
不動産業界
不動産業界においては、住宅価格指数の分析や、賃貸物件の入居率改善といった課題が存在しており、これらを解決するためにデータサイエンティストの需要が高くなっています。他にもマンション開発に最適なエリアの発掘や、アプローチの効果が期待できる顧客層の開拓などにもAI技術の応用が必要となります。こうした業務は外部へ委託している不動産企業も多いですが、大手不動産企業の場合、自社でデータサイエンティストを抱えているケースもあるようです。
製造業界
製造業界の現場の多くでは、機械化が進められており、ロボットなどを活用して製造が進められています。そのような状況において、機械の故障は生産ラインに大きな影響を及ぼすため、未然に防ぐ技術が必要となってきます。AIの技術を応用すれば、故障を予見したり、故障を防ぐための最適なメンテナンスのタイミングを算出できます。これらを実現するためにも、データサイエンティストのスキルが必要となってきます。そのほかにも製造業のデータ活用の基盤づくりとしても、データサイエンティストは必要とされています。
広告業界、コンサルティング業界
広告業界やコンサルティング業界では、顧客データの管理とマーケティング活動の最適化が求められています。こうした分析基盤を作るために、データサイエンティストの需要が高まってきています。広告やマーケティング活動では、多くのデータからもっとも効果が高いと見込まれる広告手法を選択することが重要です。また、コンサルティング業界においても、顧客に解決案を提示するには根拠となるデータが必要となります。特に広告業界やコンサルティング業界は、ITやテクノロジーの領域と関連性が深いこともあり、データサイエンティストが活躍できる業界だとも言えるでしょう。
データサイエンティストがなくなると言われる理由
データサイエンティストの需要はますます高まるばかりですが、その一方で、「データサイエンティストはいずれ不要になる」などといった声も聞かれるようになっています。なぜ、そうした意見がでるようになったのか、その理由について探っていきます。
AI技術の進化で仕事が減る
AIの進歩は目覚ましいものがあります。既存のデータの分類はもちろん、それに基づいてある程度の未来予測もできるようになっています。たとえば、膨大な数の顧客の購入履歴を分析することで、今後必要となる商品の在庫数を予測するといった具合です。また、医療の分野では医師が気付かなかった患者の症状をAIが指摘するという形で診断支援をおこなうという試みも実施されています。現段階ではあくまでも限定的な活用にすぎず、AIの予測や指摘がすべて正しいというわけでもありません。しかし、今後、人間の判断力を完全に凌駕するAIが登場する可能性は否定できないところです。また、機械学習を使った予測モデルなどの適用を専門技術なしに適用できるAIプラットフォームの普及により現在データサイエンティストが行っている業務が不要になるという考え方もあります。
そうなったときには、もはやデータサイエンティストは必要ないというわけです。たとえそこまでいかなくとも、AIの精度が高まるにつれてデータサイエンティストの活躍の場が減っていくという事態は十分に考えられます。
役割の細分化や専門化により職種名が変わる
データサイエンティストはその定義自体が曖昧です。データサイエンティストという名が広く知られるようになったのは2009年頃からですが、言葉だけが独り歩きし、期待感が異様に高まっていったきらいがあります。そのため、「データサイエンティストを雇用すればさまざまな問題が解消すると思っていたのに、実際はそんなことはなかった」という、雇用者の願望と人材の持つスキルの不一致が問題視されるようになってきました。この不一致を解消するために必要なのが役割の再分化や専門化です。データサイエンティストと混同されやすい職種として「機械学習エンジニア」「データエンジニア」「データアナリスト」などの職種がありますが、徐々に区分や役割分担が明確になってきています。
そして、その過程でデータサイエンティストという名前も実情に相応しいものに変わっていくと考えられています。つまり、そうなった場合は、もはや旧来のデータサイエンティストという呼び名や肩書は不要だというわけです。
人材育成が加速し、人余りの状況に
データサイエンティストの数は、需要の高さと比べて圧倒的に少ないのは事実です。そのため、日本においても人材育成が国を挙げて進められています。ただ、人材育成の急速な加速は人余りの状況を作り出してしまいがちです。そもそも、データサイエンティストの数が足りないというのは、期待されたスキルを有していない人が多かったからにすぎず、真に有能なデータサイエンティストが増えればそれほど多くの数はいらないともいわれています。しかしながら、淘汰されないような高いスキルや能力を有していれば、データサイエンティストとして淘汰されることはないとも言えるでしょう。
データサイエンティストに必要なスキル・知識
ここからは、データサイエンティストに必要とされるスキルや知識について見ていきます。
ビジネスサイドの課題解決力
データサイエンティストに求められる最終的なゴールは、企業のビジネスサイドの課題解決です。ビジネスに関する基礎知識はもちろん、クライアントにデータ分析の結果を理解してもらうための、わかりやすいレポートづくりも大切です。また、データサイエンティストとして長く活躍するためには、データ分析をするだけではなく、課題解決のための戦略立案やそのサポートとなる情報提供といった、一歩踏み込んだ内容も求められてきます。新事業の立案なども提案の内容に含まれてくることもあるため、経営的なセンスも必要となってくるでしょう。
コミュニケーションスキル
コミュニケーションスキルも、重要な要素の一つです。情報収集や課題解決のためには、関係者と円滑にコミュニケーションをすることが求められるからです。そのほかにも、データ分析の結果をわかりやすく説明したり、関係各所と調整を図るといった際にもコミュニケーションスキルは必要です。
Python、R言語などのプログラミング・ITスキル
プログラミングスキルやITスキルは、データサイエンティストとして必須です。データ分析の作業ではPhthonやR言語といったプログラミングを用いることが多々あるため、これらは確実に扱えるようになりましょう。また、プログラミングだけでなく、SQLなどデータベースに関する言語にも触れることになります。そのほかにも、業務を助けるツールを利用することも多いため、ITツールを扱えるスキルも必要となるでしょう。
機械学習の知識やスキル
ビッグデータの解析を進めるには、機械学習の知識やスキルが必要となってきます。機械学習とは、人工知能(AI)に含まれる要素の一つで、機械学習ではデータを反復学習させることで、その法則性や事象の特徴をつかむことができます。人間の手では不可能な量のデータも、機械学習を用いることで効率的に分析が可能となるのです。専門性の高い内容にはなりますが、だからこそ企業やクライアントからデータサイエンティストが必要とされているとも言えるでしょう。
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数学や統計学の知識
データ分析の作業では、数学や統計学を応用して作業を進めていくため、最低限、高校レベルの数学知識が必要です。また、統計モデリングなどを使うため、これらの内容も理解しておくとよいでしょう。データ分析の際にBIツールを用いる場合なども、統計学が必要となってきますので、数学と統計学は合わせて備えておきたい知識です。
将来性の高いデータサイエンティストになるためには
ここからは、将来性の高いデータサイエンティストとなるためのポイントについて見ていきます。データサイエンティストとして長く活躍していきたいと考えるのであれば、チェックしてみましょう。
インプットとアウトプットを積極的に行う
データサイエンティストとして長く活躍していくには、インプットとアウトプットをそれぞれ積極的に行うことが大切です。
インプットとしては、データサイエンスに関する最新の情報や事例などを常日頃から収集するようにしましょう。国内だけでなく海外も含めて、データサイエンスに関する論文やブログ記事などを読んだり、学会に足を運ぶことも方法の一つです。特にデータサイエンスの領域は、日々進化を遂げています。常に最新情報を捉えておく積極的な姿勢を持つことで、知識に長けたデータサイエンティストになるでしょう。
アウトプットとしては、やはり第一に実務経験を積むことが挙げられます。実務において、積極的に新しい手法などに取り組んでみるとよいでしょう。もちろん業務に支障がないことが前提ですが、手を動かすことで学習の深まりが変わります。そのほかにも、ブログやSNS、Githubなどを介して情報発信を試みることで、自分の知識を整理することもできます。インプットした情報を自らの手でアウトプットしていくよう、日々心掛けていくことをおすすめします。
資格を取得する
将来性の高いデータサイエンティストになるためには、資格取得も有効な手段です。資格を取得することで自らのスキルをアピールできますし、体系的に知識を得られます。ここでは、データサイエンティストにおすすめの資格を3つご紹介します。
Python3エンジニア認定データ分析試験
一般社団法人Pythonエンジニア育成推進協会が行う「Python3エンジニア認定データ分析試験」では、Pythonに関する知識を問われます。具体的には、Pythonの基礎や数学の基礎、ライブラリによる分析実践などが設問として挙げられています。Pythonを用いたデータ分析を体系的に学ぶという意味でも、まずは取得を目指したい資格です。
G検定・E資格
G検定、E資格は一般社団法人日本ディープラーニング協会が認定する資格です。G検定はディープラーニングの基礎知識や、ディープラーニングを事業活用する能力や知識を問う内容となっています。E資格はエンジニア向けの内容となっており、ディープラーニングの理論の理解や、適切な手法を選択して実装するスキルを問うものとなっています。一般的にはG検定を取得後に、E資格を取得する流れとなっています。
データベーススペシャリスト試験
IPA(独立行政法人情報処理推進機構)が行うデータスペシャリスト試験は、国家資格である情報処理技術者試験の一区分とされています。その名の通り、データベースに関するあらゆる知識を問う資格となっていますが、データサイエンティストとしてもデータベースに関する知識やスキルをアピールできるものです。一度取得すると無期限で有効な資格でありますが、難易度は高いため、事前の対策学習は必須です。なお、ステップとしては、「基本情報技術者試験」、「応用情報技術者試験」を取得したのちに挑戦すると良いとされています。
データサイエンティストの今後
AIの進化や人材育成の加速化などから将来性が危惧されているデータサイエンティストですが、実際はどうなのでしょうか。ここからは、データサイエンティストの今後について考えていきたいと思います。
AIが発展してもモデル作成や開発の仕事は残る
AIによるデータ活用の技術は日々発展し、分野によってはもはや人間では太刀打ちできないものもあるのは事実です。その典型例が、膨大なデータの集積及び分析の作業です。また、それに基づいた予測や最適化に関してもどんどん精度が高まってきています。しかし、だからといって、データサイエンティストが不要になるというわけではありません。優れたAIでも業界の慣習やデータに含まれない情報をもとにモデル作成をしたり、新たな理論を考案したりといったことは苦手です。また、将来的にもAIがそういった苦手分野を克服し、すぐに人間のスキルを超えるということはないでしょう。
AIが発展してもモデル作成や開発の仕事は残ると考えられ、そこにデータサイエンティストとして生き残る道があります。
データサイエンスに加え、業界知識やビジネス課題を解決できる人材は重宝される
今後はデータの集積や分析しかできないデータサイエンティストは淘汰されていくでしょう。なぜなら、そういったことだけならば、AIだけで十分だという時代がおそらくやってくるからです。しかし、データサイエンスに加えて、業界の知識を十分に積んでいれば話は別です。AIは、分析ができても業界の現状を踏まえた上で課題を解決する方法を提言したりはしません。したがって、それができる人材であれば、どの業界にいっても重宝されるはずです。
ただ、現状ではそのような人材は限られています。そのため、将来的には脱落していくデータサイエンティストと生き残ってさらに飛躍をしていくデータサイエンティストの2つにわかれる未来が予想されます。
今後も求められる人材になるために
膨大なデータをいかに活かすかがビジネスの鍵を握る時代において、データサイエンティストの必要性はますます高まっています。しかし、その言葉が独り歩きして理想と現実の間に齟齬が生まれているのは事実ですし、データサイエンティストと同様の役割を期待されているAIの発達も目を見張るものがあります。このままでは、おそらく多くのデータサイエンティストが淘汰されることになるでしょう。その中で、今後も求められる人材になるためには、まずAIの得意分野と苦手分野をよく理解することが大切です。
そのうえで、AIの得意分野はAIにまかせ、AIの苦手なところを補うようにすれば、多くの企業から求められるデータサイエンティストになれる可能性は高くなるでしょう。つまり、AIと競い合うのではなく、AIを使いこなせる人材になるのです。そのためには常にアンテナを張り巡らせ、技術的な知見を身につけようとする学習意欲が欠かせません。同時に、単なる技術屋に留まることなく、コミュニケーション能力を身につけることも成功のためには重要です。ビジネス側の人間と円滑なコミュニケーションを取ることができれば、得難い人材として重宝されるようになるはずです。
必要なスキルを磨き、データサイエンティストとしてステップアップをしていける道を確立していきましょう。
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