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SEの転職先・職場探しや企業選びのポイント

給料や待遇、仕事内容、キャリアアップなどを理由に転職を希望するSE(システムエンジニア)が増えています。IT人材の不足が叫ばれている中、社内SEなどの求人も増加しており、中途採用の市場は活況です。果たして、SEの転職先にはどんな業界や企業、職種が存在するのでしょうか。

SEとして働いた経験やスキルを活かし、SIerやIT業界内での転職が一般的と思われがちですが、デジタル化の流れは業界を問わずに広がっているため、今後はさらに幅広い分野で活躍できるチャンスがあるといわれています。

この記事では、そんなSEの転職先やキャリアパス、転職理由などをわかりやすく解説します。仕事探しや転職先選びのコツについてもみてきましょう。

SEの転職先

ここでは、SE(システムエンジニア)の代表的な転職先を紹介します。今の会社にそのまま残るのか、次に働くフィールドとしてどんな業種や職種を選ぶかで、キャリアや年収が大きく変わってくるのも事実です。

IT業界でSEを続けるという選択肢だけでなく、異業界や異職種でもSEのキャリアを活かせる職業を知っておくことで、より幅広い視野で次の仕事や就職先を探すことができます。

SEとして他の会社へ転職

現在働く職場で、収入面や労働環境が不満だが仕事内容は気に入っているケースなど、システムエンジニアリングの仕事はそのまま続けたいが、職場だけを変えたい場合は、中途採用で募集されるSE求人に応募して転職しましょう。SEという同じ職種のままで別のSIerへの転職や事業会社の社内SEへの転職が候補としてあげられます。

前職で培ったスキルや経験がそのまま新しい職場で発揮でき、給与面でも有利になることが多いです。休日出勤や残業時間、夜勤などの労働条件に不満を持って転職を考える場合、転職前に労働環境についてしっかりと確認すれば、よりできるでしょう。

具体的な転職先について以下で紹介します。

SIerのSE

SIerに所属するSE(システムエンジニア)が同じ業界内で、別のSIerへと転職するパターンです。給料や待遇面の改善を望むなら、中小企業から大手企業への転職がおすすめです。勤務先の会社規模が変わることで、同じSEであっても、より上流工程が経験できる、福利厚生や教育の内容が手厚くなる、などの恩恵を期待できます。

SEは、会社の規模やプロジェクトの商流によって担当する仕事が大きく異なります。大手Slerに所属するSEの仕事は、プロジェクトマネジメントや下請け会社の管理が中心で、開発などにはあまり関わりません。一方で、中小Slerの仕事は、多種多様です。開発やテストなどの工程に携わることも多いでしょう。

得意な業界や技術領域、開発体制などもSIerによって違いがあるため、求めるキャリアパスやスキルアップを目的とした転職先の候補にも入ってきます。ただし、クライアントから受託した案件をまわしていくという構造は変わらないため、気に留めておきましょう。

SIerとは

SIer(エスアイヤー)は、システムインテグレーターの略称で、システム開発や運用を請け負う企業のことです。クライアントから依頼され、システムの設計から開発、運用、導入後のサポートやコンサルティングまで幅広いソリューションの提供を行います。製造メーカーから独立したメーカー系、親会社のシステム開発を行うユーザー系、コンサルティング業務とシステム提案を行うコンサル系などさまざまなSlerが存在します。

社内SE

情報システム部門などに所属して、自社内のシステムに関する企画や開発・運用をおこなう「社内SE」も転職先として人気があります。SIerに発注をかける依頼主の立場で仕事をするため、クライアントワークが中心となるSIerのSEに比べ、納期の融通が利きやすく、日々の仕事をコントロールしやすい点が特徴です。

社内SEは、企業内におけるサーバーやネットワークなどのIT環境を整え、情報システムの保守・運用をおこない、パソコンやモバイル機器などハードウェアの管理や利用するためのサポートを行います。入社した人のパソコンのセッティングから、セキュリティ対策やITリテラシー向上のための教育なども業務に含まれます。

一方で、社内システムの開発などを担当することもあるなど、所属する会社によって、社内SEの仕事の範囲は異なるので注意が必要です。社内SEは、クライアントと折衝をすることはありませんが、事業部門や経営部門など他部署の担当者とは交流の機会も多くあります。

公務員

地方自治体では、ITスキルを持った経験者の中途採用が本格化しています。会社員から公務員になるには、公務員試験に合格する必要があるため、在職中から勉強時間を確保して計画的に挑戦するとよいでしょう。論文などの試験対策には半年以上の時間を要します。公務員試験に合格して、採用選考を突破できれば、SE知識を持ったゼネラリストとしてITスキルを発揮できるでしょう。

業務で必要とされるSEのレベルは決して高くなく、転勤や解雇の心配がありません。給与は安定しており、ワークライフバランスを取りたい人に最適といえます。

IT業界で他の職種へ転職

進みたいキャリアの方向性によっては、SE(システムエンジニア)から別の職業にキャリアチェンジすることも視野に入ってくるでしょう。技術職でなく、コンサルタントや営業などの職種を目指すことも検討の余地は大いにあります。SEとして培ったプロジェクト経験は、IT業界の様々な場面で活かすことができるため、選択肢は非常に豊富です。

SIerからWeb系の会社に転職してWebエンジニアを目指すこともできますし、インフラやアプリケーション開発、セキュリティなど領域に特化したスペシャリストになることも考えられます。プリセールスやセールスエンジニア、カスタマーエンジニアなどのポジションも近年需要が高く、顧客と接する仕事を希望する際のキャリアパスとして人気があります。

SaaSなどクラウド上で提供する法人向けサービスや業務系ソフトウェアのニーズが増加しており、そのような製品・サービスでは、営業やコンサルティングにもシステム提案が欠かせなくなってきています。導入後のサポートや継続的な運用を行う際にも、SEの経験や知識が役立つため、未経験の職種だったとしても転職がスムーズなのです。

同じIT業界内でSEから転身する際の、代表的な職種を以下で紹介します。

Webエンジニア

Webエンジニアは、SNSやEC、ゲームなどインターネット上のWebサイトやアプリケーションなどの自社開発をおこなう仕事です。実際のサービスを動作させるためにプログラミング言語でコードを書いたり、インフラ環境を整えたりと、手を動かすタスクが中心となります。ITスキルだけでなく、プロダクトやビジネス、マーケティングなど幅広い知識が必要な仕事です。

具体的なポジションとしては、ユーザーが実際に使用するUIなどの開発を行うフロントエンドエンジニアと、データベースなど裏側で動作する部分を担当するバックエンドエンジニアに分かれます。チームでの開発スキルやPHPやPython、Ruby、Javaといった言語の経験があると転職しやすいでしょう。

ITコンサルタント

ITコンサルタントは、経営やビジネスの観点から組織の課題を読み解き、適切なITの活用を提案する職種です。クラウドやCRM、ERP、RPAといった専門領域に関するコンサルティングや導入による効果や費用を試算するとともに、システム導入の計画を立案します。事業戦略や現状の問題点、システム構成などを把握し、デジタルの手法で課題を解決するプロフェッショナルともいえます。

開発より上流工程となる、新規事業や戦略立案に関わることも多く、論理的思考力が必要です。テクノロジーに関する知見だけでなく、いかにクライアントの課題を解決するかが重要となります。高い専門性やスキルが要求されるため、SEよりも年収のレンジは高めです。

セールスエンジニア・プリセールス

セールスエンジニアは、営業とエンジニアの両方の要素を兼ね備えた職種です。契約前の見込み顧客や契約中のクライアントとコンタクトをとり、自社製品の紹介やヒアリング、提案などを実施します。システムを導入するにあたり、運用のサポートなど導入後の顧客満足度を上げるための活動も重要な仕事の一つです。フェーズにより、プリセールス、ポストセールスと区別される場合もあります。

製品や技術に関する知識とともに、営業として必要なコミュニケーションスキルが求められます。ITスキルを持った営業担当者のニーズが増加していますし、売上に直結する仕事のため、募集される求人によってはSEよりも高収入が期待できます。

営業

営業職は、セールスエンジニアやプリセールスと比べ、よりビジネス寄りの職業です。電話やオンライン商談を利用して営業をおこなうインサイドセールスと顧客を訪問して商談を担当するフィールドセールス、取引のない顧客から新たな契約を獲得する「新規開拓」と既存顧客中心の「ルートセールス」などに分かれますが、交渉やヒアリングなどコミュニケーションのスキルが重要となるでしょう。

SIerやITベンダー、Webメディア企業などの営業職は、扱う製品との親和性が高くSEからでも転職しやすい営業職といえます。

別の業界・職種へ転職

SE(システムエンジニア)という仕事自体を辞めたくなり、異業種や別の職種へ転職する人もいます。ポテンシャル採用枠も多い20代のうちなら、まったく別の業界や職種への転職も可能性は高いです。ただし、中途採用では即戦力を求める求人が多いため、30歳以降は段々と未経験可の求人数が減ってくる点に留意しておきましょう。

やりたいことや就きたい仕事が明確な場合は問題ありませんが、何をしたいのかがはっきりしない場合は、転職活動をおこないながらでも、キャリアプランを作成することが重要です。

採用する側からみて、入社後に活かせる要素があれば選考でプラスとなるため、志望動機や職務経歴書の書き方も工夫が必要です。全く異なる職種であっても、SEとして工夫した点や努力した点は評価の対象となります。ただし、IT経験のない採用担当者でも理解できるよう専門用語をひかえる、わかりやすくかみ砕いて説明するなどを注意する必要があります。

企業においてITスキルがある人材のニーズは一定以上に存在します。SEとして業務効率化やデジタルを活用した売上向上に関わった経験があれば、自分の強みとしてアピールすることができるでしょう。また、未経験からチャレンジする仕事であれば、学ぶことが多く、地道な努力が必要になりますが、資格取得の履歴や学習意欲を見せることで裏付けとなる場合もあります。

フリーランスになる

フリーランスのSEは、会社から雇用されるのではなく、独立した個人の立場で依頼主から作業を請負う仕事です。常駐などの案件で働く際は、基本的に仕事内容は企業で働いている時と同じですが、契約によって報酬が決まるため、会社員SEとして働くよりも高収入が得られるケースも多くあります。

一方で、フリーランスは、契約が終了するとまた新たな仕事を探さなくてはなりません。そのため、安定性には欠けるとも言われています。勤務時間や働く場所の縛りは契約次第のため、受注状況によっては、リモートワークや在宅ワークでかなり自由度の高い働き方ができます。

会社員と違い自分で仕事を選べるので、時短勤務や週3日など稼働を抑えて働くことも可能です。フリーで働くならSEとしての業務だけでなく、見積書の作成や請求、入金確認、帳簿付けなどの雑務も発生します。

SEの転職理由

SE(システムエンジニア)の転職理由で主なものは、給与面での不満、キャリアの不安、職場環境、労働環境などです。プロジェクトの炎上や客先常駐などIT業界ならではの労働環境への不満から転職をしたい人もいます。以下で代表的な内容をみていきましょう。

スキルアップやキャリア面

今よりも「スキルアップできる環境」や「キャリアに繋がる仕事」を意識して転職を決意するSEは多いです。IT業界でのキャリア構築には、プロジェクト経験や保有スキルが重要になります。そのため、担当している案件が古いシステムばかりで最新の技術に関われない。仕事内容がサポート業務ばかり。監視や不具合対応が中心。といった形でスキル面での成長を実感できない事が職場への不満となるケースも少なくないのです。

入社後に配属された部署が自分の希望と違う場合やSEとは別の職業に就きたい場合など、自己実現を理由に次の職場を探すこともあるでしょう。

給与や福利厚生などの待遇面

転職理由として、給料や待遇面への不満もよくあげられます。他社に比べ給与水準が低いと感じた、昇給のスピードが遅い、先輩や上司の年収が期待したほどではない、などの事情が会社に見切りをつけるきっかけとなるのです。また、会社から評価されていない、頑張りを見てくれない、責任のある業務を任されない、など職場での処遇に不満がある際にも、多くのSEは転職を考えます。

それに加え、大企業では当然のようにある福利厚生も、すべての企業で整っているとは言えません。退職金や住宅補助、社員食堂、研修制度などが整っている会社に魅力を感じることもあるのです。

ワークライフバランスを考えて

炎上プロジェクトやデスマーチと呼ばれる案件で業務に従事しているSEは、納期や対応に追われて、休日出勤やサービス残業を強要されるなど長時間労働になりがちです。激務の環境に加え、残業代が正しく支払われなかったり、客先常駐やパワハラなどIT業界のブラックな労働環境に不満を持っている人もいます。多重請負や二重派遣など法律的にグレーと呼ばれることがストレスとなることもあるでしょう。

過酷な労働環境は、心身に影響を及ぼすため、ワークライフバランスの取りやすい企業への転職を希望するSEも多いのです。受託開発ではなく、事業会社の社内SEに転職するなど、職場を変えてプライベートの時間を確保することも可能なのです。

職場環境や人間関係

上司が信頼できない、コミュニケーション能力が低い同僚との仕事など、職場環境や人間関係で不満を持つSEは、転職を考えます。人間関係が悪いと、スムーズに仕事が進みません。周囲の環境が悪いというだけであれば、別の職場で自分の能力を発揮するのが近道です。

トラブルの元になっている社員が異動や退職することはなかなか考えにくく、自分が転職することで問題は解決できるでしょう。

転職の仕事探しや企業選びの注意点

採用をする企業ではIT人材に対する求人ニーズが高まっており、IT業界で実務経験のあるSEの中途採用市場での人気は高いといえます。ただし、転職先の職種や業界、経歴、年齢などによっては次の職場探しに苦労することもあるでしょう。また、実務でSEを経験した人の転職は、未経験者の転職に比べて有利ですが、年齢によりもとめられる人材が異なるため注意しましょう。

20代前半から20代後半までは、ポテンシャル採用の求人数も多く、転職でキャリアチェンジを実現できる可能性が高いです。中小SIerから大手SIer、SEからコンサルタント、その他の職種や異業界への転職もしやすいといえます。とはいえ、できるだけSEの能力が活かせる職種を志望するとスムーズでしょう。

また、SE以外の職業に転職する際は、キャリアがリセットとなるため、30代前半までに行うのが重要です。30代後半を過ぎると、リーダーやプロジェクトマネジメントなど管理職としての経験を求められる求人も増えてきます。スペシャリストとしても、より専門性の高い人材の転職が中心となり、求人のスキル要件は高くなります。

そして、SEが転職活動を進めるうえで注意するポイントを以下で説明します。転職ガチャと呼ばれるように運の要素もありますが、仕事探しにおいて情報収集は重要です。同じ理由で転職を繰り返すことを避けるためにも、面接対策だけでなく、企業選びに関する情報収集も欠かさないようにしましょう。

転職目的を明確にする

まず、SEの転職で失敗を避けるためには、その後のキャリアプラン作りが重要です。また、今の職場で不満におもっていることや、仕事や職場で重視する点などを洗い出して、今回の転職で実現したいことを明確にイメージしておく必要があります。なぜ転職したいのか、今の職場では実現できないのか、を言語化することで、働きたい企業に求めることや応募先を選ぶ際の指針がはっきりします。

なんとなく転職活動をすると、その企業である必要性を説明できず、面接でうまくいかないこともあり得ます。年収をあげたい、上流工程を担当したい、コードを書く仕事をしたい、など、目的を達成するために最適な企業を選びましょう。条件は複数あることが一般的なので、優先順位をつけ、内定を得られたなかから、自分の希望に合う転職先を決めてください。

次の職場で役立つ点をアピールする

転職では、自分がこの会社で働きたいと思う会社に応募する事はもちろんですが、相手の会社からも、この人を採用したいと思わせなければなりません。待遇や給与の交渉をするためにも、自分がいかに役立つ存在であるかを伝えなければなりません。それには、自己分析やキャリアの振り返りが必要です。今まで仕事で手掛けた実績やどんなスキルを身につけてきたのかを自分で書き出しドキュメントに整理します。

具体的なプロジェクトやその際に達成した成果などは面接でも必ず聞かれるため、その際の考え方や工夫した点を理路整然と説明することが重要です。応募先の求めるポジションや募集要項をみて、歓迎されるスキルや前職での類似した経験などはスキルシートや職務履歴書に詳しく記入してください。

応募先企業の情報収集を怠らない

効率的に転職活動をするには、情報収集も欠かせません。求人情報サイトや転職エージェントからもたらされる求人票の情報だけでなく、応募する企業のホームページなどもしっかりと目を通します。エージェントによっては、過去の面接での質問などを教えてくれる会社もあるでしょう。

実際に働いたことのある人の口コミなども職場環境を知る上では重要です。残業の有無や年収相場、キャリアプランなどは、ホームページだけではなかなかわからないこともあります。

良い点に触れたコメントだけでなく、悪い評判についても検証しましょう。ミスマッチを防ぐためにも、事前に企業の情報はしっかりと集めるべきです。

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