Webアナリストとは?仕事内容・スキル・年収・資格・将来性
アクセス解析やウェブ解析などの分析を行う職業が「Webアナリスト」です。Webサービスの運用や広告配信を成功に導くためには、データに基づく運用改善が欠かせません。
この記事では、Webアナリストの仕事内容やスキル、平均年収、将来性について紹介します。役立つ資格や転職方法もチェックしてみましょう。
目次
Webアナリストとは
Webアナリストとは、ウェブサイトのアクセス状況を解析し施策の効果を検証したり、ユーザー分析の結果をもとに具体的なサイトの改善案を提案・アドバイスしたりする仕事です。業務に取り組む際には、アクセス解析やヒートマップ、BIなどの専門ツールやプログラミング言語、Excel、AccessなどのOfficeソフトも利用します。
意味のある分析をおこなうためには、広告やプロモーションなどマーケティングに関する知識はもちろん、統計や情報処理などデータを解析する能力も求められる職種です。
アクセス解析とは
アクセス解析とは、ウェブページが閲覧された回数や閲覧ユーザーの行動、滞在時間などを調査して分析する作業のことです。Googleアナリティクスなどのツールをサイトに設置することで、ユーザーの行動ログを蓄積して閲覧したページのほかに、地域やブラウザ、性別などの属性情報も取得することができます。また、アクセス解析ツールを利用することで、ユーザーがどのような経路でサイトにたどり着いたか、どのページを閲覧してどのページから離脱したかなど、様々なことがわかります。
しかし、アクセス解析業務は、このようなデータを集計するだけではありません。調査した内容を元にして、どうすれば問い合わせや購入などのコンバージョンに至るユーザーが増えるか、どのページを改善するのが効果的か、閲覧してほしいページにユーザーを誘導するにはどうするかなど、対応策も考えるのです。
Webアナリストの仕事内容
Webアナリストの仕事は、アクセス解析やユーザー分析などの業務を通してビジネスに役立つ知見を提供することです。日々の数値を定期的にチェックしてサイトに異常がないかのモニタリングを実施したり、サイト改善に関する施策や広告の効果検証や売上向上につながる仮説検証をおこないます。
週次や月次でレポートを報告する際は、フォーマットを作成したうえで報告書として仕上げます。全社的なダッシュボードの構築やKGI・KPI設計などに取り組むこともあります。制作会社や広告代理店など受託企業で働くアナリストであれば、それらの内容をクライアントへわかりやすく説明することも業務の一環です。
Webアナリストの具体的な業務内容について、以下でみていきましょう。
定期的な数値チェック・モニタリング
Webアナリストは、自身が担当するWebサイトの状態を常に把握していなければなりません。サイトへのアクセス数に急激な増減はないか、コンバージョン率は低下していないかなど、様々な項目の変化に目を光らせます。
もしGoogleアナリティクスなどの計測ツール上で異常を発見した場合は、その原因の確認作業も必要です。コンバージョン率が低下した場合は、入力フォームや買い物かごに問題はないか、Webページの表示速度が遅くないか、広告運用に問題が発生していないか、検索キーワードの順位が低下していないかなどを調査します。
実施した施策の効果検証
Webサイトを運用するうえでは、新規ページや新機能の追加、UIの改善など様々な施策を実施するのが一般的です。また、集客のためにリスティング広告やディスプレイ広告などのWeb広告に出稿したり、SNS投稿やキャンペーン展開のためのランディングページを公開したりします。
しかしこのような施策は、実施したまま放置してはいけません。運用した結果、どのような反応が出たかを検証することが重要です。その上で反応が悪い施策に対しては改善案を考えます。逆に一定以上の効果を上げた施策があれば、その要因を明確化し、次回以降の施策運用に活かすのです。
事業に有益な情報の発見
売上向上やコスト削減など企業活動のプラスになる材料の発見や報告もWebアナリストとしての仕事のひとつです。Webメディア運営企業やスマホアプリ、ゲームなど直接収益に結びつく内容だけでなく、Webサイト上のデータからは、様々な情報を読み取ることができます。事業部門から提案された仮設などをもとに検証をおこなうこともあるでしょう。
データを比較したり整理したりすることで、売上向上につながる情報が見つかることもあるのです。例えば実際にコンバージョンまで至った顧客の閲覧時間帯から、メルマガ配信に最適な時間を導き出すこともできます。
報告・改善提案
モニタリングした指標や分析結果のレポートを作成して報告することも重要な仕事です。事業部門やクライアントの意思決定者に役立つ情報や判断の根拠を揃えたうえで報告書を作成します。BIツールを導入してリアルタイムに数値を確認できるダッシュボード化などの業務も該当します。
広告代理店などで働く際は、営業と共にクライアントへの提案を作成することもあります。その際、内容の趣旨が正しく伝わるように配慮しなければなりません。専門用語は避けて平易な言葉を選んだり、グラフや表などの図解を利用したりして理解を助けるための工夫を凝らします。
Webアナリストに必要なスキル
Webアナリストとして働くためにはどのような能力や知識が必要なのでしょうか。統計解析や各種ツールの操作ができることはもちろんですが、他事業部やクライアントなど利害関係者と円滑な意思疎通ができることも大切です。
一緒に働くビジネスサイドのスタッフの多くはアクセス解析に関する専門知識を有していません。そのような相手であっても、理解しやすく伝えます。また、分析結果を伝えるためには、誰が読んでも理解できる文章を書き、レポートを作成する能力が必要です。
エクセル操作に関しては、ピボットテーブルやマクロを活用する場面も出てきます。また、ロジカルシンキングや統計学、数値分析などについても、基礎的な知識を有しておくことは必須です。このように、Webアナリストに必要なスキルは多岐にわたります。
データ分析・解析力
Googleアナリティクスなどのツールを駆使して集めた情報は、それだけでは価値がありません。意思決定や改善に利用できるようにするには、仮説を検証したり、そのような結果となる原因を確認することが大切です。
目的を明確にする
データ分析を行う前には、目的を明確にする必要があります。あらかじめ検証する対象や分析の内容を決めておくことで、どのような手順で分析を実施するかがスムーズになります。そのためにも、ビジネス上の最終的なゴールを理解しておくことは重要です。
分析目的に応じて実施する内容を設計しますが、データに目を通して、必要な情報が取得できているかどうかや、分析を実施するために調整しなければならない点なども洗い出しておきます。
KPIやデータを設計する
Webサイト運営における目標数値を明確にすることもWebアナリストに必要なスキルです。KPI(重要業績評価指標)とは、目標達成に必要な中間指標のことです。例えば、サイト上の登録をゴールとした場合には、登録フォームの表示回数、登録ページのアクセス数などがKPIとなります。
また、ECサイトでは、購入単価、購入数などを中間指標に設定して目標達成の進捗状況を管理するのです。改善箇所を特定するためには、これらの中間指標をさらに細分化します。例えば、サイトへの流入経路を自然流入数と広告流入数に分割して把握するなど取得するデータの設計も重要です。
タグ設置やツール導入
目標値やKPIを設計したら、数値を取得して集計後にレポートに反映させる手順を考案します。データ取得やツール導入に際してWebサイトのコード部分にタグの埋め込みも実施します。Googleタグマネージャー(GTM)などのタグマネジメントツールを使用してサイト上でのタグ設置やパラメータ調整を実施することが多いでしょう。導入のほかにツール選定や評価も実施します。
また、購入履歴や商品データなど自社のデータベース上に蓄積された情報をアクセスログと紐づけて分析を行うこともあります。データの取得状況や更新のタイミング、各指標の定義をおこない複数のデータを活用できるよう整備します。
資料作成・レポーティング
報告内容をわかりやすくドキュメントにまとめ説明用の資料を作成したり、集計したデータをわかりやすいグラフや表にして可視化する能力は、Webアナリストに必須のスキルです。社内での報告書のほかに、クライアントとの打ち合わせで使う資料や日々のレポーティングで発揮されます。
コミュニケーション能力
Webアナリストが解析した結果を有効活用するには、施策実行の承認を得る必要があります。事業部門の責任者や直属の上司など社内だけでなく、クライアントなど社外の人間とも円滑な関係を築かなければなりません。また、自社でWebサイトを構築、運営するにも、Webディレクターやデザイナー、プログラマーなど多くの人員が動きます。
そのため、制作チームのメンバーとも良好な関係を維持する必要があります。また、場合によっては外部スタッフの協力を得ることもあります。このように様々な人々と関わる可能性が高いWebアナリストは、高いコミュニケーション能力が求められるのです。
Webアナリストの平均年収
Webアナリストの平均年収は、500万円前後が相場です。一般的な会社員の平均年収と比べても高い水準にあるでしょう。Web業界の正社員求人では、年収400万円台~500万円台の募集が主流と言われています。もちろんスキルや経験によって上下するのは他の職種と同じです。外資系企業に在籍していたり、フリーランスのWebアナリストとして活躍する人の中には年収1000万円以上の方もいます。
Webアナリストになるには?
未経験からWebアナリストに転職することは可能なのでしょうか。ここまで紹介したとおり、Webアナリストは専門的なスキルが必要な職種です。そのため、中途採用での転職では、アクセス解析などの実務経験が必須要件とされる求人がほとんどです。新卒や第二新卒などのポテンシャル採用枠で入社するほかは、何かしら実績を作ってからの転職活動が必要になるでしょう。
社会人がWebアナリストにキャリアチェンジする方法として、最初は別のWeb系職種で入社してキャリアを積んでから転職する方法があります。エンジニアやプログラマーとしての職歴があると転職の可能性が高まるでしょう。また、マーケティング部門やWebディレクターなどの職種で経験を積んだ後、転身することも可能です。
Webアナリストに役立つ資格
Webアナリストとして活躍する際に、役立つ資格があります。資格を保持することで、第三者に対してスキルをアピールすることができるからです。
Webアナリスト検定
Webアナリスト検定は、一般社団法人日本Web協会(JWA)が提供する検定試験です。Webサイトのアクセスデータ解析やトレンドキーワード分析などを行える人が保持できる資格です。5時間の講義を受講してから試験に臨みます。資格取得試験では、Googleアナリティクスなど実践的なツールの使用方法に関してもテストされます。
ウェブ解析士
ウェブ解析士とは、一般社団法人ウェブ解析士協会が提供する一連の資格を指します。WebアナリティクスやWebマーケティング分野について、一定以上の知識やスキルを有する方が所持できる資格です。資格を取得するためには、KPIの設定方法やウェブ解析の報告書作成など、実務で必要となる能力を身に付けなければなりません。
Web解析マネジメント講座
Web解析マネジメント講座に参加することで、WAA(Web Analytics Association)の考え方を身につけることができます。WAAはアメリカに本部を置く、ウェブ解析の世界的な組織のことです。ウェブマーケティングに関する事柄も幅広く学べます。
Google アナリティクス個人認定資格(GAIQ)
GAIQは、Google Analytics Individual Qualificationを略した言葉であり、Google社が公式に取り扱っている資格です。文字通り、Googleアナリティクスに関する一定以上の理解が求められます。知識はもちろん、実際にツールを操作できるかどうかもポイントです。試験対策としてGoogleが提供する学習ツール「アナリティクスアカデミー」を利用して学べます。
Webアナリストの将来性
日本におけるWebアナリストという職種の知名度は、外国に比べると低いです。実際、日本の一般企業が、自社内にWebアナリストを専属で雇用するケースは多くありません。しかしながら、インターネットが普及しデジタル化が進むことで、企業にとってアクセス解析を利用するシーンは今後ますます増加していくでしょう。
また、Eコマースやゲームなどオンラインマーケティングの重要性が高まる中、広告や施策検証に関わる分析職種の需要も高まっています。そのように、Webアナリストは将来性がある職種だと考えられているのです。
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