AIエンジニアは難しい?勉強や転職活動で挫折しないために
人工知能(AI)技術が発展するなか、その研究や開発を担当する「AIエンジニア 」を目指す方も多いのではないでしょうか。しかしながら、AI技術の仕事には分析やプログラミングなどのスキルが必要なため、未経験からの転身は難しいという意見もあります。
この記事では、AIエンジニアへの転職の難易度や向いている人について分かりやすく紹介します。途中で挫折しないためのポイントや勉強方法もみていきましょう。
目次
AIエンジニアが難しい理由
AIエンジニアは人手が不足しているため、年々需要が高まっている業界です。しかし、転職するには超えるべきハードルがいくつもある業界でもあります。AIエンジニアになるためのハードルとは、具体的に以下のようなものです。
未経験可の求人が少ない
社会人からAIエンジニアを目指すのが難しいとされる理由の一つに、キャリア採用で未経験者を募集する会社があまりないことが挙げられます。もちろん、中には実務経験がなくてもOKという求人もあります。しかし大抵の求人では、「AI開発に関わった経験がある」ことを採用の必須事項にしていることがほとんどです。
なぜなら、AIエンジニアが習得するスキルは難解なものが多いため、採用後に会社で教育するというよりは即戦力を欲しがる会社が多いのです。また、ポテンシャル枠にしても、企業の人事側でどのようなスキルを修めた人に伸びしろを見出せば良いのか、判断することが難しいという事情があります。
そのため、入社後すぐに戦力となるであろう条件として「実務経験」を求める企業が多いのです。このように、採用されるには経験が必要ですが、経験を積むために企業に入社するハードルが非常に高い点が、AIエンジニアへの転身を難しくする要因になっています。
スキル習得の難易度が高い
そして習得するべき知識やスキルの難易度が高いことも、AIエンジニアへの転身は困難だと言われる理由の一つです。AIの仕組みを理解し、動かすためには、主に次のようなスキルが必要です。
数学の素養
まず必須だと言えるのは数学の素養です。学習モデルを作成し評価したり、精度を向上するチューニングをするためにもAIがおこなう認識や予測の仕組みについて理解できる知識が必要となります。高校や大学数学などの基礎を学んだうえで、より複雑な計算が必要となるディープラーニングなどの理論に応用していきます。
具体的には、微分積分や確率統計、線形代数などの数学分野に関する深い知識を身につけておくべきです。また、AIを構築する際に、ライブラリやフレームワークを使うこともありますが、数学的な理解がないと適切なアルゴリズムを選択できません。代表的なアルゴリズムの例として「k近傍法」や「決定木」、「ランダムフォレスト」、そして「SVM」などが挙げられます。
統計・分析のスキル
データサイエンスの担い手として、統計的な観点で分析をおこなう能力を身につけなければならない点もAI技術者を目指す際のハードルといえます。人工知能に関連するソフトウェアを「開発」する他に、「分析」や「解析」といったデータから一定の法則性や規則性を読み解くこともAIに関する仕事の一部です。
そして、コンピュータに大量のデータを与えて、計算により意図した結果を導きだすには、高度な解析スキルが必要になります。
プロジェクトを進めていくうえでは、データサイエンティストやデータアナリストと同様に、課題を把握して仮説をもとに分析を設計する力、必要なデータを収集して可視化する技術など、統計解析の知見がもとめられるのです。
プログラミング
コンピュータで計算をおこなうには、プログラミング言語で指示しなければなりません。またデータを整形・加工する際にもプログラムを構築します。そのため、AIエンジニアはプログラミングのスキルを習得しなければなりません。
AIに使われるプログラミング言語には「R」や「java」、「C++」などがありますが、とりわけ採用されることが多いのが「Python」です。
Pythonを採用する利点としては、AIに使われる計算処理の多くがライブラリにあること、単純な構文であること、解説書や学習環境が豊富であることなどが挙げられます。これからAIエンジニアを目指すのであれば、Pythonを勉強すると良いでしょう。
データベース
AIの実務に取り組むために、データベースを設計・構築し、データを活用するための知識も必要です。分析に使用するデータを準備するには、社内の様々な場所に散らばったデータの中から目的のものだけを見つけ出し取り出すことやデータクレンジングなどの作業が求められるからです。
そのためには、SQL(データベース言語)を利用したデータ操作、バックアップや監視などのスキルも習得することが望まれます。また、機械学習モデルをシステムに実装して、実際の業務で稼働させるためには、データを適切に管理して運用できる知識も重要になります。
技術の進歩が速い
AIの技術は日々進歩しています。そのスピードは、現在利用されている技術が1年後には使われていない可能性もあるほど、非常に高速です。生活の発展のためには嬉しいことではありますが、技術者としては習得するスキルにゴールがないという、険しい道のりを歩むことになります。
つまり、AIエンジニアは就職後も学習を続け、最新技術を習得していかなければなりません。AIエンジニアであり続けるためには、めまぐるしい技術進化のスピードに対応できるよう、努力を継続できる力も必要と言えるでしょう。
AIエンジニアに向いている人
AIエンジニアは難しいスキルを身につける必要があるため、学習途中で習得を諦めてしまうケースも考えられます。しかし、下記のような要素を持っている人はAIエンジニアに向いている場合が多く、困難なハードルも乗り越えられる可能性が高いと言えるでしょう。
論理的な思考
物事を理論立てて考えられる人は、AIと向き合う仕事に向いている可能性があります。エンジニアには様々な分野がありますが、文系出身者も多数存在するシステムエンジニア等には、数学的な理論をもとに検証や評価をおこない、トライアルアンドエラーを繰り返すことが得意ではない人もいるかもしれません。
しかし、AIエンジニアはアルゴリズムやデータ分析など、数学知識を応用して仕事をする場面が非常に多い分野です。解析結果をレポートし、業務の中で的確に使いこなすには、客観的で冷静なものの見方がしっかりと身についていることが必要です。
先端技術への興味
ものづくりや最新のIT技術に興味があり、実際にプログラムでコードを書いて動かした経験がある人も、AIエンジニアに向いていると言えます。プログラミング言語は独学での習得が可能です。しかし、実際にゼロから勉強し、業務で使用できるレベルまでなるには、相応の努力が必要です。情報科学が本当に好きであり、興味がなければできないことです。
データベースやクラウドなど周辺知識についても、テクノロジーを使って問題を解決するという視点がなければ身に付きません。「好きこそものの上手なれ」という言葉の通り、「最先端の技術が好きである」ということは、AIエンジニアに必要な要素の一つであると言えます。
学習を続ける意欲
先述のように、AIの技術は日々めまぐるしく進歩しているため、意欲的に学習を続けていくことが大切です。常にニュース記事や海外の論文など人工知能に関するテクノロジーの動向をチェックし、情報をインプットしていかなければ、最新技術に追いつけなくなってしまいます。
AI分野の技術者や研究者として活躍し続けるためには、その「チェック」や「インプット」も進んで行えるような、知的好奇心や探求心を持っていることが求められます。
AIエンジニアを目指す勉強方法
AIエンジニアを目指すためには、どのような勉強方法があるのでしょうか。実践しやすい方法を整理し、順序立てて以下にまとめました。
書籍やオンライン教材で学習する
この方法は基本的に独学であるため、自分のペースで勉強を進めたい人や、費用を安く抑えたいという人に向いています。最初は初級者向けにAIを基礎から解説した書籍やPythonの入門書などを購入して学習を開始してみるとよいでしょう。漫画形式でわかりやすく解説する本も出版されています。
また、ネット上で講座を受講しながら勉強を進められる「オンライン学習サービス」の教材を使えば、場所を選ばず、スマホやタブレットなどのモバイル端末からいつでも手軽に勉強することができます。
コードを書いて作ってみる
基礎学習が進んできたら、書籍を参考に自分でコードを書いて、実際に動作する人工知能のプログラムを作ってみると良いでしょう。プログラミング言語は、読むよりも「書く」方が難しいスキルです。そのため、開発を経験してみることで得られることは少なくありません。
はじめは教本の通りコーディングして、覚えた知識を実践的に確認すると良いでしょう。そうして数をこなすうちに、「もっと難しいことをしたい」といった意欲が湧いてくると思います。そう思ったときが、スキルアップのチャンスです。自信を持って次の段階へ進んでみましょう。
kaggleでスキルアップ
Kaggle(カグル)とは、データサイエンス・機械学習に携わる人たちが世界中から集まる、大規模な無料コミュニティサイトです。登録者数は約40万人にのぼり、Kaggleに参加している人を「カグラー」と呼ぶこともあります。Kaggle最大の目玉と言えるのが、課題に対して最適な予測モデルを作った人に賞金が出る「コンペ」です。コンペの開催者は各国の企業や政府など様々で、日本だと「メルカリ」がコンペを開いています。
Kaggleは、コンペ参加以外にも様々な使い方ができます。AI学習の初級者にお勧めなのが「カーネル」という機能です。カーネルを利用すると、プロのデータサイエンティストが構築した予測モデル、そしてデータセット処理のコードを見ることができます。このコードを自分の手で書き、1行ずつ噛み砕いて理解していくことで、「どうしてこういう処理をするのか」「この項目をなぜ使用したのか」など、非常に実践的な仕組みを勉強することができるのです。カーネルを利用する際は言語フィルタリングも可能です。様々な予測モデルを探し出して真似することで、引き出しを増やすことができるでしょう。
カーネルで勉強を積んだら、実際に予測モデルを作ってみましょう。Kaggleでは、開催企業などがトレーニング用にデータセットを提供しています。それを利用して訓練を行えば、テストで精度の評価を出すことも可能です。徐々に慣れてきたら、本格的にコンペに参加してみることをお勧めします。「コンペに参加するのはまだ不安」と思う人もいるかもしれません。
しかし、緊張感のある中でモデルを作成することができ、自分の構築したものがどの程度優れているかを確かめることもできます。Kaggleへの参加を通し、予測モデルを作っていくことで、スキルが確実に上がっていることを実感できるはずです。
AIエンジニアになる方法・挫折しないために
AIエンジニアになるためには、非常に沢山の努力が必要です。厳しいハードルを全てクリアする前に、挫折してしまう人もいるかもしれません。道半ばで挫けないためには、以下のようなプロセスを実践してみると良いでしょう。
継続的な努力が必要なことを覚悟する
未経験からAIエンジニアになるには、転職活動と並行して、スキルアップのための努力が必要となります。採用されるために必要な要件を整理して、不足するスキルの習得に挑むことが大事です。また、採用された後もプロジェクトに応じた知識を得るなど学習に終わりはないことを自覚しましょう。
AI技術の著しい発展は、人間の生活向上に欠かせないものとなり今後も続いていくでしょう。その最新技術を駆使し、人々へ貢献することのできる「AIエンジニア」は、非常にやりがいのある仕事だと言えます。
しかし、技術の最先端を走り続けるためには「常に学習し続ける覚悟」が必要でもあります。中途半端な気持ちで目指すと挫折してしまいやすい職業のため、しっかりとした心構えを持つことが望まれます。
転職エージェントに相談する
システムエンジニアなどIT技術者としての実務経験があり、なるべくスムーズにキャリアチェンジしたい場合は、「転職エージェント」に登録すると良いでしょう。担当するコンサルタントやカウンセラーが最適な求人案件を紹介してくれるだけでなく、大抵の場合、今後のキャリア展開まで提案してもらえます。入社時期や年収の調整を、自分のかわりに企業と相談してもらえることも嬉しいメリットです。
また、「AIエンジニアへの転職を決めている」という人であれば、エージェントはAI業界の転職に特化した所を選ぶ方が良いでしょう。なぜなら、担当者が業界に詳しい場合が多く、効率よく転職活動を進められるからです。
エージェントを最大限活用するには担当コンサルタントとの相性も重要なため、複数のサイトに登録してみて、自分に合った所を利用することが推奨されます。
AIスクールに通う
スキル習得を諦めてしまう要因として多いのが、学習をサポートしてくれる人が近くにいないという環境です。これは、独学を実践している人に多い環境と言えるでしょう。「自分は独学に向いていない」と自覚している場合は、機械学習や深層学習(ディープラーニング)に関する知識・スキルを学べるプログラミングスクールに通うことをお勧めします。
AI(人工知能)を作る際に必要なスキルを習得できるだけでなく、専門知識を持つ講師に直接質問し、的確な指導を受けることができます。オンラインスクールであっても、個別にパーソナルメンターが付き、学習をサポートしてくれる所もあります。
更に、AIやデータサイエンスを学べるスクールには就職・転職を支援している所が多いことも嬉しいポイントです。未経験からAIエンジニアを目指すのならば、スクールを利用することで沢山のメリットが得られると言えるでしょう。
スクールの他にも、オンライン講座の受講などもおすすめです。AIエンジニアにために必要な機械学習のスキルを身に着けるのであれば、「AIジョブキャンプ」がおすすめです。AIジョブキャンプは社会人向けの「AI教育講座」と業務委託の案件紹介をする「エージェント」サービスがセットになった無料の研修プログラムです。現役のデータサイエンティストによる機械学習を学べるオンライン講座を受講でき、登録料や利用料などは一切かかりません。まずはご登録だけでもぜひご利用ください。
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