FORTRANとは?歴史や特徴、現在も使われている理由を解説
FORTRAN(フォートラン) とはプログラミング言語のひとつで、70年前に開発された歴史のある言語です。
本記事では、FORTRANの歴史や特徴、現在に至るまで長く使用されてきた理由を紹介します。また、今後の需要についても解説しますので、FORTRANに興味のある方はぜひ参考にしてください。
目次
FORTRAN(フォートラン) とは
FORTRANとは科学技術計算を得意とするプログラミング言語です。実行速度が速く、膨大な量の計算を処理できる特徴から、おもにスーパーコンピューター内のプログラムに使用されます。
FORTRANは科学技術計算に特化していることから、数値微分などの数学関数や数値計算に関するライブラリが豊富です。よって使用用途としても、大規模な数値計算やシミュレーション、数値解析の場面で使用されます。
FORTRANの歴史
FORTRANは1954年に当時IBMに勤務していたジョン・バッカスによって考案されました。当時のプログラミング言語は低水準言語と呼ばれるコンピュータにとって読みやすい言語ばかりでした。そんな時代にFORTRANは世界初の高水準言語(人間が読みやすい言語)として開発されました。
FORTRANは開発依頼アップデートを重ね、1991年には大幅に改定されたFORTRAN90が登場しました。FORTRAN90はモジュール化機能が追加され、構造化言語として進化しています。FORTRAN2003ではオブジェクト指向化やC言語との相互作用が可能になり、最新バージョンの Fortran 2018ではC言語との相互作用が強化されています。
FORTRANの特徴とメリット
FORTRANの特徴として、次の3つが挙げられます。
- コードが読みやすい
- 段階を踏んで学習できる
- 歴史が長く参考にできる書籍が多い
では、上記3つの特徴やFORTRANを学習するうえでのメリットを見ていきましょう。
コードが読みやすい
まず、FORTRANはコードが読みやすいことが特徴です。コードの読みやすさはFORTRANが人間にとって読みやすい高水準言語であることが理由です。コードの読みやすさは学習する際にも取り組みやすく、メリットと言えるでしょう。
段階を踏んで学習できる
FORTRANでは他の言語に比べて段階を踏んで学習できる点が特徴です。FORTRANでは基本的な概念である副関数から学ぶことが可能で、基本的な概念を理解してからオブジェクト指向を学ぶといったように段階を踏んだ学習方法ができます。
プログラミング言語を学習する際に、オブジェクト指向の概念で初心者の多くが苦戦しがちです。よってFORTRANのように段階を踏んで学習できる言語は初心者にとって学習しやすいと言えます。
歴史が長く参考にできる書籍が多い
FORTRANは開発から70年もの歴史がある言語です。よって過去には参考書が多数出版されており、インターネット上でも多くの情報が無料で公開されています。学習コンテンツが充実している点で、学習しやすい言語と言えるでしょう。
FORTRANの今後の需要や将来性
長い歴史のあるFORTRANですが、今後の需要や将来性が気になるところです。では現状からFORTRANの将来性を探ってみましょう。
ユーザー数が減少傾向にある
現状、FORTRANのユーザー数は減少傾向にあります。理由としては他の新しいプログラミング言語の台頭により若い世代でFORTRANを学習する人が減ってきたことが考えられます。ユーザー数の減少はコミュニティの衰退にもつながるため、将来性を考えるとマイナスと言えるでしょう。
コミュニティが小さく、問題解決が難しいことがある
前項目でも触れましたが、コミュニティが小さいことは将来性としてはマイナスです。現状、FORTRANのコミュニティは他の言語に比べて小規模です。コミュニティが小さい具体的なデメリットとして、問題が発生したときにサポートリソースが限られるため解決が困難になりやすいことが挙げられます。
一部のライブラリは古い時代のものとなっている
FORTRANは長い歴史のある言語ゆえに、一部のライブラリが古い場合もあります。古いコード設計はバグの発生などで正しく実行されないこともあり、注意が必要です。しかし、新しいライブラリの開発や改良も行われているのも事実です。よってライブラリを使用する際には、評価や使用例などを参考にライブラリを選択することをおすすめします。
FORTRANが使われている分野
前項目でユーザー数の減少やライブラリの一部が古いなど、FORTRANのデメリット部分の現状をお伝えしました。
しかし、FORTRANは現在でも科学技術計算や数値解析の分野で使用され続けており、FORTRANの強みである膨大な計算の高速実行は現在でも評価されています。また、レガシーシステムではFORTRANが使用されている場合も多く、レガシーシステムの保守でも活用されています。
FORTRANが今も使われている理由
開発から70年経過した現在でもFORTRANは使用されています。ではFORTRANの特徴をふまえて、現在でもFORTRANが使われている理由を解説します。
旧バージョンが現在でも使用できる
FORTRANはバージョンアップを重ねてきましたが、互換性を保つ配慮がされてきました。たとえば、旧バージョンのFORTRANでも現在のコンパイラで使用できます。ほかにも、主要なOSやハードウェアアーキテクチャでFORTRANの開発や実行環境が提供されています。
しかし、旧バージョンのコードが正しく実行されない可能性もゼロではありません。よってバージョンアップの際には念のため正しく動作するか動作確認が必要です。
共配列(Coarray)による分散メモリ並列処理
FORTRANには共配列という機能があり、この共配列による分散メモリ配列処理が科学技術計算で現在でも重宝されています。よってFORTRANは現在でも使用され続けています。
共配列が重宝されている理由は、分散メモリ配列処理が簡潔に記述できるためです。共配列を使用すると、データの分割や複製、プロセス間の同期などの処理がコンパイラによって自動的に管理されるため簡潔な記述でも膨大な量の計算が可能です。
70年以上たった今でもアップデートされている
FORTRANは開発から70年以上たった今でも、バージョンアップや改定などのアップデートの動きが活発です。最新バージョンのFortran 2018ではC言語との相互作用が強化されるなど、他の言語との連携も可能になっています。
またFORTRANのコミュニティでは最新情報が更新されています。初心者向けのチュートリアルもあるため、学習を始めたい方にもおすすめです。
FORTRANの使い方
では、FORTRANを使う際の手順を解説していきます。
開発環境を構築する
まず、開発環境を構築しましょう。FORTRANの開発環境はFortran Builderでまとめて構築できます。Fortran Builder ひとつでFORTRANのプログラムの作成、編集、コンパイル、リンク、実行、デバッグがすべて行えます。
固定形式のファイルは自由形式に変換しておく
FORTRANを使用する際には、固定形式のファイルは自由形式に変換しておきましょう。
FORTRAN はもともと、1行に記述できる文字数が72文字までなど制約が多い固定形式でした。しかし、FORTRAN90以降では汎用性の高い自由形式にアップデートされました。自由形式にアップデートされたことにより、1行に記述できる文字数が132文字に増えるなど、拡張性や汎用性の高いものになりました。
FORTRANを使用する際には固定形式から自由形式に変換して使用することをおすすめします。前述したFortran Builderではツールバーで固定形式から自由形式に変換が可能です。
ソースコードの記述では整数型と実数型を区別する
FORTRANでソースコードを記述する際は整数型と実数型をしっかり区別しておきましょう。整数型と実数型ではコンピュータ内部での表現方法が異なるため、型の違いによって演算結果に違いが発生することがあります。
整数型はinteger、実数型はrealで宣言します。具体的には下記のように記述します。
integer :: a = 38(整数型のaという変数に38を代入して宣言) real :: b =2.4(実数型のbという変数に2.4を代入して宣言)
まとめ
FORTRANは長い歴史のあるプログラミング言語で、現在でもスーパーコンピューターで使用されています。FORTRANの特徴である膨大な量の計算が高速実行できる点は、現在でも科学技術計算に強い言語として評価されています。
いっぽう、現状でFORTRANが活用されているのはスーパーコンピューターやレガシーシステムの保守くらいで活用シーンが限定的です。
しかしFORTRANはコードが読みやすく、段階を踏んで学習できるなど学習しやすい言語と言えます。プログラミングの基礎としてFORTRANを学ぶのも一つの選択しとしておすすめです。
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