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MATLABの将来性は?高需要の理由や活用されている場面を解説

MATLABの将来性は?高需要の理由や活用されている場面を解説

MATLABは数値計算に利用されることが多いプログラミング言語で、世界中で使われており将来性や需要も高いとされています。

本記事ではそんなMATLABの将来性や同じく数値計算に利用されるPythonとの違いについて詳しく解説していきます。

MATLABの将来性

MATLABは、科学技術計算やデータ解析など幅広い分野で活用されている数値解析ソフトウェアであり、その中で使うプログラミング言語の名称です。機能や用途の多様性から、将来にわたっても重要な役割を果たすことが期待されています。

本章では、MATLABの将来性について3つの視点から掘り下げていきます。

  • MATLABは開発が続いているため高需要
  • MATLABは世界中で使われている
  • 日本における使用率はMATLABよりもPythonの方が高い

MATLABは開発が続いているため高需要

MATLABは、最新技術や市場ニーズに合わせてアップデートされており、新たなアルゴリズムや高度な機能が追加されています。そのため、科学技術分野や産業界においての需要が高いです。

また、MATLABはデータ解析やシミュレーション・機械学習といった先端技術を取り入れることで、多様な分野での応用も可能にしています。こうした継続的な開発が行われていることから、新しい課題やプロジェクトにも柔軟に対応できるため、MATLABを導入する企業や研究機関は増加傾向にあります。

MATLABは世界中で使われている

MATLABは、その使いやすさや性能から、世界中の研究者やエンジニアに広く利用されているツールです。多言語対応のドキュメントやチュートリアルなど、異なる地域や文化圏のユーザーでも使いやすい環境が整えられているのも、広く利用されている理由の1つです。

国際的なプロジェクトや学術論文でもMATLABを用いた成果が多数報告されており、その存在感はますます高まっています。このような世界的な普及は、MATLABの高い信頼性の証といえるでしょう。

日本における使用率はMATLABよりもPythonの方が高い

日本のプログラミング言語使用率においては、PythonがMATLABを上回っています。Pythonは無料で使えるオープンソースであることや、多くのライブラリが利用可能であるため幅広い分野で支持を集めているからです。

一方、MATLABは特に専門的な分野での利用が中心となっており、教育機関や研究機関・特定の産業で高い信頼を得ています。日本国内でもMATLABを利用したシミュレーションや解析が必要とされるプロジェクトは一定数存在しているため、その需要は安定しています。

MATLABとは?概要や歴史

多くの分野で活用されるMATLABは、数値計算ツールとして独自の進化を遂げてきました。その背景には、時代ごとの技術やニーズに対応しながら進化してきた長い歴史があります。

ここでは、MATLABの概要にくわえ、開発の背景やどのような歴史をたどってきたのかを詳しく解説します。

MATLABの基本概要

MATLABは、アメリカに本社を置くMathWorks社が開発している高水準の数値解析ソフトウェアであり、その中で使うプログラミング言語の名称を指します。データ解析・可視化・モデリング・プログラミングなど、多様な機能を備えており、複雑な数値計算を効率的に行うことが可能です。

また、MATLABは定期的にアップデートされており、最新バージョンであるR2024bでは、パフォーマンスの向上や新機能の追加が行われています。ユーザーインターフェースも直感的で使いやすく、初心者から専門家まで幅広いユーザー層に対応している数値計算ツールです。

MATLABの開発背景と歴史

MATLABは、学生が数値解析ソフトウェアであるLINPACKやEISPACKを利用できるようにするために、1970年代後半にニューメキシコ大学で開発されました。当初は学術的なツールとして無料提供されていましたが、1984年にC言語での書き直しが行われ、開発を続けるためにMathWorks社が設立されます。

その後、MathWorks社設立を機に、商用パッケージとしての普及が始まり、日本における商用展開の開始は1988年です。商用化後も行列計算やデータ可視化・アルゴリズム開発など、多彩な機能を備えた数値解析ソフトウェアとして進化し、科学技術計算やデータ解析をはじめとした幅広い分野で活用されるようになりました。

MATLABが活躍する場面

MATLABは、柔軟な機能と直感的な操作性を備えているため、専門家から初心者まで多くの人々に支持されています。そのため、幅広い技術分野で活用されており、なかでも複雑なデータ処理や高度なアルゴリズム開発では欠かせない存在です。

ここからは、MATLABが活躍する具体的な場面を4つ取り上げ、その多様な用途を紹介していきます。

  • 統計・データ解析
  • 機械学習・ディープラーニング
  • アルゴリズム開発
  • C言語やC++コードの生成

統計・データ解析

統計分析やデータ解析の分野で、MATLABは有用なツールとして知られています。その理由に、膨大なデータを簡単に取り扱えること・多くの統計関数が標準で搭載されていることなどがあげられます。

また、MATLABは時系列解析や回帰分析・クラスタリングといった高度な手法にも対応しており、複雑な問題にも柔軟に対応可能です。これらの機能は、科学研究やビジネスインテリジェンスの分野で特に活用されており、MATLABは迅速かつ正確な意思決定をサポートしています。

機械学習・ディープラーニング

MATLABは、機械学習やディープラーニングの分野でも活躍しています。機械学習モデルのトレーニングや評価・チューニングを効率的に行える機能が充実しており、データの前処理から結果の可視化まで一貫した作業が可能だからです。

ディープラーニング用の追加ソフトウェアであるツールボックスも提供されているため、ニューラルネットワークの設計やトレーニングにも対応可能です。TensorFlowやPyTorchといった他のフレームワークとも連携できる柔軟性から、学術研究や産業界でのAIモデル構築において欠かせない存在となっています。

アルゴリズム開発

MATLABには、デバッグ機能や可視化ツールが備わっており、アルゴリズムの挙動を視覚的に確認しながら開発を進めることができます。シンプルなインターフェースと豊富なライブラリは、複雑な数値計算や最適化の課題に対する迅速な対応を可能にしています。

なかでも、制御システムや信号処理などの分野では、MATLABの直感的な操作性は評価が高いです。設計したアルゴリズムはMATLAB内でシミュレーションを行い、性能をテストした上で、他のプログラムやハードウェアに移植することもできるため、開発効率と精度の向上に貢献しています。

C言語やC++コードの生成

設計したアルゴリズムやモデルを基に、MATLABでは高品質なC言語やC++コードを自動生成できます。そのため、ユーザーは手動でコードを書く手間が省け、時間を大幅に短縮可能です。

自動生成されたコードは、組み込みシステムやリアルタイムアプリケーションにも適しており、産業分野での実用性が高いという特徴があります。MATLABは、アルゴリズム開発から実装までをシームレスにサポートしており、ソフトウェア開発の効率化に大きく役立っています。

MATLABが活用されている業界

MATLABが活用されている業界

高い計算能力やデータ解析機能を備えるMATLABは、多岐にわたる分野で活用されています。本章では、5つの業界に注目し、具体的な活用例について説明します。

MATLABが各業界における課題解決や効率化に、どのように貢献しているのか見ていきましょう。

  • 自動車業界
  • 航空宇宙業界
  • 医療業界
  • 金融業界
  • 研究機関や教育機関

自動車業界

自動車業界では、特に車両制御システムの設計やシミュレーションにおいて役立っています。例えば、エンジン制御やブレーキシステムの開発では、MATLABとSimulinkを用いてモデルベースデザインが採用され、設計の効率化と精度向上が図られているのです。

また、自動運転技術の開発においても、センサーのデータ解析やアルゴリズム開発・シミュレーション環境の構築など、さまざまな用途で利用されています。2024年には、トヨタ自動車がMATLABとSimulinkの包括契約を結んだことが発表されました。

航空宇宙業界

航空宇宙業界を見てみると、飛行制御システムや機体の設計・シミュレーションにMATLABが活用されています。自動操縦装置の制御アルゴリズム設計や人工衛星の軌道計算など、高精度な計算が要求される場面で力を発揮しています。

さらに、シミュレーションだけでなく自動コード生成機能を利用して、開発したアルゴリズムを実際のハードウェアに実装することも可能です。このように、MATLABは航空宇宙業界において最先端技術の基盤を支え、業界全体の生産性を押し上げています。

医療業界

医療業界においては、医療用画像の解析や診断支援システムの開発に、MATLABの画像処理機能が利用されています。X線やMRI・CTスキャンなどの画像データをディープラーニング技術と組み合わせることで、疾患の早期発見や診断精度の向上が期待されています。

また、患者の電子カルテや生理学的信号のデータ解析にも、MATLABは有効です。機械学習アルゴリズムは、患者ごとに最適化された治療計画の立案に役立てることができ、個々の患者にとってより効果的な治療が可能になります。

金融業界

MATLABは、金融業界でも広く取り入れられており、リスク管理やポートフォリオの最適化・アルゴリズム取引などの分野で、数値解析能力が役立っています。くわえて、機械学習やディープラーニングを活用することで、不正取引の検出やマーケット予測の精度向上も実現可能です。

具体的な例をあげてみると、イタリアの公益事業会社A2AではMATLABを用いてリスク要素の解析やモンモンテカルロシミュレーションを行い、リスクの定量化や取引活動を監視しています。MATLABの柔軟性と高度な解析能力は、金融機関が直面する複雑な課題の解決をサポートし、業務の効率化と収益向上に大きく貢献しています。

研究機関や教育機関

MATLABの多様な機能は、研究機関や教育機関のニーズにも応えており、研究の効率化や教育の質向上への貢献も大きいです。MATLAB Parallel Serverを導入した研究機関では、その並列計算機能によりアルゴリズムの解析時間を数日から数時間へ短縮し、研究の効率化と質の向上を実現しています。

一方、教育機関では、工学や科学の授業でMATLABを取り入れ、学生のデータ解析やプログラミングの実践的なスキル習得に活用されています。このように、MATLABは研究と教育の現場でその力を発揮し、研究の発展と次世代の人材育成を支えているのです。

MATLABを導入するメリット

MATLABを導入することで得られる大きなメリットは、豊富な組み込み関数や専用ツールボックスを利用して複雑な計算や解析を正確かつ高速に行える点です。結果を視覚的に確認できるグラフ作成機能も備えていることから、迅速で効果的な意思決定に役立てられます。

また、直感的な操作が可能なユーザーインターフェースであるため、プログラミング初心者でも簡単に使えるところも魅力の1つです。MATLABの汎用性と高性能な解析機能は、業務効率だけでなく成果の質向上についても期待できるでしょう。

まとめ

MATLABは、科学技術計算やデータ解析の分野で長い歴史を持ちながらも、市場ニーズに合わせたアップデートで進化を続けています。その柔軟性と機能性は高い評価を受けており、なかでも、自動車や航空宇宙・医療といった分野では、複雑なシミュレーションや高度なアルゴリズム設計のために欠かせない存在です。

さらに、機械学習やディープラーニングといった先端技術への対応は、MATLABの可能性を大きく広げています。近年のデータ分析に基づく意思決定やAI活用において、MATLABは高度な解析や効率的なアルゴリズム開発を支えるツールとして、引き続き多くの分野で利用されることでしょう。

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