DX人材とは?なるには?背景・種類・転職方法とキャリアパス・育成のために
デジタル技術を活用し、ビジネスモデルの変革を推進する「DX(デジタルトランスフォーメーション)」という概念が広く普及しました。企業や組織におけるデータ活用やシステム刷新の重要性が高まるとともに、DXを推進する人材についての求人ニーズも増加しています。
この記事では、そんなDX人材の種類や求められるスキル、必要とされる背景、教育体制やチーム編成について紹介します。転職方法やキャリアパスについてもみてきましょう。
目次
DX人材とは
DX人材とは、デジタル技術を活用してビジネスを革新する手法を理解し、企業や組織におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)の実現に向けて中心的な役割を果たす人のことを言います。DX推進では、業務にテクノロジーを導入して経営の効率化やコスト削減を実施するだけにとどまらず、製品・サービス、組織や企業文化も含めて新たな価値を創造する役割を担うことが期待されています。
そのため、DX推進に携わる人材としては、単にITのスキルがあるというだけではなく、デジタル変革を実現した後の業務プロセスについて明確なビジョンを持って主体的に行動することが求められます。
昨今のデジタルシフトが進む社会情勢に加え、Withコロナ、Afterコロナの時代において「ニューノーマル」と呼ばれる新しい生活様式に対応するための投資活動が活性化しており、部門の責任者からメンバークラスまで、幅広い求人需要が生まれています。
そもそもDXとは
DXとは、Digital Transformationの略称です。デジタル技術が浸透することでビジネスモデルや社会全体でのあらゆる面での変革を捉えた言葉で、単なるデジタル化を意味する「デジタイゼーション」や現状のビジネスにデジタルを適用して付加価値向上や効率化をもたらす「デジタライゼーション」とは区別されることが多い概念です。
つまり、新しい製品・サービスの開発やビジネスモデルの変革を伴うデジタル変革で企業の優位性を確立することをDXと言います。単なるITの導入だけでなく、社会のニーズを適切につかみ、データや技術を活かして業務プロセスや企業風土の改革にまで踏み込むのが特徴です。一方で、DXの前段階として、紙の文書などアナログ情報の電子化や情報システムなど基盤を整備する必要性も増しています。
IT人材との違い
DX人材と似たものに「IT人材」がありますが、両者は似て非なるものです。DX人材とは、社内のDX全般を推進するために動く人をいいますが、IT人材は、「ITシステムそのものを作る人」を指します。あくまでシステムの企画や開発を担うだけで、DXのような「IT技術の活用」までは範囲に含まれません。
また、DX人材とIT人材では、マインドにおける違いもあります。そもそもDX(デジタルトランスフォーメーション)は、「デジタルによる変革」という意味です。
そのためDX人材には、変革を恐れずにチャレンジできるマインドが必要となります。一方のIT人材は、システムの開発を行うのが主な仕事なので、DX人材のような志の高いマインドは必要ありません。
DX人材が求められる背景
DX人材が求められる背景として以下のものがあげられます。
テレワークの拡大
2020年から始まった新型コロナウイルスの影響によって、テレワークの導入が一気に加速。従業員が「リモート」で快適に働くためには、コミュニケーションツールや人事労務管理、経費精算など、デジタル環境を整える必要がありました。
そのような中で、社内のデジタル化をさらに推進したい企業も増え、「DX人材の獲得競争」が起こるようになったのです。
日本の労働者人口の減少
日本の労働人口が減っているのも、DX人材が求められる大きな要因です。総務省は、2021年と2022年を比べて、労働力人口が約5万人減少したというデータを発表しました。こうした国内の人口動向から、「人手不足」を喫緊の課題としている企業も少なくありません。
そこで、新たな人材の採用に注力するのでなく、DXによって生産性を高め、採用に頼らず事業を回す方向にシフトする企業も出てくるように。しかしながら、DXに関するスキルとマインドが揃った人材はなかなか居ないので、多くの企業が「DX人材」を求めているのです。
DX人材に求められる人材像
自社のDX推進を行う「ユーザー企業」と顧客へ製品・サービスを提供する「ベンダー企業」とで求めるDX人材像はそれぞれ異なります。ここでは、具体的にどのような人材が必要とされているのか見ていきましょう。
ユーザー企業(事業会社)
ユーザー企業では、主に経営企画や情報システムなどの部門がDX推進を担当するケースが多いですが、DX推進の部署を新設してタスクを集約する会社も増えてきました。いずれのケースにおいても、DXを実現するに当たり必要なのは「自社の新たなビジネスモデルや成長戦略を描くこと」と「異なる部門や組織間で一丸となって変革を実施するリーダーシップ」です。
改革を進めるには自ら様々なメンバーと意見を取り交わし組織や業務内容を理解し、時には経営改革まで視野に入れる必要があります。また、新たな製品・サービス開発のためには最適なUX(顧客体験)を考えられるユーザー目線も重要です。
そのため、ユーザー企業のDX人材としては、ITのバックグラウンドに加え、より経営や業務運営に関する知見が求められる傾向にあります。また、こうした複雑なミッションを実現するために、高い目標設定とDX実現にコミットする姿勢が求められます。
ベンダー企業(受託会社)
ユーザー企業に在籍する人材が、企画フェーズから導入計画、実行、運用と一貫して、自社内でのDX推進に取り組むのに対して、ベンダー企業では導入のフェーズ、あるいは職能によって異なるDX人材が活躍する傾向にあります。
企画のフェーズでは「コンサルタント」や「プロデューサー」「アーキテクト」といった人材が、企業の業務や課題を把握し、適切なDXの構想を提案します。
導入や実行フェーズでは、DXを推進するために必要な人員でプロジェクトチームを結成するため「ビジネスデザイナー」「データサイエンティスト」「UXデザイナー」「エンジニア/プログラマー」といった職種が活躍します。
プロジェクトの成功はもちろんですが、事業の成長やコストの削減・システム刷新など、クライアント企業の根幹にまで関わってくることもあるため、各職種でのスキル要件のほか、誠実さが必要とされるでしょう。
DX人材の募集が急拡大する背景
近年はDX人材の不足が叫ばれていますが、なぜDXに関連する求人数が急激に増加しているのでしょうか。ここでは、デジタルリテラシーの高い人材が、様々な領域で求められるようになった背景を紹介します。
DXの認知が広がった
経済産業省の「DXレポート」に記述された「2025年の壁問題」が企業の経営層に衝撃を与えました。これは、国内企業において適切なシステム刷新やデータを活用した意思決定などの経営改革が推進されない場合、2025年以降に最大で年間12兆円の経済損失が生じる恐れがあるというものです。
これにより「デジタルトランスフォーメーション(DX)」という概念の認知度が上がり、大手企業の経営方針などにもDXというキーワードが散見されるようになりました。
また、紙書類に印鑑で押印しての契約や承認フロー、FAXでの発注といった従来の手続きに加え、オンライン申込や電子認証などが普及したことで、企業のシステムが複雑化しており、旧態依然としたレガシーシステムに起因するシステムリスクやトラブルへの懸念も顕在化しつつあるのです。
専門部署の設置や公募がスタートした
DX人材が社会で広く求められるようになった背景として、SIerやコンサルティングファームなどソリューションを提供する側のベンダー企業だけでなく、事業会社と呼ばれるシステムを利用する側のユーザー企業や官公庁などの団体においても人材調達が行われるようになってきた点があげられます。
大手企業を中心にCDO(Chief Digital Officer)を配置し、情報システム部門と別にDX推進を専門におこなう部門の新設や「データサイエンティスト」などDX人材の積極採用を実施する動きが見られます。
政府が2021年に新設する「デジタル庁」では、システム開発やデータ管理に高い専門性を必要とするため、500人の職員のうち100人を民間から募集するとしています。また、農林水産省でもデータサイエンティストの採用・育成を進めるなど、官公庁におけるDX人材確保の動きが進んでいます。
新型コロナウイルスの影響
新型コロナウイルス感染症(COVID‑19)の発生を契機として、ウイルス感染の拡大を防ぐため、オンラインでの接客対応やEC・通販といった人との接触を減らすためのデジタル活用が推進されるようになりました。一般消費者向けのBtoCに限らず、企業間取引が中心のBtoBビジネスにおいてもオンライン会議を取り入れるケースが増加しています。
従業員の勤務形態についてもオフィスへの出社からテレワーク/リモートワークへの移行が試みられています。在宅勤務は、企業にとって事務所の賃貸料や交通費を抑えられるというメリットはあるものの、セキュリティに配慮したPC環境やネットワークなどIT投資も必要となります。
そのようにポストコロナを意識しつつも、以前とは働き方が大きく変わる中で、社会の変化に合わせ業務を効率化し競争力を維持するためのデジタル変革が求められているのです。
DX推進人材の種類
一口にDX人材といっても、その中にはいくつかの職種があります。ここでは、IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)が提唱する類型にもとづき、代表的なDX人材の職種を紹介します。
プロデューサー
DX推進のリーダーとなる職種で、CDO(Chief Digital Officer=最高デジタル責任者)という役職に就くこともあります。強力なリーダーシップを持ってプロジェクトマネジメントを行い、全社のDXを牽引する一方、社内外の関係者と良好な関係を築いたり、業界の動向を睨んで的確な意思決定をするなどマルチな能力が求められます。
ビジネスデザイナー
DXやデジタルビジネスの具体的な企画・立案・推進を行う職種です。プロデューサーが全体を俯瞰するのに対し、ビジネスデザイナーはそれを実際の商品企画などに落とし込んでいきます。社会のニーズに合わせた着想力や企画力、チームワークを円滑にする調整力などが必要です。
アーキテクト
ビジネスデザイナーが立てた企画を基に要件定義を行い、実現可能な形でDXの構想を整える役割を担います。ITの専門家として具体的なシステムの構成や仕様を設計していく仕事です。システムエンジニアと異なるのは単にシステム設計をするだけでなく、ビジネスの課題を解決するための提案もするという点です。
データサイエンティスト/AIエンジニア
DXにおいて重要な役割を果たすAIやIoTに精通しているのが、データサイエンティストやAIエンジニアです。インターネットの普及やクラウドコンピューティングの発達によりビッグデータの取得が容易になりましたが、AIを使ってビジネスに活かしていくためにはデータを的確に見極めるスキルが必要です。
UXデザイナー
ユーザーエクスペリエンス(UX)とは顧客体験のことで、テクノロジーやツールをより利用しやすい形でユーザーに提供するために必要な概念です。どんなに優れたシステムでも、使う理由がなければ敬遠されてしまいます。DXで顧客に新たな体験や価値を提供するには、使いやすいUIが必須であり、その部分の設計について担当するのがUXデザイナーです。
エンジニア/プログラマー
システムの実装や運用・管理、インフラ構築といった、DXを実現するうえで欠かせない具体的な開発のフェーズを担当するのがこの職種です。アーキテクトの設計に基づいてプログラミングを行い、システムや機能を完成させます。プロトタイプの開発やPoCの現場でも活躍し、テストや修正を繰り返して最適解を模索します。
DX人材に求められるスキル
ここからは、DX人材に求められるスキルについて解説していきます。
ITに関する幅広い知識
DXはITやデジタル技術を活用するものですから、IT関連の実務経験は欠かせません。職種によって深めるべき知識は異なりますが、全体に共通して言えるのはシステムエンジニアリングにおける一連の流れを理解していることです。職場によっては、WebやEC、アプリなどに関するノウハウを求められることもあります。
先進技術や業界の最新動向に関する見識
IT全般の知識を身に着けた上で、さらにAIやIoT、クラウドといった最新技術やマーケティングオートメーションやデータマネジメントプラットフォームなど最新製品の知識も常に取り入れ続けていく必要があります。DXは自社の優位性を高めることを一つの目的としており、そのために最新ツールの活用が大きな力となるからです。
データ利活用の知見
日々の経営判断や事業運営を実施するうえで、データを活用した意思決定の重要性が高まっています。データサイエンティストやAIエンジニアといった専門家による高度な分析も重要ですが、それ以外の職種でもある程度の統計解析や分析能力を身に着けておけば、広くビジネスに活かすことができます。
プロジェクトマネジメント
DX推進は様々な部署・職種にまたがる多くの人が関わるもので、成功に繋げるためにはスケジュール管理や予算配分、人材の配置といったマネジメントスキルが必要となります。PMBOKやアジャイル開発などのフレームワークに関する知識も持っておくと良いでしょう。
デザイン思考
デザイン思考は、ユーザーのニーズに合わせた商品・サービスの開発やそれを通して得られるユーザー体験を創出するために欠かせないものです。見た目や使いやすさ、価値ある体験といったいわゆるUI・UXを向上させるのはユーザーを引き付け、収益を生み出すことにつながります。
DX人材が備えておくべきマインドセット
DX人材に必要なマインドセットとして、以下のものがあげられます。
変化を求め続けられる
DXはデジタルの変革なので、変化を求め続けられるマインドが必要です。「今は当たり前に使っているけど、本当に必要なのか?」「古い慣習をやめて体制を一新するべきでは?」など、疑いをもつ姿勢が重要です。
企業がより良くなるには何をすべきかを考え、必要なものを取り入れ、不要なものはためらわずに排除する、といった強気なマインドが求められます。
課題設定力
自社における課題を明確できる能力です。意義のあるDX施策を打つためには、何の課題に対して、どのようなデジタル化が適切なのかを見極めなければなりません。課題が明確になってはじめて、どう解決するか、どのような施策が必要なのかがわかります。
ただし、課題設定力を磨くには経験が必要です。たとえば、マネジメントやコンサルティング、営業などで成果を出してきた人材などがあげられます。
オープンマインド
オープンマインドとは、「心が広い」「頭がやわらかい」「偏見がない」など開放的なマインドをいいます。DXでは社内の既成概念を打ち破るようなビジネスモデルを開発するため、多様なメンバーが集まるでしょう。
ときに別会社の従業員やフリーランス、ギグワーカーとの連携も必要になります。さまざまな人材が集まる中で、DX担当者にオープンマインドが必須です。メンバーの意見を寛容に受け入れ取捨選択し、フレキシブルに考えながら実行していく力が求められます。
集まったメンバーを束ねるだけでなく、メンバーを巻き込む力も必要です。自らの情熱で周りに共感を与えたり、メンバーの適材適所を見極めて、本人の能力を最大限発揮させたりと、周りを巻き込みながら前進していくことが成功の秘訣といえます。
失敗を恐れず挑戦できる
社会の変化が激しくなる中で、消費者のニーズを掴んだり、変革の方向性を見出したりするのは大変です。基本的には、仮説をもとにトライアンドエラーを繰り返す「アジャイル手法」を行うしかありません。
DX推進では失敗が付きものなので、恐れずに立ち向かえるマインドが不可欠です。成果が出るまでに数ヶ月、ときに1〜2年と時間がかかるかもしれません。たとえ時間がかかっても、失敗から気づきを得て、それを愚直に実行することが大切です。
諦めずに最後までやりきる
前述の「失敗を恐れない」に近いですが、諦めずに最後までやりきる力も、DXを成功させるために必要なマインドです。DX推進では、自社の課題の仮説を立て、本当に合っているのかわからない中で、トライアンドエラーを繰り返します。
最初からうまくいく可能性は低く、基本的には失敗続きです。失敗が続いても、「なぜうまくいかなかったか?」を見直し、改善するために何ができるかを考えるタフネスさが求められます。諦めずに最後までやりきることでようやく、ビジネスに変革が生まれるでしょう。
常に学習し続ける
現代ではテクノロジーが進化し続けており、時代の流れの早さについていくのが精一杯な企業も多いでしょう。DX推進の担当者には、そうした激しい変化に臨機応変に対応し、学習し続ける姿勢が必要です。
自分のスキルをアップデートし続けなければ、数ヶ月や数年後にはさらに先進的な技術が生まれ、時代に取り残されてしまいます。会社の従業時間だけでなく、社外の時間でも積極的に勉強したり、スキルを磨いたりできる人材こそ、DX推進に向いているといえるでしょう。
DXを推進するために
DXを推進するには、必要となる人材を確保しなくてはなりません。そのために何をすべきかを見ていきましょう。
人材要件やチーム編成を定義する
DX人材を確保する際には、自社の現状を鑑みた上でDXで何を実現したいのか、その目的をはっきりとさせてそれに合わせた人材要件やチーム編成を定義することが大切です。どのように人材を確保していくかは、まずどんなスキルを持った人材が何人必要かといった組織体制のあるべき姿を明らかにすることから始まります。
DX推進の専任人材を確保する
DX推進は、多くの部門や部署を巻き込み、投資金額の規模も大きくなる傾向にあります。経営改革に関わるものでもあることから、他の業務の片手間でできるものではありません。そのため、必要な能力を持った人材を専任とすることが望ましいです。では、具体的にどうやって人材を集めれば良いか見ていきましょう。
中途採用する
DXに精通した人材が自社内にいない場合は、IT業界やコンサルティング業界などでのDX推進に関する業務経験者を中途採用するのが近道です。育成するコストもかかりませんし、今まで社内になかった知見を持ち込んで即戦力となってくれることでしょう。ただし転職市場においても経験豊富なDX人材は不足しているため、獲得は困難になることが予想されます。
社内の人材を育成する
実際にDXを進めていく上では、自社が行う事業内容や取引先などをよく理解していることも必要です。現場をよく知る社員に研修やOJTなどで教育を実施しながら徐々に経験を積ませ、数年がかりでDX人材として育て上げれば、自社に合ったシステムを構築していくことも容易になります。ベンダーに頼らず自社内でシステム開発ができれば、システムの一貫性も保ちやすくなるでしょう。
外部リソースを活用する
外部リソースの活用、すなわちアウトソーシングでDXを進めるという方法もあります。専門のベンダーに外注すれば、蓄積された知見を低コストで利用することができ、また即座にDX推進に取り掛かることができて効率的です。ただし、運用が不透明になって本来やりたいことができなくなるといったことがないよう注意が必要です。
全社のデジタルリテラシーを向上する
DX推進には専門の人材を確保するだけでなく、その他の社員のデジタルリテラシーを向上させることも大切です。例えば、社内システムを刷新する際にはヒアリングや運用テストを行いますが、全社員が高いデジタルリテラシーを持っていれば話が早く、スムーズに進めることができます。
DX人材を育成するには
時間やコストがかかるとはいえ、長期的に見れば社内でDX人材を育成することには大きなメリットがあります。そこで、DX人材を育てる上で重要なポイントを解説します。
DXに向いている人材を見極める
DX人材にも向き不向きがありますから、まずは向いている人を選ぶことが大切です。ITに関する知識があることはもちろんですが、自社の業務を改善するための問題意識や新しい知識への探求心、既成概念にとらわれない柔軟な思考を持った人物が適任と言えるでしょう。
DX人材が育つ環境を整える
DXというのはそれ自体が革新的なものです。新しいことに取り組む際に失敗はつきものですから、失敗を恐れずどんどんチャレンジしていける環境を整えることは、DX人材の育成においてとても大切なことと言えます。ここでは、環境を整える際のポイントについて解説します。
デジタルリーダーの人材を登用する
DXの新たな事業を始める際には、デジタル技術に関する広い知識と深い理解を持ったデジタルリーダーの存在が力強い推進役となります。デジタルリーダーには、自社の事業にどんな技術を取り入れるかを検討するだけでなく、広く他のメンバーからアイデアを引き出すという役割もあります。
OJTなど実践できる機会を設ける
書籍や研修などで知識は身に付きますが、それを活かすにはやはり実践が欠かせません。実際の業務を通じて仕事を覚えるOJTは、DX人材の育成にも大いに役立ちます。知識が仕事に活かされれば自信もつきますし、やる気が生まれて新しいアイデアも出やすくなります。
DX人材になる学習を支援する
資格を取得する、外部の研修を受けるなど、DXに必要な知識を身に着ける方法はいろいろあります。学習意欲を持った社員に対しては金銭的な援助も含め、支援を行うことが必要です。政府の助成金が受けられる制度を利用したり、e-ラーニングの環境を整えるのも良いでしょう。
DX人材育成の事例
企業の中には、すでにDX人材の育成に積極的に取り組んでいるところもあります。ここでは、その事例をご紹介します。
ダイキン工業
2017年に大阪大学の協力を受け「ダイキン情報技術大学(DICT)」という社内講座を創設しました。AIのシステム開発や技術の活用など、管理職から新入社員、そして全社員を対象とするものまで多彩な講座を設置し、新たな事業展開につながる「AI活用人材」の育成を行っています。
日清食品ホールディングス
システム開発の内製化を目指して「ローコード開発ツール」を採用し、各部門が必要なアプリケーションを自ら開発し実用化しています。コードを書く必要がありませんので誰でも取り組みやすく、結果がすぐに役立つため、人材育成とDX推進の両立につながっています。
ソフトバンク
SDGsの達成を目的としてDXを推進しており、営業・企画分野のエキスパート120名を集めてDX本部を発足させました。メンバーはすでに持っているスキルやマインドセットに加え、研修を通してDXについても学んでおり、社外との協働でDXを推進しています。
就職や転職でDX人材になるには
新卒入社後にDXを担当する部門で配属されるほかに、転職やジョブチェンジでDX人材になる方法はあるのでしょうか。ここまでは企業側から見たDX人材についてご紹介してきました。ここからは、将来的なキャリアプランとしてDX人材になりたいという人に対し、どうすれば希望のポジションで働くことができるかについて解説していきます。
DX推進に向いている人・適性
そもそも、デジタル技術の導入やデータ活用をおこなううえで、テクノロジーへの理解や技術的なスキルが必要なのは言うまでもありませんが、DXに取り組む意識や姿勢も重要です。そこで、DX人材になるためにはどのようなマインドが必要なのか解説します。
まずは、DX推進をおこなう担当者に向いている人の性格や適性についてみていきましょう。
課題解決が得意な人
DXのそもそもの目的は、企業改革やビジネスモデルの革新です。つまり現状に課題を見出し、それを解決するにはどの技術をどのように取り入れていくかというのがその本質です。したがって、現状のままで良しとせず、課題を見つけてそれを解決していこうという姿勢がDX人材には必要となります。
周囲を巻き込める人
DXは社内の他部署や時には社外とも手を組んで進めていくものですので、独りよがりでなく人の意見を聞き、お互いを尊重し合う姿勢が必要です。むしろ他の領域との協働こそがDXの真骨頂とも言えますので、周りを巻き込んでいく力はDX人材には不可欠と言えます。
挑戦するマインド
現状を変えるというのがDXの目的ですが、それは決して平坦な道のりではありません。現状への疑問から始まり、長い時間をかけてたくさんの失敗を経て成功へとたどり着くものです。その中でも決してあきらめず、新しいことに挑戦し続けるマインドがDX人材には必要です。
DX人材のキャリアパス
未経験からDX人材を目指す方法として、転職も視野に入るでしょう。ここからは、IT業界で働く際のキャリアパスの一つとして、また、異業界異職種からのキャリアチェンジとして、DX人材になるために具体的に必要となる知識や経験について見ていきます。
CDOを目指すならデジタル戦略の経験を積む
最新のデジタル技術をふまえ、市場環境の変化や新たな顧客体験をもたらすビジネスを構想し経営ビジョンに反映させたり、新規事業の構築に役立てることで他社との差別化を図るのがデジタル戦略です。そのようなデジタル戦略の立案や策定は、まさにDXの神髄とも言える部分であり、この経験を積むことはDX人材としての市場価値を飛躍的に高めることに役立ちます。デジタル技術の最高責任者であるCDOを目指すのであれば、事業会社の経営企画部門や情報システム部門、コンサルティングファームなどに在籍し、デジタル戦略の経験を積みましょう。
IT/Web業界の経験者なら製品開発やサービス設計に関わる
DXでは、UXデザイナーやビジネスディレクターといった職種も重要な役割を果たします。このポジションに応募する際の経歴として重要なのがプロダクトマネジメントやサービス開発の経験です。事業会社での製品開発やWebサービスの設計、デジタル技術を活用した事業開発などの経験は強みとなります。ユーザー体験のデザインやサービスの価格設定、調達、生産、広告宣伝といった実際に事業の成長に寄与する過程に関わることも、DX人材を目指す上で有利に働くでしょう。
未経験ならデジタルテクノロジーに関する業務経験を積む
まったくの業界未経験からDX人材を目指す場合は、まずはエンジニアやプログラマーとして就職して何かしらのIT技能を身につけることがおすすめです。DXに欠かせないデジタルテクノロジーは「SMACS」の5文字で表わされています。これはソーシャル(Social)、モバイル(Mobile)、アナリティクス(Analytics)、クラウド(Cloud)、センサー・セキュリティ(Sensor・Security)の5つです。これらのうちいずれかの分野においてスキルを身に着けたうえで、ビジネスを学べる環境へ転身していくことがDX人材へのキャリアパスといえるでしょう。
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