マーケティングの仕事とは?やりがい・年収・資格・キャリアパス・将来性
就活中の大学生や社会人の転職で人気職業が「マーケター」です。商品企画や経営、営業、広報などとも関わる仕事ですが、その実態はどうなっているのでしょうか。
この記事では、マーケティング職の仕事内容や年収・給料などについてわかりやすく解説します。キャリアパスや将来性についてもみてきましょう。
目次
マーケティングの仕事内容
マーケティングの仕事は、売れる仕組みづくりです。言い換えると、社会で何が求められるのかを見つけ出し、プロジェクトやサービスの改善に役立て、広告媒体や店頭、対面接客など各種チャネルをもちいて、顧客とのコミュニケーションを最適化していくのが仕事です。
近年はSNSやWebサイトといったインターネットメディアも重要性を増してきており、日ごろ目にする製品やサービスに関する情報はマーケティングが行われた結果、メッセージとして伝わっています。
マーケティングの業務は、市場調査や広告宣伝などに限定されるものではなく、新規事業や商品企画などビジネスのさまざまなシーンに関わるものとなっています。現代社会においては顧客のニーズが多様化していることもあり、抜本的な改革なしにシェアの維持・拡大が難しくなったのが理由の一つです。
ただ、ニーズが多様化した分は、チャンスが広がったとも言えます。競合とは違った切り口でマーケットを発見することができれば新たな訴求ポイントや商品の提供価値を作り出せますし、既存概念を打ち破り、新しい市場や潜在ニーズを探し当てることで、大きく飛躍できる可能性があるのです。そこで、マーケターには企画から営業、プロモーションまで、多彩な領域における活躍が期待されます。
商品企画
商品企画は、新商品の開発や、既存サービスの改善に関わる仕事です。世の中の情報にアンテナを張り、消費者のニーズや競合製品、技術動向などを観察し、市場から求められている商品・サービスについて企画をおこないます。提供する価値やコンセプトを整理して、機能や価格、流通経路なども検討し、コストや採算性を算出します。
ここで決めた方針に沿って、商品化の計画が進みますから、プロジェクトの命運にも大きく関わります。対象のマーケットで自社のメリットを活かせるよう製造や開発部門とも調整し、場合によっては試作品も用意して、計画を練り上げることが必要です。特許や著作権などの知的財産や各種法令にも配慮する必要があります。
営業企画・店舗販促
法人営業や店舗での販売活動について、戦略立案や施策実行をおこないます。具体的には、利益の見込みなどから営業をかけるエリアを絞り込んだり、セールススタッフの配置を決めたりします。店舗では在庫数の判断や、キャンペーン企画の立案なども欠かせない業務です。その他、ターゲット選定から販売手法の検討、KPI・KGIの設計、ツールの整備、他企業とのアライアンスなど、業務内容は多岐にわたります。
そして、現在は顧客・消費者が商品選定において慎重さを増しているため、営業や販促には工夫が欠かせません。POSやCRMなどの顧客データを活用し、マーケティング部門と営業部門の戦略を一体化することで、ターゲットに対する説得力を高めるような取り組みも行われています。営業担当者からのフィードパックにより顧客の声を吸い上げて製品を作り、営業活動を通じて、その価値をターゲットに伝えるわけです。
市場調査・分析
市場調査や効果検証などの分析業務もマーケティング担当者の仕事です。内容によっては、外部のリサーチ会社やコンサルティングファームに発注するケースも多いですが、業界動向についての情報収集や顧客データの分析などは、普段から行う必要があります。統計データやアンケート結果などから顧客の年齢層や志向性、ライバルの動向などを調査します。
数値や定量的なデータだけでなく、評判や口コミなど定性的な情報から自社の長所短所を探すこともできます。これらの情報を分析し、自社が勝負すべき市場を見定めていくわけです。プロジェクトにおける判断材料になりますので、品質と量、分析の正確性が要求されます。
情報を集める方法は多彩で、インタビューやアンケートを行うのはもちろん、他にも色々と工夫されてきました。IT技術を使って顧客の契約状況を管理したり、アナログな方法では該当調査などの方法も有効です。集めた情報は、PESTや3C、5フォースなどの手法を使って分析します。これにより、自社が狙うべき市場や、利益が見込める商品が浮き彫りになるのです。
広告宣伝・プロモーション
認知向上やブランディング、売上向上などを目的に広告宣伝をおこないます。テレビ、雑誌、新聞、ラジオなどのマスメディアを利用した宣伝活動だけでなく、Webサイトやスマホアプリに表示するインターネット広告やSNS上のキャンペーンで話題性を獲得するプロモーションなどもおこなわれるようになっています。広告では情報を発信し、ターゲットからのリアクションを待つのが特徴と言えます。
ここで重要なのは、発信に気付いてもらって、意図した反応を引き出すことです。チラシを配っても肝心のターゲットが見ていなかったり、内容に興味を示さなかったりすると、良い結果は期待できません。そのため、ターゲットに応じて適した広告媒体を選ぶことがポイントです。同時に、広告上の表現でどのような反応を引き出すかも要検討です。直ちに購買活動に繋げたいのか、それともイメージの浸透を狙うのかで、広告クリエイティブの在り方も異なります。
広報・PR
企業イメージを改善する他、事業の認知力を高める目的で広報・PR活動が行われています。マーケティング部門のなかでも広告やプロモーションとは役割が異なりますが、両者の親和性は低くありません。それぞれの部門が協力すると、売上の拡大やイメージアップなど、様々な効果が期待できます。例えば、広報イベントの開催です。社会の環境問題に立ち向かう姿勢を示す時に、清掃キャンペーンなどを行うケースがしばしばあります。
その際、事業部門と広報部門が連動し、自社で行っているサスティナブルな取り組みや、自然に優しい商品を紹介することで説得力が高まるのです。一例としては、トヨタ自動車が使ったことが知られます。活動を通して自然保護の大切さを多くの人と共有し、環境を守るための車選びにポジティブなイメージを定着させるのが目的です。
他にも、メディア取材やプレスリリースの活用など、選択肢は多数あります。経営企画や製造・開発、セールスなど各部門が協力すると、工夫次第で様々なシナジー効果を得られるでしょう。
マーケティングに向いている人
トレンドを敏感に察知する感性と、大量のデータや数値を扱うことに抵抗がない方が、マーケターに向いているとされます。感性については、現在のトレンドを的確に把握するのはもちろん、今後の流れも予測できるような能力があると重宝されます。経済の機微を捉えて、潜在ニーズを掘り起こすのがマーケターの仕事の一部だからです。
また、マーケティングでは情報分析のために、膨大なデータや数字を扱います。このために大量のデータ処理が苦にならず、情報を整理したり分析したりするのが好きな方は、適性が高いでしょう。
最後に、コミュニケーションが得意な人も、この職場に適しています。他の部門と連携しますし、場合によっては直接、顧客や消費者と接する機会もあるためです。
マーケティング職の活躍する場所
マーケターが活躍している職場は、基本的に二つのタイプに分類できます。メーカーなどの事業会社と、他社のマーケティングを支援するサポート会社です。就職先や転職先を考える場合、主にこの二つから選ぶことになりますが、それぞれに特徴や傾向が異なるので注意が欠かせません。
事業会社
自社で製品を開発しているメーカーや加工業、流通・小売業、医療・金融・通信・宿泊・飲食・旅行・エンターテイメントなど各種サービスを提供する企業などが当てはまります。これらの会社はマーケティング部門を設置し、戦略を練って自社製品やサービスに関する事業活動を行います。事業会社のマーケターは、各部署間の情報のズレを無くす調整役になる事もあるため、調整力や連携力がつくのがメリットです。
ただし、事業会社でも必ずマーケターが必要とされるわけではありません。事業部門による独立採算体制を敷いている職場などでは、例えマーケティング部門があっても、役割が形骸化しているケースもあります。
支援会社
上記のような事業会社から依頼をうけてマーケティングを支援する会社も、就職先の選択肢の一つです。職種別にマーケティング担当者の新卒採用をおこなう会社は多くないため、新卒で入社するルートとしては、支援会社に就職して経験を積むキャリアパスを選ぶ業界人も少なくありません。クライアントである事業会社からの依頼に関わるため会社によって規模の大小や得意とするジャンルは様々です。
代表例としては、広告代理店やPR会社、市場調査を専門で行うリサーチ会社などが挙げられます。支援会社のマーケターは、多くの業界やサービスに関われるというメリットがあります。
マーケティング職のやりがい
自身が手掛けた広告や商品が具体的な形になる点を、やりがいに感じる方が多いです。何かを作り上げるには情報収集に始まり、他部門との折衝や取引先との協力など、何かと手間暇がかかります。時には思考錯誤の繰り返しで、解決の糸口を見つけるのに多大な努力が必要になる場合もあるはずです。苦労を重ねた結果、やっとプロモーションが完成して流通し始めた時の感動は、言葉では表現できないでしょう。特に事業会社では長期間にわたって同一製品の販売促進を手掛けるケースもありますから、その分は一層、思い入れが強くなります。
前述のとおり、支援会社の方は多数のクライアントと関わるので、売れる仕組み作りのための多彩な経験を積めるのが醍醐味です。若い頃からマーケターとして叩き上げられる職場ですから、スキルを磨きたい人にも魅力的でしょう。
マーケティングの年収・給料
マーケティング職として働く会社員の年収は、平均すると約520万円です。なお、給与のボリュームゾーンは、450万円から530万円ほどと言われます。全業種の平均給与よりは高めで、能力次第では1,000万円超も不可能ではありません。ただし、新卒社員や未経験での中途入社では、年収300万円に満たない場合もあるでしょう。金額に差がつく理由は、社員の能力の他に会社の規模や、勤務する地域などがあります。
マーケティング職に就くには
新卒入社か中途採用での転職かによって、マーケティング職に就くためのプロセスや難易度には違いがあります。就職先で経験した内容は、その後のキャリアパスや年収にも影響を及ぼすため注意しましょう。
新卒で入社する
新卒でマーケターになるには、広告代理店やPR会社などマーケティング支援をおこなう企業の求人に対して就職活動することになるでしょう。事業会社に新卒入社してマーケティング部門に配属される場合もありますが、可能性は高いとは言えません。そもそも配属される人数に限りがありますし、ポテンシャルが重視されるといっても顧客を想像するのに実務経験や業界のノウハウは必要なため、未経験の若手を積極的に登用するケースが少ないのです。
他方、支援会社は新卒からでも、充分な見込みがあります。事業の中心がクライアントからの依頼に応えることですから、自社でマーケティングのプロフェッショナルを抱える必要がありますし、若手も積極的に現場に配属してOJTで育成する点が特徴です。
就職後に異動する
社会人として働きだした後に、異なる職種からマーケターへのキャリアチェンジを考えることもあるでしょう。そのような場合には、新卒で入社後に配属された部門で実績を出したうえで、マーケティング部門に異動するのも選択肢です。ベンチャーやスタートアップ企業では、部署異動に関して本人の意向が通りやすいですし、大手企業でもジョブローテーションや希望による社内異動を実施する会社もあります。
事業会社で多いキャリアプランとして、営業で腕を磨いてから、営業企画やマーケティング部門に配属されるケースでしょう。また、最近ではデータ利活用を重視する企業が増えており、プログラミングや統計学などを勉強し分析者のポジションで異動するパターンも出てきています。
転職する
現在の会社でのキャリアチェンジが難しいなら、転職でジョブチェンジするという方法もあります。ただし、中途採用でマーケティング担当者を募集する企業では、即戦力となる経験者を求める求人がほとんどです。第二新卒や既卒枠など20代前半の若手を募集する求人を除き、未経験でも問題ないとしている職場はそれほど多くない点は理解しておきましょう。
転職活動では、未経験OKの求人に応募してくことになりますが、人手不足が深刻なWebマーケティングやデジタルマーケティングに関連する企業などで探すとよいでしょう。また、インターネット広告やデジタル系商材などの法人営業職から業界経験を積むこともおすすめです。
マーケティングに近い職種としてコンサルタントや企画職があります。会社によっては、医療や金融、不動産などクライアント業界の経験が重視されることもあります。これまでの経験や意欲を活かして、キャリアプランを考えてみるとよいでしょう。
マーケティング職に役立つ資格
知識・スキルがゼロの状態で、マーケティング職の採用試験に挑むのは心許ないかもしれません。また、就業後のことを考えても、ある程度の実力を備えておきたい方は多いはずです。そこで、ここからはマーケティング担当者として働く際に役立つ資格を紹介していきます。
マーケティング・ビジネス実務検定
マーケティング実務において役立つ、一定の能力があることを証明できる資格です。日本では初となるマーケティング関係の資格と言われ、実績があります。統計学やビジネス法務などの業務上重要な知識の他に、実務に役立つ内容が盛り込まれているのが特徴です。難易度に応じて、AからCまでクラスわけがなされています。意欲を証明するためにも、最上級を狙いたいものです。
ネットマーケティング検定
情報技術関係で有名なサーティファイが手掛けているのが、ネットマーケティング検定です。その名の通り、WEBマーケティングに特化しています。SEOやSEMなど、オンラインビジネスに欠かせない知識を習得可能です。現在はオムニチャネルが注目を集めているため、IT系企業ではなくても、Webマーケティングの知識を評価する職場が増えました。
統計検定
日本統計学会が公認している他に、総務省などの行政機関が後援しているのが特徴の資格検定です。特に1級となると、大学専修過程と同程度のハイレベルな内容を学習します。現役のマーケターがキャリアアップ目的で取得することもあるので、興味がある方はチャレンジしてみましょう。
マーケティングのキャリアパス
ここからは、就職・転職で入社した後のキャリアパスについてみていきましょう。最初はマーケティング担当者として配属され、プロジェクト内容に応じた実務経験を積むことになるでしょう。その後は、スペシャリストとして専門分野のプロフェッショナルとなるか、リーダーやマネージャーなどのポジションで管理職として活躍するか、いずれかの道に進むことが多いです。
マーケティング部門で昇進を続けるほかに、新規事業のスタートアップを任されたり、支援会社から事業会社に転職したり、コンサルタントに転身して経営陣と近いポジションで、事業戦略を補佐するような役割を担うケースもあります。また、自身で事業を拡大した経験があるマーケターは、独立してフリーランスで活躍したり、起業して会社経営をおこなうことも珍しくありません。
マーケティング職の将来性
テクノロジーが進歩し、顧客のニーズが多様化するなかで、マーケティング職に求められるスキルや能力も変化が見られますが、モノやサービスがあふれ、差別化が難しくなる社会において、今後もマーケターは求められることでしょう。
AIの台頭などにより人材が不要となることも懸念されていますが、上流工程に関わる職種ほど経済情勢に左右されにくいのが特徴です。好景気の時はもちろん、売り上げ拡大が求められます。逆に不況なら、難局を乗り越えるための戦略が欠かせません。加えて、マス広告やデジタル広告の経験者は希少なため中途採用で求人のニーズが一定数あり、倒産や失業などで急遽仕事を探さなければならない際にも武器になります。他社のマーケティング部門ではもちろん、即戦力になるはずです。
更に、他部門に配属されたとしても、それまでの経験を活かせます。例えば、ノウハウを活かして、広告や営業活動の改善を提案することが可能です。企画・開発を行う場合にも、市場ニーズをしっかりと意識できるのは強みと言えます。このように、マーケターとして売れる仕組みづくりを行ったり、製品の開発やプロモーションに関わった経験があれば多彩な局面で役立つため、将来を考えても安定感がある職業と考えられるでしょう。
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