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スポーツアナリストとは?なるには?仕事内容・スキル・年収・将来性

プロスポーツや競技などの領域でデータ分析をおこなう職業が「スポーツアナリスト」です。人気の高いスポーツ分野の仕事のため、転職を検討する分析経験者や未経験から挑戦したい学生の方も多いのではないでしょうか。

この記事では、スポーツアナリストの仕事内容やスキルセット、年収、向いている人などをわかりやすく解説します。需要や将来性についてもみてきましょう。

スポーツアナリストとは

スポーツアナリストとは、スポーツ競技の現場でデータの収集と解析に取り組み、選手やチームをサポートする分析のスペシャリストです。試合に向け相手チームへの対策を考えたり、身体活動を数値化して練習に役立てたり、統計的な手法をもちいて映像や記録を分析して監督やコーチに有益な情報を提供します。

データを効果的に活用することで、スポーツの分野でも数値や科学的な根拠にもとづく精度の高い判断が可能となります。

スポーツアナリストという職業に明確な定義があるわけではなく、テレビなどで試合を評価する解説者もスポーツアナリストと呼ばれることがあります。

スポーツアナリストの役割

サッカーや野球、バスケットボール、ラグビーなど、近年ではプロスポーツや個人競技の勝敗も情報にもとづく戦略・戦術が大きく左右するようになってきました。選手や監督の経験則や直感にスポーツアナリストのデータに基づく客観的な視点が組み合わさることで、すばやい状況把握や適切な作戦の立案が可能となります。

また、試合での対戦成績や選手毎のスコアなどをデータ化して蓄積し分析することで現在置かれている状況や個人のコンディションを把握し、抱える課題や停滞の原因を特定して解決策を提示するのもスポーツアナリストの役割一つです。

最新の分析ツールを熟知するとともに、知識やスキルの更新にも努めなければなりません。

スポーツアナリストの仕事内容

スポーツアナリストは、情報から必要なデータを抽出し科学的な手法で分析をおこないます。目的に応じて、必要な情報を収集するため、選手の動きやスコア、会場の設備、気候など扱うデータは多岐にわたります。それらの情報を管理し、得られた結果をアスリートやチーム関係者に伝えるのが仕事です。

試合に関する分析結果は、意思決定者の指示にも影響を与えます。試合中にリアルタイムな指示を選手に与えたり、過去の出場者を分析して次の対戦相手のスタメンを予測したりすることも可能です。

スポーツアナリストによる分析は、トレーニング方法の改善や、試合に合わせた身体管理などにも使われます。さらに、テレビやWebサイトなどのメディアで報道するデータを準備するなど、スポーツチームではなく外部の企業や団体で競技に関する分析をおこなうこともあります。

スポーツアナリストの年収

ここからは、会社員として働く場合の給料や待遇についてみていきましょう。一般社団法人日本スポーツアナリスト協会によると、スポーツアナリストの平均年収は580万円です。国税庁による「令和2年分 民間給与実態統計調査」によると、日本の会社員における平均年収はおよそ433万円とされているため、一般的なサラリーマンに比べてスポーツアナリストの待遇は良いと考えられます。

スポーツアナリストは、ここ10年ばかりで出てきた比較的新しい職種です。給料の相場も完全に出来上がっているわけではないため今後に期待する余地はあるでしょう。

スポーツアナリストに必要な能力

スポーツアナリストには情報収集や分析をおこなう能力、分析結果を関係者に報告する力が求められます。職場によってはAIを使った解析や最新の分析ソフトなども扱う必要があります。

情報収集

スポーツアナリストには、根気強く正確な情報を収集し管理する能力が求められます。情報が不正確だと、その後の分析や予測にも影響を及ぼします。収集する情報には映像や速度、GPSデバイスで選手たちの動きを追跡したトラッキングデータ、チームや選手のプレーの成績をまとめたシートなどがあります。

また、情報を蓄積し管理するにはデータベースやシステムが使われるので、最新のテクノロジーを使いこなす能力も必要です。

分析力

当然ながら分析力が求められる仕事です。統計の知識などを基に情報を解釈することで、指導者や選手に新たな視点を提供することが可能になります。対象となる競技の内容や身体構造に関する理解があると、選手1人1人の体調などを見極める観察力が分析の助けになり、競技者の信頼を得ることにもつながります。

ビジネス分野と同じくスポーツ分析にもAIが導入され出しているため、ビッグデータを分析するためのIT知識とスキルも必要です。

報告

指導者や選手に実行を促すには、情報を適切に報告する力も重要です。単にレポートを作成して情報を伝えるだけではなく、分析の意味や数値が示す内容を解説して、理解してもらう必要があります。

そのため、分析結果をグラフや表などにビジュアル化してわかりやすくする工夫をしたり、普段から密にコミュニケーションをとるよう心がけたりすることが大切です。

チームの一員としての意識や情熱が伝われば、信頼関係が生まれ伝達がスムーズになります。

スポーツアナリストに向いている人

情報収集や分析には、丁寧さや正確さが必要です。また、十分にデータを蓄積するには長い時間を要するため、地道な作業の積み重ねが苦にならない人がスポーツアナリストに向いています。統計学の知識やスポーツ関連の知識も必須です。

PythonやR言語を習得し、ビッグデータを扱う最新のデータ解析や分析のソフトが使え、常に新しく知識やスキルを更新する必要もあります。

その他に、テレビなどで速報を届ける場合にはスポーツアナリストの分析がそのまま使われるため、球の行方などを正確に追える観察力や入力のスピードと正確性も重要な資質です。

スポーツアナリストになるには?

スポーツアナリストになるための特別な資格はありません。採用側が求める、社員として最低限必要な知識や能力があれば目指すことができます。しかし、スポーツアナリストを名乗るだけでは採用は難しく、具体的な実績作りやスキルの習得が必要です。

未経験からスポーツアナリストになるにはプロチームやスポーツ系分析会社に就職するなどの方法が考えられますが、特殊な職業のため通常の方法では募集が見つからないこともあります。

プロチームやスポーツ団体に就職する

スポーツアナリストとしてプロのスポーツチームや実業団に就職するのは、運も必要な狭き門です。スポーツのプロチームは数が少なく、スポーツアナリストは一度就任すればすぐに変更されることはありません。大学を出た時点で、プロチームの募集があるかは運次第です。

求人が紹介制で完全にクローズドの場合もあるので、アナリストが登壇するセミナーなどがあれば学生時代から参加して顔を覚えてもらいましょう。

スポーツ系分析会社に就職する

スポーツ系分析会社は、以前に比べて増えています。サッカーチームやプロ野球チームなど専門とするスポーツが異なるので、サポートしたいスポーツの分析を行っている会社を選ぶ必要があります。

会社によりますが選手個人やチームとサポート契約を結んでいれば、会社員という身分のままでスポーツアナリストとしてチームなどをサポートできるかもしれません。

スポーツアナリストの勉強方法

スポーツアナリストの勉強法には、大学や専門学校で学んだりセミナーなどに参加したりする方法があります。しかし、前述の通りスポーツアナリストは常に募集があるわけではありません。

大学などで知識やスキルを学びながら、実際にチームや選手個人と繋がりを持ちアナリスト業務を手伝ったり、就職してデータサイエンスの技能を身につけたうえで転職エージェントなどからスポーツアナリストの仕事を斡旋してもらったりするのが実際的な就職の方法でもあります。

大学に進学する

専門学校とは異なり「スポーツアナリスト」という名称を持つ専攻のある大学は存在しません。大学では情報学部などで分析ソフトの使い方やパフォーマンス分析などの情報技術の専門知識を学んだり、スポーツ科学などを専攻してスポーツをする人や見る人、支える人などあらゆる視点からスポーツを研究したりすることになります。

例えば、桐蔭横浜大学スポーツテクノロジー学科は、日本スポーツアナリスト協会の代表理事が講師を務めている大学です。また、経営学部や経済学部で統計学を学んでおけば、スポーツアナリストになれなかった場合でも就職活動の助けになります。大学の体育系の部活動に所属して、選手をしながらアナリスト活動も行い実績を作りましょう。

セミナーや講座で学ぶ

スポーツアナリストについて学べるものには、日本スポーツアナリスト協会(JSAA)が主催するSAJ(スポーツアナリティクスジャパン)というカンファレンスがあります。データスタジアムという会社が定期的に主催する、スポーツアナリスト養成講座もスポーツアナリストを目指す人を対象とした講座です。その他、専門学校の講座でも学べます。

スポーツアナリストの将来性

情報戦略が勝負の要となったスポーツ業界では、多くのプロスポーツでデータ分析の重要性が高まっています。中でも、IT技術を活用したビッグデータの収集や分析は汎用性が高く、今後スポーツアナリストは様々な場面で活躍することが期待されます。

スポーツ業界でデータ分析の重要性は高まる

客観的なデータ分析はパフォーマンスの向上だけでなく、選手を評価する際の重要な指標となります。現在のスポーツアナリストは特定の競技について分析をすることが主流ですが、将来的にはオールラウンドのスキルを持って様々な分野で活躍する人が出てくるかもしれません。逆に、情報収集と分析、伝達が細分化されそれぞれの分野を極める可能性もあります。

スポーツ団体の戦略立案や意思決定でAIを用いたビッグデータの処理が必要になると予想されるため、よりエンジニアリングのスキルを持つ専門家も増えてくるでしょう。そのように、今後もスポーツ業界で活躍する分析スペシャリストの重要性は高まると考えられます。

データ分析は様々な場面で通用する

データを活用することの重要性は、ビジネスのあらゆる場面で高まっています。この先、データの収集・分析によって選手とチームを知り尽くしたスポーツアナリストが、コーチやゼネラル・マネージャーにキャリアアップすることも考えられます。テレビなどのスポーツ解説者としても、プロスポーツ選手出身ではないスポーツアナリストが必要とされる日が来るかもしれません。

インフォグラフィックなどを使ってデータを可視化し、試合と同時に選手の動きを予測するアニメーションなどを流せば、ファンサービスとなって視聴者とのエンゲージメントを高めることにも繋がります。このように、スポーツアナリストはファンを増やすためのマーケティング活動にも参加することが可能です。

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