データサイエンティストになるには?必要なスキルや資格、仕事内容、将来性を解説
ビッグデータの活用が企業に求められる中、「データサイエンティスト」にも注目が集まっています。しかしながら、具体的な仕事内容や、データサイエンティストになる方法についてはわからないという人も多いかもしれません。本記事では、データサイエンティストになる方法を中心に、必要なスキルや資格、スクール情報について見ていきます。データサイエンティストに興味がある人は、本記事をぜひ参考にしてみてください。
目次
データサイエンティストとは
データサイエンティストとは、企業や組織におけるビッグデータを分析し、ビジネスにおける課題発見や企画立案、状況改善に対する施策を行う専門職のことです。ビックデータ時代の到来に伴い、データサイエンティストの需要は急速に高まってきました。IT業界はもちろんのこと、電力や金融、アパレルなど幅広い業界で求められている職種です。
データサイエンティストの仕事内容
データサイエンティストの主な仕事内容としては、以下のようなものが挙げられます。
- 企業や組織の課題の抽出
- 課題解決のためのデータ取集と抽出
- データの変換
- データの分析
- 戦略や解決策の提案
まず企業の問題点や課題を洗い出します。そして、問題点や課題を解決するためのデータ収集および分析を実施します。続いて分析したデータを元に共有するための資料を作成し、改善点などを提案していきます。その他には、ノイズなどの適切でない情報を処理するなど、様々なデータ収集における周辺環境整備も業務の一環です。
データサイエンティストの年収事情
データサイエンティストの正社員における平均年収は約690万円で、派遣社員の平均時給は約2,600円です。日本の各業界における正社員の平均年収や時給額と比較しても高めの傾向となっています。ただし、各々のスキルや経験、過去の勤務経験や業務内容などにより年収が大きく異なる職種でもあります。
データサイエンティストになる方法
データサイエンティストになる方法としては、4つのパターンが考えられます。それぞれどのような方法があるのか、詳しく見ていきましょう。
理系大学など、学校を卒業して就職
データサイエンティストになるためには、理系大学や大学院、専門学校などを卒業してから就職する方法があります。例えば、国公立大学では滋賀大学や横浜市立大学、私立大学では武蔵野大学や立正大学などにデータサイエンス学部があります。全国の各大学ではデータサイエンス学部を新設する動きが加速化しているため、今後さらにデータサイエンスを学べる学校は増加していくと予想されます。
エンジニアから転職
エンジニアから転職してデータサイエンティストになることも可能です。データサイエンティストは業務の中でプログラミングを扱うため、経験者は優遇される傾向があります。 具体的には、データベースエンジニアやWebエンジニアなどの経験者が対象です。中でも、Pythonを用いたプログラミングやライブラリを用いた機械学習、アプリ開発経験などがあれば転職時の大きなアピールポイントになるでしょう。
ただし、実務においては統計学の基礎や、ビジネス的な観点なども必要になってくるため、別途学習しておく必要はあります。
マーケター、アナリストから転職
マーケターやアナリストの経験者もデータサイエンティストとして転職できる可能性があります。マーケティング戦略を企画・立案できるマーケターや、企業の経営状態や市場の分析を行うアナリストは、いずれもデータを分析しビジネスに展開していくという意味で、データサイエンティストに近しい職種と言えます。
ただし、マーケターやアナリストから転職する場合、Pythonなどのプログラミング言語や機械学習におけるアルゴリズムなどの知識を事前に習得しておく必要があります。
社内養成、社内公募を利用
社内養成や社内公募を利用して、現在勤めている企業から転職せずにデータサイエンティストになることが可能です。企業によってはキャリアチェンジプログラムを導入し、データサイエンティストを育成しています。ただし、データサイエンティストを育成している企業はごく少数で、限定的であるというのが現状です。
データサイエンティストに必要なスキル、知識
データサイエンティストは理数系の知識なども求められるため、文系出身では困難といわれるほど専門性が高い職種です。データサイエンティストになるためには、具体的にどのようなスキルを身に着けておけばよいのか、一つずつ見ていきましょう。
分析、統計学の知識
データサイエンティストとして正確にデータを収集、解析するためには、分析や統計学の知識が必要です。統計、確率、微分積分、行列といった高校レベルの数学の内容は一通り復習し、最低限理解しておきましょう。なお、データ収集ツールや分析ツールを活用することもあるため、これらのツールを扱えるスキルも必要になります。
プログラミングスキル
データサイエンティストになるには、プログラミングスキルも必要になってきます。プログラミング言語としてはPythonやR言語が主流となっており、これらを用いることでデータ解析や分析の作業が効率化されます。最低限、PythonかR言語のいずれかを習得しておくと良いとされていますが、特にPythonはプログラミング初心者でも扱いやすいと言われています。プログラミング未経験であるならPythonから学習を始めるとよいでしょう。
論理的思考力(ロジカルシンキング)
データサイエンティストに必要とされるのは、ビジネスにおける論理的な思考力(ロジカルシンキング)です。データサイエンティストは、企業の問題点や課題点をあぶりだすことから業務がスタートします。的確に企業の課題や問題点を抽出するためには、課題点などに対して筋道を立てながら体系的に整理していかなくてはいけません。論理的思考力をもって業務にあたることは、データサイエンティストとして大切なポイントです。
ビジネスに関する知識
データサイエンティストが取り扱うビッグデータは、ビジネスにおいての課題・問題点につながるデータばかりです。そのためデータサイエンティストは、マーケティングや経営分析などのビジネスに関する知識を持ち、それぞれの企業が抱えている課題・問題点を適確にあぶり出すことができなくてはいけません。もし、ビジネスに関する知識に自信が持てない時には、ネットや書籍などを用いて事前に学習しておくとよいでしょう。
コミュニケーション能力
データサイエンティストは、クライアントや担当者にヒアリングを行いながら業務を進めていく必要があります。現場の声や要望などを的確にデータに反映するためにも、日ごろから周囲の人々と円滑にコミュニケーションをとることを心掛けておきましょう。
そのほかにも、ITの知識がない人に対しても分かりやすく説明する力も必要です。普段から専門的な説明を行うときには、「どのような立場の人にも分かりやすく伝える」ということを意識しておくと良いでしょう。また、相手に伝わりやすい表現力や言葉遣いを身につけておくと、プレゼンの際にも大きな力を発揮します。例えば、論理的に説明するPREP法などを身に付けておくとよいでしょう。
データサイエンティストになるのに役立つ資格
データサイエンティストになるために必須の資格自体はありません。ですが、実務に役立つ資格もいくつかあるので、代表的なものをそれぞれ見ていきたいと思います。
G検定、E資格
G検定・E資格は一般社団法人日本ディープラーニング協会(JDLA)が主催しており、どちらもAIの機械学習で必要となるディープラーニングの知識や実践的技術を証明するものとなっています。G検定はディープラーニングの基礎知識や、事業活用へのスキルを検定するもので、一方E資格は、エンジニアに向けた実装スキルなどを検定する資格となっています。一般的にはG検定の取得後、E資格にチャレンジするパターンが多いとされています。ディープラーニングの関連資格はG検定とE資格のみなので、受験者が年々増加している人気の高いスキルです。
Pythonエンジニア認定試験
Pythonエンジニア認定試験は2020年に設立された認定資格で、Pythonについての知識を問うものとなっています。基礎的な知識を証明するPython3 エンジニア認定基礎試験と、応用的知識を問われるPython3 エンジニア認定データ分析試験の2種類があります。
統計検定®
統計検定®は、一般財団法人・統計質保証推進協会が主催する検定試験で、統計の基礎知識や活用能力を評価するものとなっています。準1級から4級までの五段階あり、資格としても統計調査士、統計専門調査士の2種類に分かれています。データサイエンティストにとって統計に関する能力は、課題解決のためにも重要なものとなっています。これまで実務で統計を行ったことがないという人なら、取得しておくことで役に立つでしょう。
※統計検定は、一般財団法人 統計質保証推進協会の登録商標です
情報処理技術者試験
情報処理技術者試験は、IPA独立行政法人情報処理推進機構が主催している国家試験です。特にIT系の資格では珍しい国家資格となっているため、取得していることで評価を得やすくなるでしょう。情報システムやデータベースの設計・開発・運用といった内容を学べるだけでなく、業務で活用できるビジネススキルも習得できます。アナリストやマーケターなどが前職の場合、ITに関する知識や理解を深めるためにも取得しておきたい資格と言えるでしょう。
アクチュアリー資格試験
アクチュアリー資格試験は公益社団法人・日本アクチュアリー会主催の資格であり、保険業界の専門職である「アクチュアリー(保険数理士・保険数理人)」の登竜門としても有名です。保険業界や金融業界では特に人気のある資格とされていますが、その難易度は高いと言われています。第1試験では統計や確率、モデリングが出題範囲に含まれており、データサイエンティストにも関連する内容となっています。資格取得を目指さずとも、データサイエンティストとして学んでおきたい内容だと言えます。
データスペシャリスト試験
データスペシャリスト試験も、IPA独立行政法人情報処理推進機構が主催している国家試験です。数ある情報処理技術者試験の中でも難易度の高い資格としても有名で、主にデータベースの管理者や管理責任者育成を目的としています。ビッグデータ処理には非常に有益な資格ですが、事前に十分な対策をしなければ合格を手にすることが困難な資格でもあります。とはいえ、データベースに関する知識を習得できますので、教材などを活用して学習してみる価値はあります。
オラクルマスター
オラクルマスターは、Oracle Database(オラクルデータベース)の管理スキルやSQLの習熟度を証明する資格となっています。世界でもトップシェアレベルのデータベースであるOracleに関する資格のため、習得することでデータベースに関するスキルを証明できます。情報処理技術の中では比較的ポピュラーな資格で、世界共通基準の認定資格となります。オラクルマスターは、ブロンズとシルバー、ゴールド、プラチナの4種類に分かれていて、特に評価が高いのはゴールドとプラチナです。
オープンソースデータベース技術者認定資格(OSS-DB技術者認定試験)
NPO法人・LPI-Japanが主催しているオープンソースデータベース技術者認定資格は、その名の通りオープンソースデータベース(OSS-DB)に関する技術力と知識を認定するIT技術者認定試験です。試験では「PostgreSQL」を基準のRDBMS(リレーショナルデータベースマネジメントシステム)として採用しています。シルバーとゴールドの2種類があり、シルバーはデータベースシステムを活用できる技術者に付与するスキルで、ゴールドはビッグデータの活用およびコンサルティングを行える人に対する認定資格です。ゴールドを受験するにはシルバーの資格取得が必須となります。
データサイエンティスト育成向けの学校・講座
データサイエンティストになるためには、専門的スキルを効率的に学べる学校や講座を利用しても良いでしょう。学校や講座によって学習期間や事前の修学レベルが異なるので、それぞれのスキルや目標に合わせて最適なコースを選ぶようにしてください。
滋賀大学データサイエンス学部
滋賀大学データサイエンス学部では、1、2年次に情報工学および統計学の基礎を学び、3、4年次に実際のデータを使いながらデータ分析手法を実践的に学習していきます。社会人でも入学はできますが、ほとんどは各自治体や大手企業から派遣されているので、実際に入学できる社会人の人数は非常に限定的であるのが現状です。
データ関連人材育成プログラム
文部科学省が主催している人材育成プログラムには、「データ関連人材育成プログラム」があります。工学の大学院で博士課程を履修した人を対象とし、高度なデータサイエンスのスキルを保有した人材育成プログラムを導入しています。
数理・データサイエンス・AI教育強化拠点コンソーシアム
文部科学省が認定した国内の6大学で構成されている数理・データサイエンス・AI教育強化拠点コンソーシアムでは、データサイエンティストやAIに関する知識を学べます。一般の学生だけではなく社会人でも受講できる講座です。
データサイエンティストになるのに役立つ学習サイト、サービス
データサイエンティストを目指すなら、学習サイトやサービスを利用するのもおすすめです。今のライフスタイルを変えることなく自由に学習できるので、多忙な方や初学者の方にもピッタリの学習方法と言えます。
Udemy
Udemyは、オンライン動画学習サービスです。プログラミングやビジネススキルに関するものなど、さまざまなカテゴリで多様なコースが用意されています。データサイエンティスト向けの学習についてもも、初心者向けから高度な学習にも対応できる多彩なコースが揃っています。それぞれの目的にあった動画を購入したら、あとは自分のペースで学習を進めていけるので多忙な方にもピッタリのサービスです。また、購入後は何度でも視聴可能なので、分からない部分を重点的に学んでいくこともできます。
coursea
オンライン学習で学べるcourseaは、スタンフォード大学教授が創設した営利団体主催のサービスです。基本的には無料で利用できるという点も魅力です。機械学習コースも用意されているため、まずはトライしてみてもよいでしょう。
Chainer チュートリアル
数学の基礎やPythonの実装、ディープラーニングについて学べるChainer チュートリアルは、初学者向けのチュートリアルを無償で公開しているサービスです。学習内容は分かりやすく濃厚で、「Pythonを触ったことがない」という人でもディープラーニングを充分に理解できます。サービス内容は、数学は微分、線形代数、確率・統計の基礎からスタート。数学が苦手という人以外なら学習に取り組めるサービスを提供しています。
Aidemy
Aidemyは、 プログラミング言語・Pythonに特化したプログラミングスクールです。コンテンツの分かりやすさとシステムの使いやすさで人気となっています。初心者向けからしっかり学習したい人向けのサービスまで幅広く対応し、初心者向けのフリーコースは無料で提供しています。
未経験からデータサイエンティストになるには
未経験からデータサイエンティストを目指すには、具体的にどのようなことをする必要があるのでしょうか。データサイエンスの基礎知識について学ぶ、Python等のプログラミングスキルを身につける、データ解析の手法とツールについて学習する、というデータサイエンティストに欠かせない基礎的なスキルを習得するための3つのポイントに加えて、実践的な経験を積むことの重要性にも言及します。
データサイエンスの基礎知識について学ぶ
データサイエンティストとしての素地を養う上で大切なのが、データサイエンスの基礎知識について学ぶことです。データサイエンスの基礎知識とは、具体的には統計学と線形代数を指します。統計学や線形代数は、データの本質や複数のデータの関連性を把握し、数学的なアルゴリズムを構築する上で欠かせない学問です。データサイエンスの基礎的な分野のみならず、データの前処理や可視化といった応用分野にも活用できるため、しっかり知識を身につけておいてください。
Python等のプログラミングスキルを身につける
実際にデータサイエンティストの業務を行う上では、プログラミング言語を使ってコードを書き、データを操作するスキルも必要となります。データサイエンスに適したパッケージが充実しているPythonやR言語などのプログラミング言語を習得すれば、データサイエンスの領域で即戦力として働くことも可能です。応用的な機械学習、深層学習といった分野に対応しているフレームワークが豊富なところも、PythonやR言語のメリットです。プログラミング言語が初めての人の場合、初心者でも理解しやすいPythonから学習をするのがおすすめです。
データ解析の手法とツールについて学習する
データサイエンティストは、データの収集や解析が主な仕事です。効率よく仕事を行うために、データ解析の手法とツールについて学習をしておくようにしましょう。収集したデータからパターンを分析して未知のデータの予測をする際に使われるのが、機械学習や深層学習の手法です。機械学習や深層学習のための代表的なツールであるTensorFlowとPyTorchについての理解を深めておきましょう。画像認識などの近年需要が高まっている分野にも応用ができるため、データサイエンティストとしての活躍の幅が広がります。
実践的な経験を積む
専門的なスキルを身につけた上で、実践的な経験を積むことも大切です。実践的なプロジェクトに積極的に参加して、ビジネス現場で生かせるスキルやコミュニケーション能力を磨くようにしてください。データサイエンティストは、どのようなデータ分析を求めているかについてクライアントからヒアリングをする機会が多い仕事です。実践的な経験を通して、ヒアリングで適切にニーズを汲み取る傾聴力、データサイエンスに詳しくないクライアントに対しても分かりやすく説明できる説明能力を養うようにしましょう。
データサイエンティストに向いている人
専門的知識が必要となるデータサイエンティストは、人によっては向き不向きがある職種です。数学やプログラミングが好きというのはもちろんのこと、コツコツ前向きに取り組んでいけるなどの性格面も重要となってきます。ここでは、データサイエンティストに向いている人の特徴について挙げていきます。
統計や数学などが数字が好きな人
データサイエンティストには統計や確率などの数学の知識が必要です。業務ではデータや数字を日々扱うことになるため、統計や数学など数字が好きな人は向いているでしょう。数学に関する知識が深ければ深いほど、データサイエンティストとしてビジネスシーンで価値の高いデータを算出することができます。一方で、数字や数学に苦手意識がある人にとっては、適性を感じづらい仕事であるということも理解しておきましょう。
地道な作業をコツコツできる人
データサイエンティストは、データ整理などの地道な作業をコツコツと行います。正しい分析結果を得るために、ビッグデータに含まれるノイズを処理したり、分析したデータを資料にまとめる作業も行います。情報処理においては長期にわたり地道な作業が続くので、コツコツと取り組む能力が問われます。
課題解決に試行錯誤できる人
データサイエンティストは、課題解決に試行錯誤できる人が適しています。データサイエンティストの業務のゴールは、ビジネスにおける課題解決です。そのために様々なデータと日々向き合うデータサイエンティストは、「課題解決のために必要なことは何か」と、試行錯誤できる人であることも求められます。
データサイエンティストの将来性
ビッグデータの活用はあらゆる業界で求められおり、データサイエンティストの将来性は十分にあると考えられます。将来的なデータサイエンティストの人材不足を懸念し、国内外における大学や各種教育機関でデータサイエンス教育に尽力しはじめたことからも、今後さらにデータサイエンティストは各業界から注目を集めると予想されています。
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