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プロンプトエンジニアとは?仕事内容や必要なスキル、将来性を詳しく解説

プロンプトエンジニアとは?仕事内容や必要なスキル、将来性を詳しく解説

生成AIの技術は日々著しいスピードで発展しています。2024年の5月にはChatGPT-4oが登場し、より精度の高い対応が可能になりました。生成AIの発展にともない、生成AI関連の職業であるプロンプトエンジニアにも注目が集まっています。

本記事ではプロンプトエンジニアの仕事内容や必要なスキルを詳しく解説します。生成AIに関する仕事に興味のある方はぜひ参考にしてください。

プロンプトエンジニアとは

プロンプトエンジニアとはAIが精度の高い回答を出力できるよう、適切な指示を与えるエンジニアです。仕事内容の特徴から「AIの訓練士」のようだと言われています。本項目では、まずプロプロンプトとは何なのかという解説から始めます。

そもそもプロンプトとは

プロンプトとは、AIが回答を出力するために必要な質問や指示のことです。プロンプトはプログラミング言語ではなく、自然言語(日本語や英語のように人間が使用している言語)で入力します。例えば、ChatGPTを利用する際に「〇〇について教えて」という質問文がプロンプトに該当します。

AIが精度の高い回答を出力するためには、適切なプロンプトを作成しなければいけません。適切なプロンプトは次の4つの要素をふまえることが重要です。

  1. 命令・指示:AIに何をしてほしいかというタスク
  2. 背景・文脈:出力の質を高めるために考慮してほしい背景や外部情報
  3. 入力:AIが処理すべき内容(例:翻訳を指示した場合は翻訳したい文章)
  4. 出力形式:出力してほしい形式

プロンプトエンジニアリングとは

プロンプトエンジニアリングとはAIが精度の高い出力ができるよう、プロンプトを開発・改良する技術や学問のことです。プロンプトエンジニアの仕事内容はプロンプトエンジニアリングに該当し、ChatGPTをはじめとする生成AIツールの普及により注目されるようになりました。

プロンプトエンジニアが活躍できる場面

一般利用される生成AIツールは自然言語を使用したツールがほとんどです。生成AIツールの普及にともない、プロンプトエンジニアが活躍できる場も拡大しています。具体的には、自然言語処理を多用する下記のような場が挙げられます。

  • チャットボットや会話型AIの開発
  • 文章作成ツールの開発
  • 画像や動画などのコンテンツ制作や制作ツールの開発

上記で紹介した場面以外でも、生成AIツールのさらなる普及や技術発展によりプロンプトエンジニアの活躍の場は広がっていくと予想されます。

プロンプトエンジニアの必要性

前述したようにプロンプトエンジニアの活躍の場は広がっていくと予想されます。では、なぜプロンプトエンジニアが必要なのか具体的に解説します。

前項目でも触れましたが、生成AIツールやサービスの拡大によりプロンプトエンジニアの必要性が顕著になっています。生成AIツールやサービスは自然言語を多用するため、開発の場でプロンプトエンジニアが必要です。また、生成AIツールをサービスとして運用する場合は出力精度の向上が求められます。

よって運用の場でもサービス向上のためにプロンプトエンジニアによる生成AIの回答精度の改良が求められます。

AIシステムの著しい進化

AIシステムは発展が著しい分野です。AIシステムが高度化・複雑化してくると求められる出力も高度化・複雑化してきます。そうするとプログラミング技術だけではAIに適切な指示を与えることが難しくなります。

高度化・複雑化したAIシステムに対応するためには、プロンプトエンジニアによる適切なプロンプトの作成が必要になります。高度なAIシステムを最大限に活用するためにもプロンプトエンジニアの存在が不可欠です。

IT人材の不足の解消につながる可能性

経済産業省の調査によると日本のIT人材不足は深刻で、2025年までにIT人材が約43万人不足するというデータが発表されています。特にAIやビッグデータなどの先端技術に関連するITの不足が顕著です。深刻な人材不足はITシステムの急激な需要拡大に人材の供給が追い付いていないことが原因です。

プロンプトエンジニアはAIの精度を向上させることで人的作業を削減し、IT人材の不足解消に役立つ可能性があります。例えば、サーバーやネットワークの管理に精度の高いAIを導入し問題発生時に自動検知するシステムを構築すると、管理者を置かずに管理が可能になり人材不足が解消できます。

企業のDX化拡大

企業のDX化もプロンプトエンジニアの需要拡大につながります。接客、マーケティング、バックオフィスなどあらゆる業種や職種でDX化が進み、AIツールの活用が増加しています。AIツールの効果を最大限に発揮するためにも、AIツール活用の場面でプロンプトエンジニアが必要とされます。

プロンプトエンジニアの主な仕事内容

プロンプトエンジニアの仕事はAIの出力精度を向上させることです。具体的には次の3つが挙げられます。

  • プロンプトの設計・開発
  • AIモデルの分析
  • プロンプトの改善や最適化

一つずつ詳しく解説します。

プロンプトの設計・開発

プロンプトエンジニアの仕事でメインとなるのはプロンプトの設計・開発です。前述した「命令・指示」「背景・文脈」「入力」「出力形式」の4つの要素をふまえて、精度の高い回答が出力できるようなプロンプトの設計を行います。ユーザーが求める精度の出力ができるよう、AIにとって理解しやすいプロンプトを設計するスキルが求められます。

AIモデルの分析

AIツールにはAIモデルというAIの頭脳のようなものが搭載されています。プロンプトエンジニアは、このAIモデルに様々なプロンプトを入力してトレーニングと出力結果の分析を行います。AIモデルの出力結果の傾向やパターンを把握することで、精度の高い出力が可能です。

プロンプトの改善や最適化

AIツールの精度向上のためには、継続的にプロンプトの改善や最適化が必須です。出力結果の検証と評価を行い、改善を繰り返すことで出力の精度がより高くなります。出力結果のデータだけではなく、実際にAIツールを使用しているユーザーからもフィードバックをもらい、フィードバックを反映させて最適化することもあります。

プロンプトエンジニアに必要な知識やスキル

プロンプトエンジニアにはAIの知識や言語能力など幅広い知識やスキルが求められます。必要なスキルを一つずつ詳しく解説します。

AIに関する知識

プロンプトエンジニアはAIに指示を出し精度の高い回答を出力させる仕事です。よって、AIに関する知識は必須であると言えます。AIが学習を行って回答を出力する仕組みを理解しておきましょう。

具体的には、機械学習アルゴリズム、機械学習モデルの評価方法、デイープラーニングの構築方法や評価方法、AIモデルの精度を評価する概念である過学習や汎化性能などについては理解を深めておくことをおすすめします。

自然言語処理(NLP)の知識

AIツールには人間が日常的で使う自然言語を使用します。よって、プロンプトも自然言語で入力するため、プロンプトエンジニアは自然言語処理(NLP)の知識が求められます。

自然言語処理(NLP)とは、コンピュータやAIが文章や音声を認識・理解して回答を出力するために計算言語学、統計学、機械学習モデルを組み合わせたものです。効果的なプロンプトの設計にはコンピュータが言語を理解して回答を生成する自然言語処理の仕組みを知っておく必要があります。

プログラミングのスキル

プロンプトの作成は自然言語で行いますが、AIシステムとの連携やデータ分析でプログラミングのスキルが必要です。プロンプトエンジニアをはじめAI開発の場では、プログラミング言語のPythonが主に使われます。プログラミングのスキルがあれば、プログラムの実装などにも役立つため活躍の幅が広がるでしょう。

ドメイン知識

ドメイン知識とはデータ分析の場で使われる用語で、データ解析をしようとしている業界や事業についての知識やトレンド情報のことです。プロンプトエンジニアにドメイン知識が必要な理由は、プロンプトでAIに指示を与える際に専門的な内容の指示ができるためです。またAIが出力した回答を分析する際にも、プロンプトエンジニアが出力結果の整合性や妥当性を判断でき、より高度な精査が可能です。

例えば医療業界向けのAIツールのプロンプトを開発している場合、プロンプトエンジニアに医療業界の知識があれば医療の専門的なプロンプトの作成が可能となり、それにともなって医療分野の専門性が高いAIツールが開発可能になります。

言語化スキル・文章スキル

プロンプトエンジニアはAIが理解しやすいようなプロンプトを作成するために、言語化スキルや論理的に文章を組み立てるスキルが必要です。AIは指示があいまいだったり、論理的でなかったりする場合は理解ができず、誤った出力をする可能性があります。よって、具体的かつ明確なプロンプトの作成が重要になります。

英語力

プロンプトエンジニアに英語力は必須ではありませんが、英語力があると強力なアドバンテージとなるでしょう。なぜなら、ChatGPTのように生成AIモデルの多くは海外で開発されたものです。よって英語を中心に学習しており、英語の情報の方が学習ソースとして豊富な傾向にあります。その結果、英語のプロンプトの方が出力回答の精度が高い可能性が出てきます。プロンプトを英文で作成しAIが出力した英文の回答を理解できれば、より精度の高いAIツールの開発に役立ちます。

創造力

プロンプトエンジニアはプロンプトの構成や表現の工夫といったクリエイティブな要素が求められるため、創造力が重要です。AIの能力を最大限に引き出すプロンプトの作成にはどうすればよいかゼロベースで考える必要があります。プロンプトエンジニアは発想の柔軟さや知識の応用といったたぐいの創造力が必要です。

プロンプトエンジニアに向いている人の特徴

前項目ではプロンプトエンジニアに必要なスキルや知識について解説しました。それをふまえると、プロンプトエンジニアに向いている人は下記のような特徴が挙げられます。

  • AIをはじめとする最先端技術に興味がある
  • 論理的な文章の記述や言語化が得意である
  • 知識の幅が広く、知識を応用して物事を考えられる
  • 問題解決能力があり、試行錯誤が苦ではない
  • ゼロベースで物事を考えられる柔軟な発想がある

プロンプトエンジニアにはスキルや知識といったテクニカルな面の適性だけではなく、創造力や論理的思考力、問題解決能力といったヒューマンスキルの適性も必要です。プロンプトエンジニアの仕事内容は多岐にわたるため求められる適性も多くなります。

プロンプトエンジニアになる方法

プロンプトエンジニアに興味があっても経験がなく、なり方がわからない人も多いでしょう。では未経験からプロンプトエンジニアを目指す場合、どのような方法があるか解説します。

プロンプトを開発してみる

まず、ChatGPTなどの生成AIツールを使用して実際にプロンプトを作成してみましょう。実際にプロンプトを作成することで、プロンプト作成のコツや注意点などが見えてくるはずです。またプロンプトを作成する面白さも体験できるため、プロンプトエンジニアを目指すモチベーションの向上にもなります。最近では複数の生成AIツールが一般利用できるため、複数の生成AIツールで実践し特徴を比較することもおすすめです。

自然言語処理・プログラミングスキルの習得

プロンプトの作成は自然言語で行いますが、AIが自然言語を理解し出力するための仕組みを理解しておくことは重要です。AIの仕組みを理解するためにも、自然言語処理とプログラミングスキルはしっかり習得しておきましょう。

プログラミング言語はAI分野で多用されるPythonの習得がおすすめです。Pythonを習得しておくと、データ分析にも役立ち活躍の幅が広がります。Pythonはプログラミングスクールでも講座が開設されていることが多く、学習環境が整っている言語です。プログラミング自体が未経験であれば、体系的に学習ができるプログラミングスクールの活用がよいでしょう。

プロンプトエンジニアに関連する資格の取得

プロンプトエンジニアになるために特別な資格は必要ありません。しかし就職・転職をする際や、独立する際には知識やスキルの証明となるため資格を取得しておくと有利になる場合があります。具体的には、Python 3 エンジニア認定基礎試験、G検定、E資格がプロンプトエンジニアの実務に役立つでしょう。

Python 3 エンジニア認定基礎試験

Python 3 エンジニア認定基礎試験は、一般社団法人Pythonエンジニア育成推進協会が開催しています。試験ではPython3の文法基礎が問われます。一般社団法人Pythonエンジニア育成推進協会は他にも、Python 3 エンジニア認定実践試験やPython 3 エンジニア認定データ分析試験などのPythonの試験を開催しています。Pythonのスキルを磨きたい方は資格習得を目指して勉強するのもおすすめです。

G検定

G検定は一般財団法人日本ディープラーニング協会が開催しているAIに関する知識を問う試験です。出題項目はAIをめぐる動向、機械学習およびディープラーニングの具体的手法、統計などのAIに関する幅広い項目です。資格の勉強を通してAIについて幅広い知識が得られます。

E資格

E資格は一般財団法人日本ディープラーニング協会が開催している試験です。G検定同様、AI関連の問題が問われます。出題項目は確率や統計といった数学的基礎、機械学習の基礎、ディープラーニングの基礎と応用、開発・運用環境など多岐にわたります。E資格はG検定よりもより専門的な内容が問われる点が特徴です。

ポートフォリオの作成

資格の取得などで知識やスキルを磨いたら、実際にプロンプトエンジニアの案件に応募します。プロンプトエンジニアにかかわらず、エンジニアが案件に応募する際にはポートフォリオが必須です。案件に応募する前には、ポートフォリオを作成しましょう。

ポートフォリオとは、プロンプトエンジニアとしての自分のスキルや実績をまとめた履歴書のようなものです。実績には自分で開発したプロンプトを記載してもかまいません。資格を保有している場合は、保有資格も記載して積極的に実力をアピールしましょう。

プロンプトエンジニアの求人を探す

ポートフォリオを作成したら、いよいよ求人探しです。求人探しにはクラウドソーシングサイトやITエンジニア向けのエージェントサービスなどを活用することが一般的です。初心者のうちは単発案件など規模が小さめの案件からはじめて、少しずつ実績を積んでいくのがよいでしょう。

プロンプトエンジニアのキャリアパス

プロンプトエンジニアはAIについての知識やスキルを持っているため、AI関連の別の職種へジョブチェンジすることも可能です。では、プロンプトエンジニアのキャリアパスとして挙げられる職種を紹介します。

AIエンジニア

AIエンジニアはAIモデルの設計、開発、運用を行う職業です。プロンプトエンジニアで培った機械学習の知識やプログラミングスキルを活かすことができます。AIエンジニアはAIモデルの実装、プログラミング言語を用いてAIが動作するためのシステムを作成するなど、プロンプトエンジニアに比べて開発場面での活躍が多岐にわたる点が特徴です。

データサイエンティスト

データサイエンティストはビッグデータを分析することで課題を抽出し、解決策を提案する職業です。プロンプトエンジニアの仕事を通じてデータ分析や統計に興味を持った方に適したキャリアパスだと言えるでしょう。データサイエンティストの仕事では、Pythonを使用した機械学習の知識が役立てられます。

プロンプトエンジニアの今後の需要や将来性

生成AIツールの普及にともなって、プロンプトエンジニアの需要も高まっていくと予想されます。AIツールの高度化や生成AIツールの一般利用が増えるにしたがって、様々なITリテラシーレベルのユーザーを想定したAIツールの開発が求められるようになります。既定のプログラムだけでは対応できない高い精度の回答を出力するためにはプロンプトエンジニアによる質の高いプロンプトの開発が不可欠です。

プロンプトエンジニアは、プログラミングや機械学習のスキルに加えて言語力も求められる珍しい職業です。そしてAIと人間の架け橋となる、やりがいの大きい職業でもあります。AI関連の分野の職業を目指している方は、選択肢のひとつにしてみてはいかがでしょうか。

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