AIエンジニアになるには?必要なスキル、需要と将来性
NTT、ソニー、NECなど大手企業が先端IT人材を優遇する動きがあり、新卒で年収1000万円を目指せるとしてAI人材の獲得競争が話題となっています。そのような背景もあり、今後チャンスが大きいAI分野を目指すエンジニアも増加しています。
しかしながら、未経験者がAI人材になるにはどのような知識やスキルが必要となるのでしょうか。また、AIエンジニアとして就職・転職するためにどのようなステップを踏めばよいかわからないという方も多いのではないでしょうか。
今回の記事では、AIエンジニアに必要なスキル、未経験からのキャリアパス、需要と将来性について解説します。
目次
AIエンジニアとは
AIエンジニアは人工知能に関連するソフトウェア開発の技術者です。AIはArtificial Intelligenceの頭文字をとった言葉で人工知能と訳します。つまり、AIとはコンピュータで人間の知性を再現する試みや技術を指します。そしてAI技術に分類される手法として「機械学習」と「ディープラーニング」があります。AIエンジニアは、過去のデータを機械学習で分析し未知のデータを予測したり、ディープラーニングで精度の高い分類モデルの構築などに取り組むため、システム開発に必要なITスキルのほか、統計、数学、アルゴリズムの知識が求められます。
AIエンジニアとされる職種として「データサイエンティスト」と「機械学習エンジニア」があります。この2つはIT業界でも比較的あたらしい職業のため仕事上の役割が不明確なところもありますが、データの解析やAIの開発に関わる点はどちらも共通しています。データサイエンティストは、特徴量を抽出しAIにあたえるデータを整理したり、統計モデリングなどのデータ解析が主な業務です。
機械学習エンジニアは、AI関連のアプリケーションや学習済みモデルの本番環境への適用に必要なシステムなどの開発を行います。そのため、機械学習エンジニアにはシステム実装に必要な技術力が、データサイエンティストには数理統計を用いた分析力がより必要とされると言えるでしょう。
AIエンジニアに必要なスキル
未経験からAIエンジニアになるには、どのようなスキルや知識を身につける必要があるのでしょうか。AIエンジニアとして働く際に必要な大部分のスキルは実務を通して身につける必要がありますが「ITスキル」「機械学習」の2つが必須となります。
ここからは、企業に就職してAIエンジニアとして働くために最低限必要なスキルについて解説します。
ITスキル
AIエンジニアとして働くためには、AI開発に関するITエンジニアとしてのスキルが必要です。
プログラミング
AIに関するプログラムを書いて実装できる程度のコーディングスキルが必要です。ITエンジニアの経験があれば、プログラミングが問題になることは少ないでしょう。未経験からAIエンジニアを目指す場合は、機械学習などのAIに利用されるプログラミング言語「Python」を習得しましょう。Pyhtonは構文がすっきりしており初心者でも学びやすい言語です。ライブラリなどコードを書く量を省略できる機能も充実しています。
機械学習ライブラリ
ライブラリやフレームワーク、APIとして公開されている学習済みモデルを開発に利用する場合は多いです。そのため、機械学習ライブラリを扱うスキルを身につけておくとよいです。有名なライブラリとして「scikit-learn」「NumPy」「Pandas」などがあります。これらを活用してデータ分析をおこなう際には、ITスキルだけではなく、統計や数学の知識が必要となります。
また、ディープラーニングに対応した「TensorFlow」「Chainer」「Pytorch」などのフレームワークを使って画像認識や音声解析、自然言語処理などを行えるとよいでしょう。実務で精度をあげていくには、コードが書けるだけでなくアルゴリズムやパラメータ調整、特徴量抽出など解析のスキルも必要です。
データエンジニアリング
AIエンジニアは、大量のデータを扱う職業です。AIに読み込ませるデータを準備する前処理といった作業やデータ収集のためのWebスクレイピングやバッチ処理なども行います。そのため、データベースに関する知識やSQLでのデータ操作、データモデリングなどデータエンジニアリングに関するスキルが必要です。また、機械学習の環境構築やAWS、GCPなどクラウドサービスやインフラの知識も身につけておきましょう。
機械学習
AIエンジニアになるためには、実務でAIを開発できる必要があります。そのため、機械学習に関する知識は必須です。機械学習のアルゴリズムやモデルをあらわす数式を理解するとともに、データ解析や統計などの理論を把握しましょう。
機械学習の基礎知識
まず機械学習とはその名の通り機械に学習させることを言います。また、機械学習にも様々な種類があり、大きく分けると3種類あります。
1つ目が正解となるデータを読み込み、たくさんのデータの中から正解となるデータと一致するデータを探す方法です。2つ目は1つ目と逆でデータを読み込まずに数値などデータを入力し、それをもとに答えを導き出す方法であり、機械学習の基本はこの2つと言えるでしょう。
そして3つ目が強化学習と言って設定したアルゴリズムをもとにデータを評価する方法であり、機械学習ではこの3つの方法を用いて課題を解決します。また、機械学習は画像を判別したり蓄積させたデータをもとに将来を予測したりする際に利用されています。
それに対してディープラーニングは機械学習により応用性を持たせたものであり、強化学習に近い面を持っています。近年人間の仕事を機械ができるようにする取り組みが進んでいますが、それが可能となっているのはディープラーニング技術が進んだためです。
ディープラーニングにおいては多数のデータの中から機械が自分で規則性などデータを区別するための基準を見つけ、それをもとに作業を行います。そのため、本来機械は抽象的な指示に対応できませんでしたが、ディープラーニングではそれが可能となっています。
AIエンジニアになるには
AIエンジニアに必須の試験や資格はないため、企業からAIエンジニアとして採用されればAIエンジニアになることができます。新卒採用でAIエンジニアとして採用されるキャリアパスのほか、同じ会社での部署異動、転職して他の職種からAIエンジニアへとジョブチェンジすることも可能です。
ただし、AIエンジニアの中途採用では、募集要件として実務経験が必要な求人が多く、未経験者が応募できる求人はそう多くありません。また、求められる知識として統計や確率、数学などがあるため大学や高等教育機関などで学んだ経験があるほうが転職に有利といえるでしょう。新卒採用の場合でも大学・大学院での研究内容は重要です。
AIについて独学する際は、書籍やCoursera、Udemyなどのオンラインコースを利用することが一般的ですが、AIエンジニアへの就職・転職には専門的な教育をうけることも有効です。代表的な教育機関を以下で紹介します。
社会人向けのAI講座やスクールに通う
社会人になってAIエンジニアに転職したいと考える人も少なくはありません。そのような場合、大学・大学院へ進学するのは時間的に難しいでしょう。そこで社会人の場合は、民間企業の提供するオンラインスクールや対面講座を受講してAIを学ぶ人が多いです。
統計や機械学習などAIエンジニアを目指すにあたって必要な知識を教えてくれる教育事業者は増えてきています。大学や専門学校に比べると費用面の負担は軽いです。転職サポートが付いていることも多く、AIエンジニアへの転職を考えており、これからAIに関して学びたいと思っているのであれば良い手段と言えます。
AIスクール
- AIジョブカレ ディープラーニング講座
- 現場で潰しが効くディープラーニング講座
- AI_STANDARD AIエンジニア育成講座
35歳以下のエンジニア経験者であれば、機械学習・ディープラーニング講座が全額無料で受講できる「AIジョブカレPRO」もおすすめです。
しかし、未経験からAIエンジニアを目指す場合に、いきなり機械学習やディープラーニングの講座を受けるとレベルが高すぎてついていけない可能性があります。実際にAIスクールでは学習に必要な基本的なプログラミング能力などを入学時にチェックすることも多いです。
また、求人を紹介してもらえるAI教育講座といっても、エンジニアとしての実務を経験しているかどうかでは応募できる求人にかなりの差があります。そのため、未経験からAIエンジニアを目指したいならまずITエンジニアとして就職し、ある程度スキルを身につけてからAIエンジニアに必要なスキルを学び、それから転職を狙うのが良いでしょう。
オンライン講座もおすすめ
AIエンジニアを目指すにあたり、もし機械学習を学ぶのであれば、弊社の「AIジョブキャンプ」がおすすめです。AIジョブキャンプは社会人向けの「AI教育講座」と業務委託の案件紹介をする「エージェント」サービスがセットになった無料の研修プログラムです。現役のデータサイエンティストによる機械学習講座がオンラインにて無料受講できます。登録料や受講料などは無料ですので、ぜひご利用ください。
大学・大学院で情報科学を専攻する
新卒でAIエンジニアを目指す場合は、情報科学系の大学へ進学しましょう。職種別採用でAI専門職として就職する際に実績が重要です。そのため、研究職や最大手企業を志望する際は大学院に進むことも視野に入れましょう。修士課程2年、博士課程3年を履修した後にAIエンジニアとしての就職を目指します。
AIや情報科学を履修できる大学院は少ないため難易度は高いですが、進学することで基礎技術や最新の理論を研究することができます。ハイレベルな経歴を持つ教授や講師も多く、産学連携に力を入れる大学院ではAI業界における最新の情報も手に入れやすい環境と言えるでしょう。
研究職を目指す場合は、大学院を卒業して職員として研究室に所属します。この場合は、しっかり大学に関する情報収集を行ったうえで進学する大学を決めるべきと言えるでしょう。ちなみに、AI関連の大学研究室は情報系・工学系に特化した大学に多い傾向があります。
人工知能の研究室がある大学
- 東京大学
- 東京工業大学
- 九州大学
- 京都大学
- 国立情報学研究所
- 大阪大学
- 北海道大学
- 名古屋大学
- 奈良先端科学技術大学院大学
- 北陸先端科学技術大学院大学
大学で学んだ範囲だけではAIの研究者を目指すにあたって必要な知識をカバーするのは難しいです。しかし、AIに関する大学研究室は少なく、学習量や卒業するまでの費用はかなりの額が必要となってしまいます。開発を主に行うAIエンジニアを目指す場合は、大学卒業後に就職する道や専門学校を選んでもよいでしょう。
専門学校を卒業する
高校や大学を卒業後、専門学校に入学してAIエンジニアを目指すことも可能です。AI分野は企業からの需要も高く、AI技術を学ぶ学科やコースを新たに開設する専門学校も増加しています。
AIコースがある専門学校
- 日本電子専門学校
- 日本工学院
- 情報科学専門学校
- 駿台電子情報&ビジネス専門学校
専門学校では、機械学習やディープラーニングを中心とした人工知能(AI)開発を中心にカリキュラムが組まれ、Pythonでのプログラミングやデータ処理、チャットボット、IoTなど実務に必要な知識・技術について学習します。そのため、統計や情報処理を学問として追及するよりも、エンジニア・プログラマーとして開発に携わりたい人の進学先としておすすめです。
専門学校により、卒業までの期間が2年制の場合と3年制の場合があります。学費やイベント、就職の実績も学校により異なるため、検討する際はそれらを比較する必要があるでしょう。
AIエンジニアの年収が高い理由
AIエンジニアは一般のエンジニアと比べても年収が高めと言われています。ITエンジニア全体の平均年収が550万円と言われているのに対しAIエンジニアの平均年収は600万円程度であり、企業によっては年収が1,000万円を超えることもあるのでかなり給与面での待遇が良い仕事と言えるでしょう。
ただ、AIエンジニアの年収が高いのはどうしてなのでしょうか。そこでAIエンジニアの年収が高い理由について解説します。
AI人材が不足しているから
AIに関する技術を用いた開発には先ほど解説した通り多くの企業が力を入れています。そのため、AIエンジニアの需要はかなり高いです。一方で、ディープラーニングなどの技術が注目を浴びるようになったのはここ5~10年の間のことであり、経験豊富なAIエンジニアの数が不足しているのが現状です。また、専門の教育機関も欧米に比べ少ない状況のため、新卒で採用できる人数にも限りがあります。したがって、少ない人材を企業が取り合う形となり、有能なAIエンジニアを募集するために好待遇の求人を出しています。
専門性が高く希少価値が高いから
AIエンジニアはエンジニアよりも科学者に近い仕事と言われています。データを扱い、高校数学における数3~大学程度の知識を用いた難しい数式を立てたうえでプログラムを組む必要があるため、かなり難易度が高いでしょう。しかもデータベース・データ解析・数学などに広いだけでなく深い知識が求められるので、AIエンジニアを目指すにあたってはかなり専門性が高い学問を複数学ばなければいけません。このようにAIエンジニアの仕事は専門性が高く、学習コストもかかります。それによって年収も高くなると考えられるでしょう。
世界規模で評価されるから
AI技術の需要は国内だけでなく海外においても高いです。中国や米国などを中心にAI開発が進んでおり、そしてハイレベルな知識が求められることから海外では日本以上に好待遇の求人を出している企業も少なくありません。実際に海外においてはAIエンジニアの年収が数千万円になることも多いです。このように世界基準で観てもAIエンジニアの仕事は評価されており、年収が高い仕事であることからそれに伴って国内においても年収の高い仕事であると言えるでしょう。
AIエンジニアの需要と将来性
AI技術を利用する企業は増えており、効率よくビジネス展開をするためにもAIに関する専門の技術者は欠かせないものと言えるでしょう。それに、少子高齢化が進んで様々な業界で人手不足が問題視されており、人工知能を用いた業務の自動化に力を入れている企業も少なくありません。そこでAIエンジニアの技術力に頼ろうとする企業は多いですが、AIエンジニアの数は需要に追い付いていないのが現状です。そして、今後AIは更に需要が高くなることが見込まれており、AIエンジニアの需要もそれに伴って高くなることが期待できるでしょう。
AIエンジニアの仕事はデータ解析を行い、次に繋げることと言えます。そのため、ただ自分が開発したものを見て満足するだけではいけません。AIはIT業界の中でも特に技術の革新が著しい分野であり、積極的に最新技術を学んで自分が持っている知識・技術のアップデートを行う必要があります。そのため、AIエンジニアは最新技術に対して情報収集を行うスキルも求められます。最新動向や解析手法に詳しければ第一線で活躍できますし、技術者としてではなくマネジメントポジションへと進むキャリアパスも考えられます。
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