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社内SEとSEの違い・20代と30代で転職するならどっち?

SE(システムエンジニア)と呼ばれるIT技術者の業務範囲は広く、明確な職務の定義は存在しません。所属する組織や専門分野、得意領域などにより、同じSEでも仕事の内容は異なります。その中で、SIerやシステム会社で働く普通のSEと区別して、事業会社の情報システム・IT担当者を特に「社内SE」と呼ぶことがあります。

DX(デジタルトランスフォーメーション)の注目が高まり、社内でのIT企画やデジタル推進を担う担当者として、SEから社内SEへの転身事例も増えてきました。

この記事では、一般的なSEと社内SEとの違い、大手と中小での待遇の差、年収、キャリアパスなど紹介します。さらに、20代・30代での転職についてもみていきましょう。

SEの種類

わかりやすい分類としてSEは「社内SE」と「社外SE」の2つのタイプに分けられます。これは組織の中か外か、つまり、開発や運用・保守などの発注側のユーザー企業に所属するのが「社内SE」、システム会社やSIer・コンサルファームなど受注側のベンダー企業で働くのが「社外SE」という分類です。

IT業界では、クライアントのオフィスに出勤して仕事をする客先常駐やSESなどの働き方も一般的です。ここでの社内、社外は、単に作業場所という意味ではありません。また、国内ではベンダー企業側に所属するIT技術者が多いです。そのため、社外SEをあえて区別せず普通にSEと呼ぶケースが一般的でしょう。

同じSEであっても、社内SEとSEでは、仕事内容や求められるスキルに違いがみられます。そこでここからは、それぞれの仕事内容や傾向を紹介します。

社内SE

社内SEの仕事内容は、自社で使用するシステムの企画・開発や運用、管理など広範囲に及びます。情報システム部門の一員として技術者ではなくIT担当者という位置づけで働くこともあります。企画・開発では、SEとして業務分析やヒアリングをおこない、システム化の対象範囲や技術選定、優先順位などの要件を定義してIT企画や導入計画の策定などを行います。

具体的な開発業務は外部の企業に発注(アウトソース)することも多いでしょう。そのため、IT導入や開発の社内窓口として、見積もりや価格交渉、予算管理などのベンダーマネジメントをおこないます。システムやアプリケーションなどフルスクラッチで開発する以外にパッケージやSaaSツールを導入することもあります。

運用・管理の仕事では、システムがトラブルなく稼働するよう保守監視を担当します。リモートワーク環境やファイルサーバー、ネットワーク回線などITインフラ全般を整えたり、ヘルプデスク的な立ち位置で全社のユーザーサポートやQ&A対応をおこなうこともあります。必要に応じてIT資産の管理を任されることもあるでしょう。

自社向けの開発

社内SEの業務の特徴は、開発するシステムが社内向けのものであるという点です。規模の大きな企業では、プロジェクトマネージャーやプログラマー、インフラエンジニアなどの役割毎に分業されるケースもありますが、中小企業やベンチャー・スタートアップでは、1人の社内SEが多くの業務を担う傾向も強いです。コーポレートサイトの管理やExcel VBA、RPAなどに携わることもあるでしょう。

一方、開発するシステムは自社内で利用するため、取引相手や外部のクライアントが利用するシステムに比べ、不具合や完成度に関して寛容な面もあります。日常的にかかわりのある社員との打ち合わせが比較的多く、業務内容についても理解していることは社内SEならではといえます。

そのように、外から開発に参加する普通のSEよりも、社内SEのほうが仕事がしやすいというメリットもあります。プロトタイプを作りながらアジャイル開発に取り組んだり、自社で運用するシステムの改修を進めたり、開発後のメンテナンスを続けていくことも求められるでしょう。

企画などの上流工程に参加

社内SEの場合、自社で使うシステムにかかわることが多いため、実際のシステムを開発するコーディングやテスト・検証、不具合の改修といった作業だけではなく、必要とするシステムの要件を決めたり、技術調査や企画といった、上流工程からプロジェクトに参加できることも魅力の1つです。

IT戦略の立案や企画にあたっては、情報システム部門だけでなく、事業部門とも連携して必要な機能や性能を明確にします。外部企業のITコンサルタントやSIerに見積もりを依頼したり、複数のIT製品を資料請求して性能比較なども実施したうえで、社内稟議を申請して予算をとおします。

DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進するITのエキスパートとして設計、開発、試用、導入などのすべての工程を担当することも少なくありません。上流工程と呼ばれる段階では、システムの仕様や方向性を決定していく作業が一般的に多いため、コードを使用したりプログラミングをしたりする機会は少なくなります。

納期などに融通が利く

社内SEとして働く魅力の1つに、余裕のある納期の設定が可能であることが挙げられます。システム開発やツール導入などのITプロジェクトでは必ずといってよいほど納期が設定され、受託した側のベンダー企業ではそこを遵守する必要があります。

スケジュール通りに開発が進まない場合は、残業時間が増えたり休日出勤なども必要になることがあるでしょう。そのように、社外からの仕事を受注して業務に当たるSEと比較すると、社内SEの担当する仕事上の納期は融通を利かせられることも多いのです。社内で活用するシステムでも、全社的なネットワークの不具合やユーザーが利用するサービスなどで緊急対応を求められるケースもありますが、例外的な位置づけでしょう。

一般的な情報システム部門の仕事では、そこまでタイトな仕事は多くありません。社内にITに詳しいスタッフが多くなく、理解が得られにくいこともありますが、その反面、工数の見積もりや開発のスケジュールなどは情報システム部門で裁量をもって決めやすいということもあるのです。

SE

社内SEが自社の様々な業務を一括して担当することが多い一方、ユーザー企業からの依頼をうけて仕事をする普通のSEの仕事はどうでしょうか。受託開発をメインで行うSEは、主にシステムの企画や設計に関する業務に注力できます。大手のSIerなどでは金融、エネルギー、製造、医療、サービスなど顧客の所属業界や技術分野などで担当が分かれる会社も多いです。

その上アプリケーション担当やインフラ担当、ネットワーク担当など、対象が細かく分業されていることも少なくありません。主な業務内容は開発窓口に加え、システムの運用や保守などです。そのため、社内SEのように、一見システムエンジニアリングとは関係なさそうな仕事をこなす必要がなく、クライアントワークを中心に仕事を進めることになるでしょう。

また、プロジェクトオーナーが社外に存在し、最終判断をおこなうのがクライアントであるという点にも大きな違いがあります。

クライアント向けの開発

クライアントから請け負った開発に従事するSEといど、開発のために業務内容や既存システムを理解する必要があります。個人情報や営業機密に関わることもあるため、元請会社やクライアントの社員と一緒に常駐して作業することも少なくありません。その場合は、プロジェクトが変わる度に通勤先も変わることになります。

また、開発するシステムの利用者は他社の社員であるため、完成後の運用・管理などが契約に含まれていないと稼働後にシステムが実際にどのように活用されているかを見る機会は少ないかもしれません。予算が潤沢で技術的に高度な案件は、クライアント規模が大きい会社ほど関わる機会も多く、対外的にも評価されやすいでしょう。

SEとして実績を積みたい場合は、常に新しい技術に対応するだけでなく、将来的な需要も考慮しなくてはいけません。最終的な判断は顧客といっても、ベンダー側からの技術提案や提言に期待する顧客も多いものです。また、クライアントや担当者により要求も様々であるため、それに応えられる人材であることがSEには求められます。

要件定義から保守、運用まで

要件定義から保守、運用までIT開発の一連の流れを経験できることもベンダー側のSEの特徴でしょう。企画段階では、どういったシステムやアプリケーションを開発するべきかといった議論を始める前に、背景や課題、クライアントの要望などを、しっかりとヒアリングする必要があります。納品先が社外の人や企業であるため、難易度は高いですが的外れな提案を行わないためにも事前の摺合せが重要です。

そのため、要件定義や基本設計といった上流工程は、SEの仕事のなかでも重要な業務とされています。特に、システムに実装する機能や、満たすべき性能によって開発にかかる工数に違いが生じるため、要件次第で費用が変わってきます。スケジュールや納期にもかかわるためSEは自身の認識とクライアントの考えに齟齬がないか、要件や仕様を慎重に確認する必要があります。

また、下流工程とも呼ばれる、プログラミングやテスト・検証・デバッグさらに案件によっては、納品時の運用設定に加え、導入支援や保守業務も作業内容に含まれることがあります。そうした場合、運用設計や運用マニュアルの作成といった業務を担う必要もあるのです。

中小SIerと大手SIerとの違い

SIerはエスアイアーと読み、システムインテグレーションを指すSIを提供する企業を言います。SIとは、システムの企画や設計、構築、運用、保守といった業務を一貫して行うサービスのことです。こうしたSIerのなかでも、大手と中小でSEの仕事内容が異なります。

比較的規模が小さな会社だと、クライアント企業から直接のプロジェクトは少なく、大手のSIerや他のシステム会社の下請けとして仕事をすることも多く、そこに属するSEの業務が限定的になる場合があります。例えば、業務を外部から受託することに違いはなくても、一次請け、二次請け、孫請けというように下位の会社ほど案件規模や単価が下がってきます。

そのため、SEといっても必ずしも上流工程からシステム開発に参加できるとは限らないのです。案件によって違いがありますが、そうした場合、PGの業務とされる、コーディングと呼ばれるコードを用いたプログラミング作業や、単体テスト、結合テスト、総合テストといったテスト作業にも関わることがあります。

社内SEとSEの違い

社内SEには、社内向けのシステムを開発したり、社内のIT関連の業務を円滑にこなしたりして、自社の利益やビジネスに貢献するという特徴があります。一方で、SEは、IT技術を用いた商品やサービスをクライアントに提供することで利益を生み出します。ここからは、こうした違いが社内SEとSEにどのような違いをもたらすのかを紹介します。

仕事の範囲

社内SEとSEに共通する業務であるシステムの開発や導入を例にとっても、主に担う仕事の範囲に違いがあります。こうした業務は、一般的に、要件定義、設計、開発、テスト、運用といった工程に分けられますが、社内SEとSEとでは、かかわる工程の重要度に違いが生じることもあるのです。

社内SE

社内SEは、システム開発や導入のすべての工程にかかわることもありますが、そのなかでも深くかかわるのは、企画や運用の工程だと言えます。設計や開発は外部のベンダーに委託することもあるため、SEにとってのクライアント窓口のような立場になることが社内SEは少なくありません。設計や開発業務を外注できれば、その分社内SEの業務の負担は減ります。一方で、アウトソースが難しい社内調整やビジネス理解、ITの定着化、社内制度化などが社内SEの主な仕事といえるでしょう。

SE

SIerやシステム会社で働くSEは、社内SEとは対照的に、一連の工程のなかでもシステムの設計や開発にかかわることが多いと言えます。開発を受注して納品するまでの作業を受け持つ一方で、社内での定着や運用保守などの実業務を担当することは少ないです。もちろん、会社によってSEの担当業務は異なるため、テストや運用工程がメインとなる運用保守SEといった職種も少なくありません。場合によっては複数の会社と協力して作業を進めることもあり、PLやPMといったロールを目指しますが、仕事の範囲は案件は企業の規模によっても大きく変化します。

必要なスキル

業務の目的や仕事の範囲が違えば、当然、社内SEと普通のSEに求められるスキルにも違いが生じます。ここからは、それぞれにどのようなスキルが求められるかを紹介します。

社内SE

自社の事業を成長させたり、改善したりするシステムの構築が社内SEの重要な業務です。そのため、システム開発に関する一連の知識やスキルは必須といえるでしょう。経営戦略を踏まえて、IT戦略を立案したり、業務分析をして課題を抽出したりとコンサルタントのような能力が求められる会社もあります。また、技術よりも社内の多くの人と密接にコミュニケーションをとる高い対人能力が求められることもあります。IT関連の資産や予算を管理するため、ドキュメント作成のスキルがあると重宝されるでしょう。

SE

社内SEのように、社内の幅広い業務に対応する必要はSEにはありません。その分、システム開発やプロジェクトマネジメント、運用、保守などクライアントをリードしてシステムやソフトウェアを企画・設計するための専門知識は必要です。クライアントのなかでも担当者によって、意見や要望に違いがあることも多いため、そうした違いに細かく対応でき、クライアント側の決裁者となる人物と意思疎通して議事内容を合意できる交渉力も必要です。また、常に最新技術を取り入れる柔軟性や向上心も重要で、先を見通しつつ問題解決をおこなうよう心がけるとよいでしょう。

年収

同じSEにかかわる職種であっても、社内SEとSEには年収の面でも違いがあります。

社内SE

求人ボックスによると、社内SEの平均年収は489万円です。そのように、一般的な社内SEの年収相場としては400万円~800万円程度です。新卒採用の20代や未経験からの転職者などは、年収300万円台からのスタートで、30代以降になると500万円程度が見込めるでしょう。大手企業、外資企業の社内SEでは600万円を超えることもありますし、管理職以上では、少数ながら1000万円を超える年収も期待できます。

SE

平均年収.jpによるとSEの平均年収は550万円です。そのようにSEの年収相場は、400万円~1,000万円程度と幅があります。これは社内SEよりもSEのほうが給与レンジの影響を受けやすいためです。下請け企業のSEよりも元請企業のSEのほうが高収入です。また、高度なスキルや経験を持っていると評価が高まり、年収に影響することもあります。また、社内SEと比較して残業が多い傾向もあるため、残業手当のつき方も年収に関係すると言えます。一般的に、社内SEよりもSEの方が、年収が高いことが多いです。

転職するならどっち?

これからSE(システムエンジニア)への転職を検討している人は、社内SEとSEのどちらを選択するべきか悩むこともあるでしょう。ここからは、転職で考慮するべき、社内SEとSEの特徴を紹介します。

メリット・デメリットを把握する

まず、それぞれの長所・短所を比較してみるとよいでしょう。一般的に社内SEは落ち着いた環境で仕事ができる点がメリットで、その分給料は少ない傾向にあります。受託企業のSEは、様々な案件に関われシステム開発の経験を積むことができますが、ハードワークな会社も多く、下請け企業と元請企業の格差が大きいという傾向です。

また、社内SEは、社内業務や社内向けシステムの開発が主な業務であるため、キャリアの土台を作るという意味では、得られる経験の幅が少々限られているという見方もできます。

その点ITベンダー側のSEは、社外の案件や人間関係、環境によって様々な経験を積む機会に恵まれると言えます。社外の複数のエンジニアとチームを組んだり、様々な経営者とやり取りしたりすることもあるため、そうした面からも幅広い経験を積めるのです。

20代若手の転職ならSIerがおすすめ

SIを提供する企業であるSIerは、大きくユーザー系、メーカー系、独立系に分けることができます。そのなかでも、独立系SIerは、親会社が存在せず独立してシステム開発の案件を受注しています。資本関係に左右されない点が特徴であるため、受けられる案件の種類が多く、業務に使用する製品のメーカーを限定されるといった制限がありません。

その自由度の高さから、独立系の企業であれば、若いうちから多様な経験が積めるのです。また、新卒採用のプロパー社員だけでなく、キャリア採用による転職SEも活躍できる土壌があります。ユーザー系、メーカー系のSIerでは案件の傾向が固定されている面もありますが、特定技術に関して中途採用を強化している企業もあります。

未経験からプログラマー(PG)で就職して、SEになり、SEからPL、PLからPMとポジションチェンジを繰り返しながら出世魚のようにキャリアを駆け上がることも可能です。

転職で年収アップを実現したい場合やキャリアアップを考えるなら、就職先としてSIerも検討に入れるべきでしょう。ITエンジニアとして活躍する強固な土台を作るためにも、20代での経験は重要です。

30代以降は社内SEも人気

勤務時間や勤務地が固定されていることが一般的な社内SEは、長く働ける職種としてベンダー企業側でシステムエンジニアを経験した人の転職先で人気が高いです。大手企業でも長らく外部企業へ開発を委託していた会社では、IT人材の不足が顕在化しており、給与テーブルの高い会社への就職機会もでてきています。

また、事業会社で働くからこその有給消化率でワークバランスの取りやすさや、残業の少なさ、家賃補助や退職金などの福利厚生も、家庭を持つ人が増え始める30代以降の労働者には魅力的でしょう。

PL(プロジェクトリーダー)・PM(プロジェクトマネージャー)を目指すSEに対して、社内SEでは、リーダー、部課長、執行役員など情報システム部門での出世をめざします。

また、社内SEは、IT技術だけではなく、ビジネス戦略や経営などを学ぶ機会も社外のSEと比較すると多いです。そういったキャリアアップを視野に入れている人にとっても、有意義な経験ができる職種です。

DX推進で社内SE転職への活況が進む

DXは、デジタルトランスフォーメーションを指す語であり、電子化やデジタル化が進むいま、あらゆる企業が経営課題として標榜するキーワードとなっています。ITが多くの人の生活に影響を与える状況のなか、いかにオンラインやデータを活用した事業の拡大や業務の効率化に着手できるかが重要です。

一定以上の企業規模があれば、業績の良しあしに関係なく、DXの推進を図り、IT事業に対する投資を積極的に行っている状況です。そのため、転職市場や採用市場もITに関する知見に富んだ人材については活況です。もちろんキャリア採用のため社内SEであったとしても即戦力が求められます。

そのため、SIerなどで経験を積んだ人材を自社に抱えたいという採用担当者は多いのです。DX人材の転職市場は今まさに注目が集まっていて、今後もSEの転職先として人気が高まる状況が続くと言えます。

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