RPAのフリーランスで独立するには?業務委託の報酬相場・案件の獲得方法
労働者人口の減少や企業の生産性向上の観点からRPAの需要は高まっており、新規の利用開始や運用・保守などのプロジェクトも増加しています。また、会社員での経験をいかしてRPA分野でフリーランスとして独立を検討中の方も多いのではないでしょうか。
この記事では、RPA分野の市場動向、報酬や年収の目安、必須スキル、キャリアパスなど紹介します。案件獲得など営業の方法もみていきましょう。
RPAのフリーランス市場動向
ロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)が2010年代後半から徐々に話題になり始め、企業の間でも利用を拡大する動きが見られます。業務効率化や省力化の成功事例がもたらされる一方で、期待した効果が得られずプロジェクトが頓挫してしまうケースも報告されています。
フリーランスのIT技術者が将来の行方を見渡すにあたり、RPAの導入や運用に際して、開発の需要は今後も高まっていくのか、自分たちのようなプレイヤーはどのような立ち位置にあるのか、という点を知ることが重要となります。以下では、RPAのフリーランス市場における動向を説明します。
RPA案件の単価相場
大前提として、RPA案件でフリーランスが得る報酬の相場は、職種や業務内容によってかなり幅が出るという事情があり、一概に語るのは難しいものです。すでに導入が完了しているRPAの運用・保守業務の場合は単価が低くなり、設計や企画など導入の上流工程に携わる場合は高くなる傾向にあります。単価相場のボリュームゾーンは月の報酬額にして40万円~80万円前後です。
RPAの提案やプロジェクト管理、運用改善などを行うコンサルティング業務を請け負う場合はやや単価相場が高くなり、月収100万円以上の案件も見つかりやすくなります。RPAツールの提案や販売など、営業活動を中心とした案件の場合、単価相場は月収70万円~100万円前後が多いでしょう。
業務委託の案件数はそこまで多くない
実のところ、情報システムの開発や保守・運用などの案件と比べるとRPAの案件は全体でもそこまで数が多くあるわけではありません。システムエンジニアリングやコンサルティングファームなどの業界においてRPAソリューションの認知度が上がりつつあり、大手企業での導入も進んでいることは事実です。
しかし、中小企業などレガシーな環境下において十分に普及や認知が進んでいるわけでもないのです。そもそも、RPAという分野そのものが登場して日が浅く、技術的にも発展途上です。マスマーケットへの普及にはそれなりの時間を要することが予想されます。
RPA導入や開発プロジェクトの傾向
RPA関連のプロジェクトは開発に要する時間が短く、プロジェクト着手から完了までのスピードが他のIT系のフリーランス案件と比べて速い、という点が特徴として挙げられます。これは、RPA案件がスクラッチの開発ではなく、既製品ツールやパッケージを利用した導入がほとんどのためです。ツールを利用することで「人間の動作を記憶、再現することで自動化する」というコア機能の開発をせず導入が可能です。
他のシステム案件では、どうしても開発のために要件定義や設計という一連のプロセスが必要となるため、開発に入るまでに時間がかかります。しかし、RPAはコーディングなしでシナリオを組み、実際に稼働させながらロボットを作り上げていくため、開発を進めるスピードが段違いです。他のシステムとの連携やカスタマイズなどコーディングが必要な箇所もありますが、すべてを一から開発するより短時間で済みます。
稼働開始後の修正も、管理画面から設定し直すだけで細かく調整していくことができるため、クライアントの要望とのすり合わせは容易です。また、急な仕様変更にもフレキシブルに対応することができます。スピード感のある業務を行いたい人や、細かい調整を繰り返して完成形に近づけていくことを好む人にとっては、RPA案件はまさにうってつけの仕事と言えるでしょう。
RPAフリーランスの職種
フリーランスでRPA領域に関わる職種は大きく分けて「RPAエンジニア」「RPAコンサルタント」「RPAプリセールスエンジニア」の3つです。RPA領域に対するアプローチや業務内容はそれぞれ異なります。以下では、職種毎の役割や仕事について解説します。
RPAエンジニア
RPAエンジニアは、クライアントからの要望を受けて、設計、開発、テスト、運用・保守を行います。RPAオペレーターとも呼ばれ、プロジェクト現場で実際に手を動かしてRPAのロボットを作り込んでいく役目を担います。開発フェーズに関わるために、利用するRPAツールやシステムについての知識があることは大前提ですが、だからといってRPAの知識だけあれば仕事ができるというわけではありません。
実際の業務では、他のツールやシステムとも連携して自動化を行っていくことになります。自動化する内容によってはRPAだけでは対処できないこともあるため、必要に応じてExcelマクロを開発したり、プログラミングを行ったりすることもあるのです。よって、RPAエンジニアにはRPAの知識に加えてVBAやJavaなどの各種言語によるプログラミングのスキルが求められることもあります。
RPAコンサルタント
クライアントが抱える業務上の課題や、目的に合わせたRPAを提案し、導入や運用のサポートを行うのがRPAコンサルタントです。民間の大手企業や官公庁、自治体などに向けて行うコンサルティング業務を中心に、プロジェクトマネジメントや、運用の改善提案などといった役割を担います。ITコンサルや業務コンサルから転身するケースが多いですが、RPAエンジニアである程度キャリアを積んだ後にRPAコンサルタントへと転身するケースも少なくありません。
この職種では、RPAの知識に加えて、システムエンジニアとして開発全般に関わった経験やコンサルティングの経験、プロジェクト管理に関する知識といった業界経験が重視されます。もちろん、クライアントやRPAエンジニアなど、多くの人とのやり取りを緊密に行いながら業務を進めることになるため、コミュニケーションスキルも備えていなければなりません。
RPAプリセールスエンジニア
RPAプリセールスエンジニアは、エンジニアとセールスの中間のような仕事です。RPA技術者としての専門知識を活かしながら、RPAソリューションの提案や販売のサポートを行います。一見すると営業職のようにも見える職種ですが、直接的な契約やクロージングは営業担当が行います。あくまでエンジニアとしての立ち位置からクライアントに技術的な説明を実施して営業活動を補助していく役割があります。営業担当者に同行して、客先にも出向きますし、商談の場でクライアントに対してプレゼンテーションを実施することもあります。
RPAプリセールスエンジニアに強く求められるのは、提案力とコミュニケーションスキルの2つです。自身も営業の場に立つ以上、クライアントと直接やり取りする機会が非常に多くなるため、この2つのスキルは欠かせません。加えて、実際に打ち合わせの場でRPAツールのデモンストレーションを行ったり、導入事例や利用のシミュレーションなどの話をする関係上、クライアントのビジネスや業界に関する知識も必要となります。
RPAのフリーランスになるには
個人事業主としてRPA案件を請け負うフリーランスになるには、企業にエンジニアとして就職した後、ある程度RPAについての経験を積んでから会社を辞めて独立するという流れが想定されます。以下では、RPA分野でフリーランスとして独立するまでの具体的な流れについて、2パターンに分けて解説します。
システム開発出身
RPAエンジニアになるキャリアパスの一つとして、情報システムやITソリューションなどの受託開発を手掛けるSIerやシステム開発会社に就職し、システムエンジニアやプログラマーとして業務に携わる中で実装や運用の経験を重ね、一定の経験を積んだ所でフリーランスとして独立する、というものです。会社員時代にRPAの経験があることが望ましいですが、IT業界経験があれば、未経験でも受けられる仕事はあります。
このキャリアパスでフリーランスのRPAエンジニアとなる人は、開発の上流工程に力を入れながら、発注先の情報システム担当者との連携した開発を行うことができるという特徴があります。業務プロセス全体を俯瞰し、改善や効率化を図っていくという案件では大いに活躍できることでしょう。
バックオフィス出身
ITエンジニアとしての社会人経験がない場合でも、VBAやExcel、Accessといったオフィスソフトなどでの自動化経験を武器に、RPAエンジニアへキャリアチェンジするパターンもあります。しかしながら、この場合も、まずは正社員のRPAエンジニアとして転職して、実務経験を積んでから独立することが望ましいです。
また、新卒で就職先の企業がRPAを導入し、社内で経理や財務、一般事務などのバックオフィスの立場からRPAに触れていくうちに知識を吸収し、RPAエンジニアとして活躍できるだけのスキルを獲得して独立するというキャリアパスも存在します。
この方法でRPAエンジニアになった人は、実際にRPAに業務で触れるエンドユーザーに近い立場と現場レベルでの視点からRPAによる業務改善を提案することが可能です。現場における様々な課題や悩みをピンポイントでRPAによって改善していく、という案件にはうってつけの人材と言えます。
独立後のキャリアについて
フリーランスのRPAエンジニアとして独立してからのキャリアプランにはどのようなものがあるでしょうか。以下では、独立後の代表的なキャリアパスについて、「スペシャリストで働く」「コンサルタントになる」という2つの選択肢をそれぞれ解説します。
スペシャリストで働く
独立後もRPAエンジニアとしてのスキルと実務経験を磨き続け、スペシャリストとして活躍することが可能です。このキャリアを進む上では、常に新しい情報を追いスキルを更新し続けることが何よりも重要になります。この業界はAI技術との組み合わせや、ツールのクラウド化など、より多様な発展を遂げていくことが期待される分野です。スペシャリストとして活動を続けていくならば、変化し続けるRPAの潮流に乗ることが求められます。
また、システム開発に特化して働いていくことになるため、開発言語やシナリオの構築など、より専門性の高い知識を学び続けることも必要です。自分の中の知識と技術を常にアップデートし続ける向上心のある人にとってはぴったりのキャリアパスと言えるでしょう。
コンサルタントになる
エンジニアからコンサルタントへ転身するキャリアパスです。先述したように、RPAコンサルタントはクライアントが抱える課題の解決に対して、RPAの導入という手段でサポートします。それまでのシステム開発と異なるエンジニアリングの知識や経験を積むことが求められる他、IT戦略の立案やプロジェクトマネジメントなど上流工程の知識やクライアントの業務に対する理解度を高めていく必要があります。
無論、コミュニケーションスキルも磨かなければなりませんが、よりビジネス上の成果にコミットした業務に従事したいという人にとっては、魅力的な選択肢といえるでしょう。
RPA案件の探し方・獲得方法
フリーランスとして活動するに当たっては、ブログやホームページを開設したり、エージェントや求人サイトなどに登録して案件を探しに行くことが重要です。会社勤めと違い、自分から何かしらの行動を起こさない限り仕事が来ることはありません。以下では、RPAのフリーランス案件を探す方法についていくつか紹介します。
エージェントを活用する
フリーランスエージェントは、登録したフリーランス本人に代わって営業や契約締結をサポートしてくれるサービスです。フリーランス側は、エージェントに自分の情報を登録して、条件にあった案件を探します。気に入った案件に応募すれば、エージェントがクライアントへ推薦をおこないます。商談ですり合わせを行いお互いに条件があえば契約を締結して仕事にかかります。
長期に渡る案件や週5で常駐する案件など、本業として携わる案件を探す上で非常に役に立ちます。サービス内容や特徴が会社によって異なるため、複数のエージェントに登録して案件を探すと良いでしょう。
クラウドソーシングに登録する
企業や個人がインターネット上で不特定多数に発注された業務を受注できるサービスが、クラウドソーシングです。ほとんどが、在宅ワークやフルリモートのため、フリーランスエージェントや求人サイトと比較すると単価が低い案件も募集されていることがあります。また、単発の案件や短期間で集中して行う案件などが多いため、本業の傍らで行う副業としての仕事を探す際にも有効活用できます。
データ入力など単純作業の案件も数多く公開されているため、こうした依頼を出している会社を確認して、単純作業の処理に長けたRPAを提案していくということも可能です。
知り合いからの紹介
企業に勤めていた頃に築き上げた人脈や、フリーランスとして活動していく中でできてきた伝手を通じて、仕事を紹介してもらうという手も考えられます。自分のスキルや仕事の進め方について知っている相手や、信頼関係の構築ができている相手であれば、契約締結もスムーズに行うことができるでしょう。仕事の中で出会った人との関係性は良好に保つようにすることをおすすめします。
企業に直接営業する
この企業で働きたい、という明確な目標がある場合には、電話や問い合わせフォームから直接の営業を試みるのも一つの手段です。自分がその企業に対してどのような利益をもたらすことができるかをアピールしましょう。間違っても、値段の交渉などの具体的な契約の話をいきなり始めてはいけません。まずは、自分のスキルや経験など、その企業が自分と契約することで受けられる恩恵について話すことが重要です。上手くいけば、中間マージンを取られること無く、大きな案件を勝ち取ることも不可能ではありません。
SNSやブログ
SNSやブログ、動画共有サイトなどで自分から情報を発信し、セルフブランディングを行うことで、自分自身のフリーランスとしての技能や実績に興味を持ったクライアント側から接触してくることがあります。発信力やブランディング力、あるいはカリスマ性なども必要になりますが、先方から案件を依頼されるようになれば、フリーランスとして一皮むけたと言えるでしょう。
RPAフリーランスの将来性
今後、RPAフリーランスとして活動し続けていくにはどのような要素が必要となるのかを解説します。組織に所属しないフリーランスだからこそIT業界そのものの展望や日本経済の見通し、景気動向などに合わせた生存戦略を身に着けていかなければなりません。そこで、以下ではRPA業界の将来性について説明し、その上でこの先のRPA技術者に求められるものについて解説します。
RPA業界の可能性
結論からいえば、RPA業界の将来性はあります。ただ、国内ではマス層への普及に時間がかかっているため、需要の急激な拡大はまだ先のことになるでしょう。RPAエンジニアの数がまだ少なく、自動化した業務を監視する必要があるなどの課題も浮き彫りになっており、これらの課題の解決がなされない限りは様子を見るという企業も少なくありません。しかし、働き方改革による業務の効率化の手段として「単純作業を代替すること」への注目度は高まっており、RPAエンジニアの市場価値も今後上昇していくことが予想されます。
何らかの技術的なブレイクスルーが発生すれば、RPAが一気に普及するという可能性もまだ残されています。常日頃から最新の情報を収集し続けること、自分の知識をアップデートし続けることが、業界を担うエンジニア一人ひとりに求められているのです。
RPA技術者に求められるもの
今後もRPA分野で働くスペシャリストに求められるのは、需要のあるスキルを保持し続けることです。企業から求められるスキルや経験を身につけており、なおかつ市場に該当する技術者の数が少ないほど、企業から求められる機会も増していくものです。技術力だけでなく、経歴もひとつのアピールポイントになるでしょう。大手SIerやコンサルティングファームなどで働いていた経験は、RPAコンサルタントとしての活動を行う上で強力な武器となるのです。
もちろん、システム開発やIT業界での業務経験が無くとも、事務や経理として働いていた時の経験を活かして、特定の業務をピンポイントでRPAによって効率化する提案を行うRPAオペレーターのプロフェッショナルとしてニッチ分野に活路を見出すことも可能です。自分がそれまでに経験してきたことと、企業のニーズを組み合わせることが、将来RPAフリーランスとして活動し続ける上では重要となります。
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