DX推進に関わる職種、仕事内容や必要なスキルを解説
近年、DX推進が業種を問わず叫ばれており、DX分野の求人が著しく増加しています。DX分野は幅が広く、職種も豊富です。
本記事ではDX推進に関する職種と、その仕事内容や必要なスキルについて詳しく解説していきます。
DX推進とは
DXとはデジタル技術の活用よってビジネスの変革を行うことです。DX推進とは単なるデジタル化だけにとどまらず、デジタル化による変革が新たな価値を生みだす取り組みのことを表します。経済産業省が制定したデジタルガバナンス・コード2.0によると、DXは次のように定義されています。
企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。
出典:経済産業省 デジタルガバナンス・コード2.0
上記の定義では、「変革し、競争上の優位性を確立すること」が明記されています。では、こうした定義がされた背景と日本のDX化について詳しく解説します。
「2025年の崖」問題
経済産業省は2018年に「DXレポート」を公表し、そのなかで「2025年の崖」問題を提起しました。内容を要約すると、既存のレガシーシステムを利用し続けた場合、2025年以降は毎年膨大な経済損失が発生し、すでにDX化が進んでいる諸外国と比べて競争性が低下するという内容です。よってDXが「デジタル技術によりビジネスを変革し、競争上の優位性を確立すること」と定義されているのです。
DX化の課題
DX化の課題は、既存のレガシーシステムとDX人材の不足です。とくにDX人材の不足は深刻であり、経済産業省の調査では多くの国内企業でDX人材が不足しているという結果が出ています。また、レガシーシステムを扱っていた人材の退職による人材不足と技術継承が行われないままレガシーシステムだけが残ってしまうという、2つの課題が同時に発生する事態も起こりかねません。
DX人材とは
DX人材とは、デジタル技術の知識を持ち、DX推進のプロジェクトを統括して進められる人材のことです。AIやクラウドといった最先端技術への知見はもちろん、デジタル技術で何ができるかを理解し、DX化推進のプロジェクトをリードできる能力が求められます。
DX推進に関わる職種の仕事内容と必要なスキル
ではDX推進に関わる職種を具体的に紹介します。情報処理推進機構(IPA)が定義しているDX推進に関わる職種は次の7つです。
- プロダクトマネージャー
- ビジネスデザイナー
- テックリード(エンジニアリングマネージャー、アーキテクト)
- データサイエンティスト
- エンジニア・プログラマー
- UX/UIデザイナー
- 先端技術エンジニア
順番に詳しく紹介していきます。
プロダクトマネージャー
プロダクトマネージャーはDX推進プロジェクトにおいて、リーダーとしてプロジェクトを主導する役割が求められます。具体的な仕事内容は、課題の抽出や課題解決に向けた戦略の立案、人員や予算の管理、組織体制の再構築などです。よって、プロダクトマネージャーには、デジタル技術の知識だけではなく、経営に関する知見も必要です。
ビジネスデザイナー
ビジネスデザイナーはプロダクトマネージャーが作成した構想をより具体的に計画し実行する職種です。現場のエンジニアやプロダクトマネージャー、さらにステークホルダーの間に入り、計画の実現に向けて調整を行います。ビジネスデザイナーにはアイデアを具体化する力と関係各所への調整力が求められます。
テックリード(エンジニアリングマネージャー、アーキテクト)
テックリードはエンジニアリングマネージャーやアーキテクトが該当する職種です。テックリードの仕事内容は、システムの使用や要件定義などDX推進における根本的な部分を設計することです。テックリードはシステム全体の方向性を決める重要な役割であり、そのため運用や保守まで見据えた設計力や豊富な知識が求められます。
データサイエンティスト
データサイエンティストはビッグデータを解析することでビジネスの課題を抽出する職種です。データサイエンティストにはプログラミング言語Pythonの知識のほかに、データ分析や機械学習の知識が求められます。また、ビッグデータを機械学習に持ち込んでAIを活用して課題解決を行うAIエンジニアもデータサイエンティストに近い職種です。
エンジニア・プログラマー
エンジニアやプログラマーはアーキテクトが設計した仕様をもとに、システムの実装やインフラの構築といった実務的な業務を担います。具体的にはJavaやPHPなどのプログラミング言語を使ってコーディングを行います。エンジニアやプログラマーには、コーディングのスキルが必須であるほか、進捗管理などの現場管理能力も求められます。
UI/UXデザイナー
UI/UXデザイナーはデジタルサービスのユーザーインターフェース(操作画面)を制作する職種です。ユーザーインターフェースにはデザインのわかりやすさや使い勝手のよさが求められ、ユーザーの満足度やサービスの利用度に直結します。よって、UI/UXデザイナーはWebデザインのスキルとあわせて客観的な視点が求められます。
先端技術エンジニア
デジタル技術は発展の著しい分野であり、先端技術エンジニアは先端技術のプロフェッショナルです。具体的な例では、機械学習やディープラーニングなどのAI関連の知識やブロックチェーンなどのWeb3に関する知識が現状では求められています。また、今後も発展し続けるデジタル技術の最新の動向を常にキャッチアップしていく姿勢も重要です。
DX推進の人材に求められるスキルや経験
DX推進に関する職種を目指す場合にはどのようなスキルや経験が求められるのでしょうか。DX推進にはさまざまな業務が関係するため、求められるスキルは多岐にわたります。ではひとつずつ順番に解説します。
プロジェクトマネジメントのスキル
DX推進は複数人でのプロジェクトチームとして行うため、プロジェクトのマネジメントスキルが必須になります。具体的には課題の抽出、戦略の策定、進捗・人員・予算の管理、関係各所への調整などのスキルです。DX推進は自分の担当業務だけで完結する仕事ではなく、多くの関係者を巻き込む一大プロジェクトです。よって、プロジェクトマネージャーではなくても、プロジェクトを円滑に進めるためにマネジメントスキルが求められます。
新規事業の企画力や構築力
DX推進はデジタル技術を活用して新たなビジネスモデルを生み出すことが目標です。よって、新規事業の企画力や新規事業のフレームワークを考える構成力が必要です。企画力や構成力はプロダクトマネージャーやビジネスデザイナーはもちろん、システムの方向性を決定するテックリードにも求められます。
IT関連の基礎的な知識
IT関連の基礎的な知識は、エンジニアやプログラマーのような実務的な業務ではもちろん、戦略の策定や企画の際に必須の知識です。抽出された経営課題をデジタル技術でどのように解決するかを考えるためには、ITの基礎的な知識が土台となります。また、最適な解決策の提案のために最新知識をアップデートし続けることも重要です。
データサイエンスに関する知識
DX推進には課題抽出のためにデータ分析が活用されます。とくに近年はビッグデータを活用したデータ分析が行われており、データサイエンスに関する知識を持った人材は重宝されるでしょう。データサイエンティストやAIエンジニアの職種は需要が高く、近年とくに注目されている職種です。
AI、ブロックチェーンなどの最先進技術の知識
デジタル技術は発展が著しく、DX推進に関する仕事に就く場合は最先端技術の知識が求められます。現状では、AIやブロックチェーンに関する知識を持つ人材の需要が高くなっています。
AIもブロックチェーンも一般的に活用されれば、これまでのビジネスに大きな変革をもたらします。よってDX推進においては重要視される知識のひとつです。
UI/UXに関する知識
DX推進ではユーザー目線の意識を持つことも重要です。よってデジタルサービスのUI(操作画面)やUX(操作性のよさなどのユーザー体験)に関する知識も必要になってきます。とくに、UI/UXデザイナーやテックリードには必須の知識です。
DX推進の人材に求められるマインドセット
DX推進の人材には、求められる人物像としてスキルや知識の有無だけではなくマインドセットも関係していきます。では求められるマインドセットについて詳しく解説していきます。
不確実な未来へ挑戦する力
DX推進はビジネスを変革し、新たな価値を生み出すことです。よって新規ビジネスの開拓など不確実性の高い業務を担当することもあるでしょう。その際に、取り組むべき課題に真摯に向き合い挑戦できる力が求められます。
柔軟で臨機応変な対応力
DX推進などの大きなプロジェクトは企業の経営状況や社会情勢によって、方向性や計画の変更が起こる可能性もあります。その際、変更に柔軟に対応し臨機応変に対応する力が求められます。
社内外や異業種を巻き込む力
DX推進では、ビジネスモデルや組織体制が変革することもあります。よって、社内の経営陣や情報システム課だけではなく、社内全体や取引先を巻き込んで推進していく力が必要となります。また、ビジネスモデルの変化により新規市場を開拓する場合は異業種を巻きこんでプロジェクトの戦力にする必要があります。
失敗を恐れない姿勢と思考
DX推進のような新規プロジェクトには失敗がつきものです。たとえうまくいかない場合でも、失敗の原因を見つめて前向きに行動する姿勢が重要です。
モチベーションや意味づけする力
DX推進は長期プロジェクトであり、チームのモチベーション維持が重要です。また、デジタル化の導入による成果を適正に評価するなど意味づけする力も必要です。
自身での突破力
DX推進ではプロジェクトの途中で困難な状況に陥ることもあるでしょう。その際にさまざまな切り口からのアプローチを実行し、諦めずに前向きに取り組むことが重要です。
DX推進に関する求人の年収
DX推進に関する人材は需要が高く、スキルの難易度も高いため、正社員でもフリーランスでも年収が高い傾向にあります。具体的には年収500万円~1,500万円が主流と言われています。個人のスキルや担当する業務にもよりますが、1,000万円以上の求人も珍しくありません。「2025年の崖」の問題でも触れているように、今後もDX推進分野での人材不足が続くと予想されています。
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