ITエンジニア案件の単価は?フリーランスで独立する前に
IT業界の発展と共に社会に普及してきた職業として「ITエンジニア」があります。情報システムの導入や開発、保守・運用などの案件は安定した需要があり、正社員として働いた後、独立してフリーランスの道を選ぶ技術者も増加しています。
この記事では、ITエンジニアの単価相場や年収、フリーランスとして独立する方法などを解説します。仕事やスキル、将来性なども見ていきましょう。
目次
フリーランスのITエンジニアという働き方
フリーランスのITエンジニアとして働くことに、興味を持つ人が増えてきています。ITエンジニアは需要の高い職種ですが、フリーランスとしてやっていけるのかには疑問を持つ方もいるでしょう。フリーランスのITエンジニアについて、年収や適性、仕事の始め方、市場動向などを紹介します。
ITエンジニアとは
ITエンジニアは、情報技術(Information Technology)に関わる技術者のことです。システムの設計をおこなうシステムエンジニアも、サーバーの設計・構築・運用保守をするサーバーエンジニアも、ネットワークエンジニアやプログラマーもすべてITエンジニアといえます。つまり、ITエンジニアはIT技術を駆使するエンジニアの総称なのです。経済産業省の調査によると、ITの人材は需要が伸びている一方で人材不足が懸念されています。フリーランスのITエンジニアを目指す人にも、チャンスではないでしょうか。
ITエンジニア案件のタイプ
フリーランスのITエンジニア案件には、大きく分けて2つのタイプがあります。クライアントや案件の規模・内容・勤務スタイルなどに差が出てくるため、2つの違いについてよく理解しておきましょう。
常駐型
常駐型は、クライアントが指定する場所に常駐して業務をおこなうタイプの働き方です。クライアント企業の社内や関連施設など、依頼された場所に常に出勤するスタイルの働き方です。クライアントにとっては目の届きやすい場所、相談しやすい場所にITエンジニアがいてくれるメリットがあります。エンジニアにとっては、クライアントの現場を理解しやすいのがメリットです。フリーランスにもかかわらず会社勤務のような働き方となるため、比較的安定した立場に安心できるかもしれません。
在宅型
在宅型のITエンジニアは、クライアントから受注した案件を在宅やテレワーク、リモート環境などの遠隔でこなします。必ずしも自宅である必要はありませんから、コワーキングスペースやカフェなどで働くことも可能です。在宅型のITエンジニアは、同時に複数の案件を進めることができます。会社員のように、毎日出勤する必要もありません。ただし、業務でかかった電気代やインターネット接続費用などは自己負担となるのが一般的です。
ITエンジニアの仕事内容
ITエンジニアの仕事内容は、システムやネットワークなど関わる分野が違ってもその分野で何をするかには共通しているところがあります。主にどのような仕事内容があるのか、見ていきましょう。
企画・設計
企画から設計に至る工程は、上流工程と呼ばれています。システムやネットワークなど、どのような構成にすれば最も効率がよいかを考え要件を定義するのが企画の仕事です。設計のフェーズでは、企画に沿って具体的な仕様を決めていきます。効果が発揮されるように機能を拡充することも重要ですが、導入目的やビジネスの背景を理解して活用するユーザーが仕事を進めやすいように設計することも大切です。
開発
開発の仕事は、あらかじめ仕様書や設計書としてまとめた企画内容を実際のシステムとして形にする仕事です。設計を含めて開発業務とすることもあり、クライアントや案件によって解釈の仕方が多少異なります。実装はプログラマーに任せて、プロジェクトの管理や合意形成に集中するITエンジニアも珍しくありません。
運用・管理
IT技術は、機能的に運用されてこそプロジェクトが成功したといえます。また、どれほど優れた設計がされたシステムでも、運用するうちに問題が発生する可能性があります。そのため、インフラ基盤を含めた運用・管理もITエンジニアの欠かせない重要な任務です。運用を進めるうちに、性能をさらに向上させるヒントが見つかることもあります。
ITエンジニアに求められるスキル
フリーランスでも会社員でも、ITエンジニアには様々なスキルが求められます。特にフリーランスが仕事を得るには、高度で幅広いスキルがあったほうが有利です。どのようなスキルが求められるのか、紹介します。
コミュニケーション能力
ITエンジニアには、コミュニケーション能力が問われます。クライアントから要望を正しくヒアリングする必要があったり、他の技術者と連携しながら仕事を進めることも多いためです。コミュニケーション能力が高いことで、トラブルが発生したときの問題解決も速やかに進めやすくなります。
プログラミング技術
プログラマーはもとより、それ以外のITエンジニアにもプログラミング技術などのITスキルは必要です。プログラマーに指示する役割のITエンジニアの場合、プログラミングの現場で何がおこなわれているのか、どのような問題が発生し得るのかを想像できなければ適切で具体的な指示が出せません。また信頼を得るのも難しくなるため、プログラミングより上流工程の業務を担当するエンジニアでも最新技術を理解しておくことが大切です。
マネジメント能力
ITエンジニアは、チームで仕事をすることも多い職種です。他の技術者に指示を与えて全体の業務をスムーズに成功に導く役割であれば、マネジメント能力が問われます。フリーランスは自分自身を律するという意味でも高い管理能力が求められるのです。また、企画・設計・開発・運用・管理まで1人でこなさなければならない案件では、なおのこと業務を滞りなく管理する能力が必要です。
文章作成能力
クライアントとやり取りをする中で、文章能力が問われることもあります。メールやチャットでのやり取りも多く、企画書や報告書などのドキュメントを作成する必要も出てくるためです。相手に伝わりにくい文章では、事故につながる恐れもあります。お互いに限られた時間の中で効率的なやり取りをするには、相手にわかりやすい文章をなるべく手間をかけずに作成できる能力が必要です。
フリーランス市場動向
フリーランスで働くITエンジニアの求人市場や案件の動向について見ていきましょう。どのプログラミング言語が高いシェアを占めているのか、どのような人材の希少性が高いのかなどについて案内します。
業務委託案件でのプログラミング言語の傾向
数あるプログラミング言語の中でも、業務委託の求人案件で半数近くの割合を占めているのがJavaとPHPです。その内訳はJavaが全体の約3割、PHPが約2割といわれており、他の言語に比べ高いシェアを誇っています。ScalaやRubyを使う現場も増えてきましたがIT業界全体からするとまだまだ少数派です。幅広い分野の開発に対応できるJavaは業界を問わず活用されています。組み込みやゲームではC++、C#、Web制作ではJavaScriptなど業界によって使われる言語に偏りがある点にも留意しましょう。また、フリーランスから人気の言語としては、PythonやGoがあげられるでしょう。
フリーランスは即戦力として一人称での稼働が求められる
フリーランスのITエンジニアは、動きが柔軟で企業が必要なときにすぐ頼みやすい存在です。そういう意味でも即戦力として一人称で稼働ができることを求められるのですが、スキルレベル以上にタイミングや案件へのフィット感も重要です。フリーランスとしてやっていくためにITスキルを磨いておくことは重要ですが。IT市場全体の傾向やフリーランス人材のトレンドなどを把握して、先読みしたスキルを身につけましょう。需要に対して供給が少なく希少価値が高い経験やスキルがあると契約を有利に進められるでしょう。
高単価人材はレアスキル持ちかゼネラリスト
同じITエンジニアといっても、案件の単価には幅があります。基本的に上流工程の業務や希少価値の高いレアな業務をおこなうことができれば、報酬は高くなります。フリーランスは会社員とことなり、報酬に年齢はほとんど関係ありません。20代でも30代、40代と同じ単価で仕事ができます。ただし、50歳以降は下がってしまう傾向があるため注意しましょう。
企業が高単価を支払ってまで依頼したいITエンジニアに傾向はあるのでしょうか。こちらも需要と供給の関係で説明できます。プロジェクトを遂行するために必要な技術者がいれば、多少単価を上げてでも人員の調達を行う必要があるのです。そのため、企業が欲しがる割に人材が不足しているレアなスキルを持っていると単価交渉で有利になります。複数の分野にまたがった知識や技術を持ったゼネラリスト、上流で設計をおこなうアーキテクトやPMといった職種も、高単価の仕事を依頼されやすい人材です。時流にあわせ柔軟に対応ができないタイプのエンジニアだと、フリーランスではなかなか仕事が受注できないかもしれません。
ITエンジニアの年収・単価相場
需要が高く人材が不足しているのであれば、ITエンジニアの年収や案件の単価相場は期待できそうだと思う方もいるでしょう。どのくらいの収入を得られるものなのか、会社員の場合とフリーランスの場合を比べてみてください。
会社員ITエンジニアの平均年収
会社員の場合、単にITエンジニアというだけで年収を比較できません。年齢や勤務先の経営状態などによっても、年収には差が出てきます。ただ、ある調査では会社員ITエンジニアの年収層で最も多いのは平均550万円という結果が出ています。同じ調査で出た結果では、半数弱が平均400万円から450万円の年収です。
フリーランスITエンジニア案件の単価相場と年収
フリーランスの場合は、最も多い年収層が平均660万円という調査結果です。全体の3割近くが平均660万円で、次いで多いのが780万円です。次に続くのが2割近くの900万円で次がやっと540万円というくらいですから、会社員以上に高い年収を得ているフリーランスエンジニアが多いことになります。1ヶ月で案件を請け負うと仮定すると、単価相場は最多層で45万円から75万円ほどと見ることができます。
フリーランスのITエンジニアになる前に
フリーランスのITエンジニアとして生計を立てていくためには、それなりの準備が必要です。覚悟として認識しておきたいことも、多々あります。どのようなことを知っておいたほうがよいか、解説します。
会社員エンジニアとフリーランスエンジニアの違い
会社員とフリーランスでは、様々な点で違いがあります。その違いにはメリットもあればデメリットもあるため、何が違うのかを把握しておきましょう。
仕事のスタンスが違う
フリーランスのITエンジニアは、仕事を自分で獲得しなければなりません。案件探しから希望する案件を獲得できるかまで、自分次第です。案件を自由に選べる反面、なかなか案件が見つからない可能性もあり、スムーズに仕事を獲得する方法を見つけておくことも大切です。
年収を左右する要因が違う
フリーランスの場合、年収が年齢に影響されることがあまりありません。経験年数の影響からいえば年齢が全く無関係ともいえませんが、会社員のように年収が年齢に左右されることは少ないでしょう。一方で、技術や経験が伴わないと何歳になっても年収が上がらない事態になる可能性もあります。
高齢者の採用難はどちらも同じ
会社員の場合、採用時に年齢がネックとなることもあります。年齢制限がなくても、若い世代のほうが採用される可能性が高いのは事実です。実は、フリーランスでも年齢が案件獲得に影響する場合があります。年齢に負けずに、案件を獲得する工夫は必要です。
フリーランスに向いていない人
フリーランスのITエンジニアに憧れていても、実際にはフリーランスの働き方に向いていない人がいます。なぜフリーランスに向いていないのか、理由を挙げていきます。
仕事に責任を持てない人
フリーランスに仕事を発注するのは、即戦力としてすぐに稼働してほしいからです。会社員と異なり教育や研修はありません。そのため、多少のトラブルがあっても受注した案件やタスクを契約通りに遂行できない人は、フリーランスに向いていません。会社員は、いざという時に助けてくれる上司や同僚がいますが、フリーランスはひとりで案件をこなさなければならないのです。
お金の収支や自己管理が苦手な人
フリーランスの場合、案件の報酬として得られる収入だけでなく支出にも注意しておかなければなりません。なぜなら、自己負担しなければならない経費が多いからです。また、当月や翌月に指定口座に振り込まれることの多い会社員の給料に比べ、フリーランス報酬の支払いサイトは45日や50日など一ヶ月より長い場合もあります。一時的に支出が増えた月や案件が少ないタイミングでは、経費を切り詰めながらやっている人も多く、お金の収支バランスに目を向けておかないとやり繰りに無理が出てくることもあるでしょう。
交渉ができない人
報酬に糸目をつけないというクライアントは珍しく、なるべく低コストで仕事をするITエンジニアを探したり費用を少なく抑えたいという考え方のクライアントのほうが多いでしょう。案件の獲得だけでなく、打ち合わせやMTG、条件交渉、提案などフリーランスには、クライアントと交渉を持つ機会が多くあります。会社員だと交渉はエンジニアの代わりに営業やマネージャーが行うことが多いですが、フリーランスではそうもいきません。妥協できる単価で契約にこぎつけるには、交渉上手になる必要がでてきます。
未経験者からフリーランスエンジニアは厳しい?
未経験からすぐにフリーランスのITエンジニアになるのは、厳しいといわれます。なぜ厳しいのか、どのくらいの経験があればフリーランスとして案件を獲得しやすいのか、解説します。
未経験だとスキルと経験不足で仕事がない
クライアントがフリーランスのエンジニアに仕事を発注するのは、実績やスキルが確かだと信頼できるからです。実務に就いたことがない未経験者に、案件を任せようという企業はまず存在しないといってよいでしょう。仕事を獲得できなければ、いくらフリーランスを名乗ったところで生活をしていくことは難しいのです。
エージェント経由の紹介では最低1年以上の実務経験が求められる
フリーランス向けのエージェント経由で仕事を探す場合も上記と同様です。ITエンジニアの仕事を獲得するには、最低でも1年程度の実務経験が必要とされます。案件にも様々な種類があり、実務経験が短くともこなせるロースキル系のITフリーランス案件も探せば見つかりますが、単価の面でおすすめはできません。
転職・就職して企業で経験積むべき
未経験からフリーランスを目指す際は、一度就職すべきです。企業での経験は、どのような案件に取り組んできたのかクライアントに理解されやすいです。企業で働くと、ITの知識やスキルをつけるだけでなく社会人としての経験も積むことになります。そうした幅広い経験がクライアントからの信頼につながり、自身の力にもなるのです。
ITエンジニアに転職する方法
これまでITエンジニアとして企業で働いてきた人もいれば、他の職種から転職したいという人もいるでしょう。ここからは、ITエンジニアに転職する方法について紹介します。
情報系の大学や専門学校への進学
情報系の大学や専門学校に進学してIT技術について一から学ぶ方法は、時間的にも経済的にも余裕がある方におすすめです。時間をかけてじっくりと専門技術を学習できますし、学歴としてアピールすることもできます。
IT専門スクールに通う
IT専門スクールにも様々なコースがありますが、特化した技術のみ学びたい、短期間でモノにしたいというときにおすすめなのがIT専門スクールです。大学や専門学校に比べると短めの期間で修了できるコースが多く、費用も抑えることができます。
独学で学ぶ
市販の教本や教材、通信講座などで独学する手もあります。通信講座には講義動画が充実しているものもあり、独学ながらスクールに通っているような感覚で学習を進めることが可能です。通学する時間がない、マイペースで学習したいという方も検討してみてはいかがでしょうか。
フリーランスのITエンジニアで年収を上げる方法
会社員に比べると平均年収が高めの人も多いフリーランスのITエンジニアですが、戦略なくして年収を上げるのは難しいでしょう。年収アップのためにどのような方法があるか、紹介します。
スキルアップで強みを増やす
技術系のフリーランスであるITエンジニアにとってスキルは食い扶持であるともいえます。また、フリーランス需要の高いIT分野でのスキルアップは、技術者として確実な強みとなります。特定の分野のスキルが高いことも有利ですが、金融やマーケティング、ゲーム、IoTなど関連する分野についてスキルがあるのも有利です。便利に活用してもらえますとアピールできるスキルを備えておけば、どのクライアントにも強気で交渉できるでしょう。
案件の選び方を工夫する
フリーランス案件の選び方も、戦略的視点を取り入れることをおすすめします。得意なことしか引き受けないというスタンスでは、あまり進歩がありません。単価が高めの案件に挑戦したり、より大規模なプロジェクトに応募してみたりすることで、チャンスと共に実力を磨きながら年収アップできる可能性が出てきます。
新規顧客を開拓する
個人事業主で活動する以上は、新規顧客の開拓が常に欠かせないことと思っておいたほうがよいでしょう。継続的な案件をつかんでも、いつか更新が途切れるかもしれません。新規顧客を開拓する中から現状より単価の高い案件が見つかるかもしれず、新たな実績を作るチャンスにもなります。
エージェントを利用する
ITエンジニアのエージェントサービスの中には、フリーランスエンジニアに向いた案件を紹介してくれるところもあります。自力で案件探しをしなくてもエージェントが案件を探してきてくれるのは便利です。独力では契約が難しい、大規模な案件を紹介してもらえる可能性もあります。
ITエンジニア案件の今後の動向、将来性
最後に、ITエンジニアは将来的に期待できる職種なのか、フリーランス案件でどのような懸念点があるのかなどについて触れておきます。
フリーランスの求人案件は今後も増えていく
ITエンジニアの人材不足が懸念される中、フリーランスの求人案件は目立ってきています。今後も増加傾向にあると期待できますが、1日も早く行動に移したほうが有利なのは確かです。
海外エンジニアの増加など競争激化の兆候も
ITエンジニアの技術は、言語の垣根を超えやすいのが特徴です。日本市場に可能性を感じている海外のエンジニアにとって、日本のIT人材不足は願ってもないターゲットとなるでしょう。日本語も扱えてITスキルも高い、あるいは英語でやり取りができる海外のITエンジニアが続々と流入すれば日本人の出る幕がなくなるかもしれません。
トレンドを読み、求められる人材になる
IT技術の進化は目まぐるしいほどスピーディーで、エンジニアには最新のトレンドを読みとれる能力が求められます。今何が求められているのかを敏感に察知し、必要なスキルを身につけて勝負できる人材を目指せば、フリーランスのITエンジニアとしての成功は夢ではありません。
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