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データエンジニアリングとは?求められるスキルやデータサイエンスとの違いを解説

データエンジニアリングとは?求められるスキルやデータサイエンスとの違いを解説

デジタル化が進む近年、ビックデータを活用してビジネスチャンスの獲得を目指す企業が増加しています。そのような時代背景によりIT業界の中でも特に需要が高まっている仕事の一つが「データエンジニアリング」です。 しかし具体的にデータエンジニアリングの内容やデータエンジニアの業務内容など詳しくご存じの方は少ないのではないでしょうか。

そこで本記事では、データエンジニアリングの定義やデータエンジニアの必要なスキルや将来性などを分かりやすく解説します。データエンジニアリングに興味がある方必見の内容となっているので、是非最後までお読みください。

データエンジニアリングとは?

データエンジニアリングの定義、役割・重要性について以下に説明しましょう。

データエンジニアリングの定義

データエンジニアリングとは、ビッグデータの分析に必要なデータを収集・解釈・検証することを指します。

ビックデータを扱うためには、データの分析基盤が欠かせません。そこでデータエンジニアリングでは、ビックデータのための分析基盤を構築・運用し、データの整理・管理を行います。

データエンジニアリングの役割と重要性

データエンジニアリングは、ビッグデータの普及により現在のビジネスにおいて重要な役割を担っています。その背景は、データドリブン経営を行う企業の増加です。

データドリブン経営とは、収集・蓄積されたデータ分析の結果に基づいて戦略や経営方針を決める経営方法です。従来の経験や勘に頼る意思決定よりも、迅速な意思決定が可能となるため注目されています。

データドリブン経営を実施するためにはデータを効率的で正確に分析していく必要があり、そのためにはデータエンジニアが必要不可欠な存在になりました。

データエンジニアリングの業務内容

データエンジニアリングの業務内容を、3点ご紹介します。

データ分析基盤の構築・運用

データエンジニアの一番の役割は、ビッグデータを保管・管理するためのシステムである「基盤」を構築することです。そして、分析しやすいようにデータを保管・管理するための基盤を構築した後は、バグ処理・運用改善・高速処理の対応や分析環境の改善なども行います。

データの収集・加工・整理

データ量が多ければ多いほど、そのままの状態ではなく整理・加工することが必要です。 整理されていない状態のデータは分析に時間がかかってしまうため、データエンジニアが整理・加工を行います。

例えば、重複したデータがないかを確認し、重複していれば削除したり、データに表記ゆれ(「サーバー」や「サーバ」など)があれば表記を統一したりすることも、業務の一つです。

AI・機械学習の運用

AIに学習させるためのデータ(教師データ)の作成や教師データの改善など、AIや機械学習の運用もデータエンジニアの業務に含まれます。 AIの性能向上には高品質な教師データが必要で、データエンジニアが作成することが一般的です。

データサイエンス関連の職種との違い

データを活用する職種には、データサイエンティスト・データアナリスト・データベースエンジニア・BIエンジニアなどがあります。役割や専門領域が異なるこれらの職種とデータエンジニアの違いをご存じでしょうか。

以下にそれぞれの仕事内容を説明していきます。

データサイエンティスト・データアナリスト

データアナリストとデータサイエンティストは、担当する仕事内容が異なります。

・データアナリストは、データ分析が主な業務です。既存データセットの解析や分析結果をビジネスに活かすためのレポート作成などを行います。

・データサイエンティストは、機械学習におけるモデル作成やビッグデータの収集、予測モデルの作成などを行います。 ただし、データアナリストとデータサイエンティストとも、ビックデータの分析結果をビジネスに役立てるという目的は一緒です。そのため、明確な線引きはなく、データサイエンティストがデータアナリストの業務を行うこともあります。

データベースエンジニア

データベースエンジニアは、あらゆるデータを保管・管理するためのデータベースのシステムを構築する職種です。データを格納したりデータを抽出したりできるようにデータベースの設計・開発・保守・運用までを行います。

他の職種との違いは、例えば「データを分析すること」がメイン業務のデータサイエンティストと比べると、データデータベースエンジニアは、「データの保管と管理」がメイン業務となるところです。

BIエンジニア

BIエンジニアは、BIツール(ビジネスインテリジェンスツール)の設計や開発を行うことが主な仕事です。BIエンジニアが提供するBIツールによって、ビッグデータの収集・蓄積・整理、データ集計、データの可視化が可能になります。例えば、BIツールで経営や売り上げを分析結果は経営戦略の立案に活用されています。

他の職種との違いは、例えば「データ設計」を行うデータサイエンティストと比べると、BI エンジニアは「システム設計」を行うため、設計の対象が異なるところです。

データエンジニアリングに必要なスキルや知識

データエンジニアリングには、プログラミングやビジネスに関する知識などさまざまなスキルが求められます。ここでは、データエンジニアリングに必要なスキルや能力を詳しくご紹介しましょう。

プログラミング言語・SQL・データベースの知識

データエンジニアリングは、プログラミング言語やデータベース言語のスキルが求められます。代表的な言語は、SQL(シークェル)やPythonです。それぞれの特徴を、以下で説明します。

・SQLとは、最も普及しているデータベース言語のこと。データベース管理システム上でデータの検索や書き換えなどをするために使われます。ISOで標準化されているため、1つのデータベースに合わせて習得すれば、ほとんどのリレーショナルデータベース(表形式の複数データを関連づけて使えるようにしたデータベースのこと)で使用可能です。

・Pythonとは、データエンジニアが使用するプログラミング言語で、特にディープラーニングで使われます。AIなどの分野で注目を集めており、習得すると活かせる場面が多い言語です。学びやすい言語で学習コストも低いため、初心者の方が最初に学ぶ言語によく選ばれます。 その他には、JavaやScalaやLinuxなどの知識も、積極的に学習しておくと業務で活かすことができるでしょう。

ETLの知識・スキル

ETLの知識・スキルもデータエンジニアリングには必要です。

ETLとは、データ統合時に発生する各プロセスの頭文字をとったもの。データベースなどに蓄積しているデータから必要なものを抽出(Extract)し、目的に応じて変換(Transform)し、データを必要とするシステムに格納(Load)することを意味します。

ETLの知識は、データ分析において必要不可欠な知識であり、重要な役割を果たします。正確で信頼性の高いデータを分析できるように、データエンジニアはETLの知識が必要です。

データガバナンスやデータ品質の知識

データガバナンスとは、組織内でのデータの取り扱いについて従うべきルールを決める取り組みのことを指します。具体的にいうと、「どのような状況で」「誰が」「どのデータを」「どのような方法で」「分析するのか」ということをルールにすることです。

データガバナンスの知識がないままデータを収集・蓄積していると、「あるはずのデータがどこにあるか分からない」「収集したデータが間違いだらけでどれを信用したらよいのか分からない」という問題が生じかねません。そのため、データガバナンスの知識をもって、データの取り扱いを統制していくことが必要となります。

また、データ品質管理の知識もデータの信頼性を高めるために必要です。信頼性の低いデータを利用すると、間違った意思決定により経営に損害を与えかねません。そのため、「データに矛盾がないか」、「データは完全であるのか」、「データに信憑性はあるのか」などの評価軸でデータの品質を管理していくことが大切です。

データ基盤の知識

データ基盤の構築は、データエンジニアの業務の一つです。そのためには、データ基盤の知識が必要です。ここでいうデータ基盤とは、大量のデータを効率的に収集・保管・アクセス可能にするためのデータベースやデータウェアハウスの設計などが含まれます。基盤の構築後のトラブル対応も業務に含まれるため、データ基盤の知識はデータエンジニアには必要な知識です。

機械学習・AIの理解

AIに学習させるためのモデルデータ(教師データ)を作成するのはデータエンジニアのため、機械学習・AIも理解しておきましょう。AIを運用した後の教師データの改善などもデータエンジニアの業務になります。

企業のビジネスへの理解力

適切なデータ分析基盤を構築するために、企業のビジネスモデルを理解しておくことが大切です。企業のビジネスモデルを理解しておかなければ、その企業にとって適切なデータを収集・加工・整理ができないからです。企業の抱える経営課題に対して、解決策の仮説を設定してからデータ分析することで効率的なデータ分析が可能となります。そのためにも、企業のビジネスモデルを理解しておきましょう。

ダッシュボード・レポートの作成スキル

データエンジニアは、データ分析結果を分かりやすくまとめることも大切な業務です。そのためダッシュボードやレポート作成スキルが必要になります。

・ダッシュボードとは、データや情報を一目で理解できるようにするツールのこと。売り上げや顧客満足度などの重要指標(KPI)を追跡するためにチャートやグラフやマップなどを使用してデータを表示させます。

・レポートとは、特定のデータを詳細に分析するためのツールのこと。例えば、月別の売り上げデータや顧客別の購入履歴を分析する用途で利用されます。特定の条件に基づいてデータを抽出し、集計が可能です。

データを分析しても、データを使用する人が行動を取ることができなくては意味がありません。データを使用する人がデータを簡単に理解し、分析し、それに基づいて行動を取ることができるようにデータエンジニアがダッシュボードやレポートでまとめることは重要な業務といえるでしょう。

データエンジニアリングの将来性や需要

ここまでは、データエンジニアに必要なスキルや他職種との違いを説明してきました。 次に、データエンジニアには将来性やキャリアパスについて、解説します。

データエンジニアリングの将来性

ビックデータやAI、IoTのような技術発展は、企業が扱うデータ量を増加させます。 それに伴い、データを効率的に収集し、分析に適した形に加工するデータエンジニアの役割は、さらに重要になっていくでしょう。

データエンジニアリングの需要の高まり

データエンジニアリングは、今後も需要が高まり続けると考えられています。 その背景には、少子高齢化による人手不足があります。企業はこの課題を解決するためにデジタル化(DX)により業務を自動化することにより、人手不足を補おうとしています。

しかし、経済産業省の調査によると「2030年までにIT人材が最高80万人不足する」と発表しており(※)、デジタル化を推進するIT人材は不足しているのが現状です。

そのためデータエンジニアの需要は今後も高まり続けると考えて良いでしょう。
引用元:経済産業省 IT人材の供給動向の予測

データエンジニアのキャリアパス

データエンジニアでスキルやビジネス理解を深めることで、以下のような様々なキャリアパスが可能です。

それぞれの職種の内容をご紹介しましょう。

・データアーキテクト:データ基盤の全体像を描いて、技術選定や開発プロセスの最適化を検討できる人材です。

・データプラットフォームスペシャリスト:システムが正しく動作するようにフレームワークやクラウド技術について、高度な技術力をもった人材です。

・データコンサルタント、ストラテジスト:ビジネス視点で事業課題の解決に向けたデータ活用を提案・戦略立案を行う人材です。

・AIエンジニア、MLエンジニア:機械外周やAIに特化し、高度なアルゴリズム開発や、MLモデルの本番運用を担う人材です。

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