ゲームエンジニアとは?なるには?仕事・スキル・年収・将来性
ゲーム業界の技術職として開発に関わる職業が「ゲームエンジニア」です。日本のゲームは国内外問わず人気があり、将来はメジャーなタイトルの開発に関わりたいと考えている方も多いのではないでしょうか。しかし、プロの開発者が具体的にどのような仕事をしているのかについては、あまり知られていません。
この記事では、ゲームエンジニアの仕事内容や必要なスキル、年収などをわかりやすく解説します。就職・転職の方法や将来性についてもみてきましょう。
目次
ゲームエンジニアとは
ゲーム制作のプロジェクトに欠かせないのが「ゲームエンジニア」と呼ばれる職業の人たちです。画面上の描画やスクロールなど動作の処理やストーリー分岐、世界観を演出するのに必要な音楽などゲームを構成する一連のシステム開発に携わる技術職のことを指します。
同じゲームエンジニアでも、所属する会社やチーム、ゲームのジャンルなどによって仕事内容が異なります。代表的なゲームの種類について、以下でみていきましょう。
家庭用ゲーム
「据え置き型」や「携帯型」などの家庭用ゲーム機で流通するゲームソフトに関わります。コンシューマーゲームとも呼ばれ、インターネットが一般に普及する前はこのタイプの開発が主流でした。家庭用ゲームは、オンラインゲームに比べ、プレイするゲーム機本体の仕様やレギュレーションが厳しい傾向にあります。
コンシューマーゲームの開発に関わるエンジニアには「完璧な製品」を作るための高度な技術、そして入念さが必要です。また、ハードの仕様をよく知り、思い通りに機能させるためのプログラミングスキルは重要です。家庭用ゲームの開発には、主にC系(C・C++・ C#)のプログラミング言語が用いられます。
オンラインゲーム
ブラウザやアプリケーションを使い、インターネットを通して遊ぶゲームのことを言います。1人で楽しむことはもちろん、オンライン上で複数のプレイヤーと交流しながらゲームを進めることも可能です。近年ではパソコンに限らず、スマートフォンや家庭用ゲーム機などで遊べるタイプもあります。
リリース後の不具合修正やアップデートが可能なため、オンラインゲームの開発にはスピード感が求められます。また、新機能の更新やイベントの開催などが多く、ゲームの発表後に運用や保守などの作業に携わる可能性もあります。
開発プロジェクトで求められるスキルとしてはC系言語のほか、Java、PHP、Ruby、Python、JavaScriptなどのスクリプト言語です。制作にUnityやCocos2d-xなどのゲームエンジンを使用する現場もあります。Web開発の知識があるということも、オンラインゲームのエンジニアに必要な条件と言えるでしょう。
スマホゲーム
スマートフォン(iPhoneやAndroidなど)を通して遊ぶゲームの需要も増加しています。App StoreやGoogle Playなどのプラットフォームを通してスマホにゲームアプリをインストールすれば、誰でも手軽に遊ぶことができるという特徴があります。
個人開発のような小規模なものから、大手IPを使用した大規模開発までプロジェクトの内容は多種多様です。今までゲームをしてこなかった人が顧客となるようなカジュアルゲームの開発も多く見られます。
ソーシャルゲームなどアプリの人気が高まり、現在のゲーム業界において最も波に乗っているジャンルと言えます。オンラインゲームと同じく、リリース後の新機能更新やイベント開催、不具合の修正が必要です。スマホゲームの開発には、iPhone(iOS)の場合はSwiftやObjective-C、Androidの場合はJavaやKotlinなどのプログラミング言語が用いられます。
3D/VR
3DグラフィックスやVR/ARなど、最新技術を取り入れて開発されるゲームもあります。VRは、人工現実感と訳されるように、まるでゲーム世界に入り込んだかのような、迫力ある仮想現実を体験できることが特徴です。拡張現実といわれるARとあわせ、まだまだ事例が少なく、最先端のテクノロジーといえます。
この種のゲーム開発に携わるためには、非常に高い技術力や専門知識が必要です。また、海外から製品やソフトウェアを導入して開発をおこなう場合、英語で書かれた文献や論文を読むための語学力も不可欠となります。
3DやVR系ゲームの開発には、C言語、C++、JavaScriptなどのプログラム言語が用いられ、アルゴリズムの記述といったスキルも要します。その他にも様々なテクノロジーに対応できるスキルが要求される分野です。
ゲームエンジニアの仕事内容
ゲームエンジニアの仕事は、上で紹介したようなゲームを開発することです。「企画」の打ち合わせに始まり、実際のゲームの「制作」、不具合がないかチェックする「デバッグ」、そして「運用」というのが主な流れになります。
ただし、ゲームの種類によっては仕事内容が変化する場合もあります。オンラインゲームやスマホゲームであればリリース後の修正が可能なため、家庭用ゲームと比べればデバッグの完璧さはそこまで重要視されません。
それでは、ゲームエンジニアの仕事の流れを詳しく解説していきます。
企画
まずはじめに、ゲームプロデューサーやディレクターと企画について打ち合わせをします。ゲームディレクターは作品におけるコンセプト立案や制作の進行、スケジュールを管理する職業のことです。
マーケティングなどビジネスの知識はあるものの、技術面に関しては詳しくないゲームディレクターもいるので、初期の打ち合わせからゲームエンジニアも参加し、企画段階から技術的な意見を取り入れることが重要となります。
制作・開発
企画の打ち合わせによって決定した内容・手順に従い、実際にゲームの制作を行います。キャラクターを動かすシステムや画面表示など担当する箇所を構築します。プロジェクトにアサインされて実際の開発や実装を担当する制作チームには様々な領域(システムの構築、動作設計、サウンド面など)の専門家がいます。
映像や音楽などのゲームクリエイターとも協力しながら仕事を進めることが大事と言えるでしょう。エンジニアなど技術スタッフの間でもチームワークを意識しながら、自分が担当するパートをしっかり進めていきます。
デバッグ
デバッグとは、ゲームのシステムが問題無く動くかの検証やバグの修正、リリースに向けたチェックを行う仕事です。テストを実施して不具合が発生した場合はその都度プログラムを修正していきます。
ゲームを完成させるには、途中途中でこの段階を何度も繰り返す必要があり、非常に根気のいる仕事になります。家庭用ゲームなど、完璧な製品状態が求められる場合にはデバッグ専門のチームを外注することもあります。
運用
完璧な状態でリリースする家庭用ゲームと違い、オンラインゲームやスマホゲームの場合は、リリース後に発生した不具合の修正やシステムのメンテナンスが必要です。新機能やキャラクターが追加されるケースがほとんどのため、引き続きデバッグも行います。
更にオンラインゲームであれば、ユーザー数やアクセスが増加するとシステムに負荷がかかることもあります。それによって生じた不具合の解決も、エンジニアの重要な仕事の一つです。
ゲームエンジニアに必要なスキル
ゲームエンジニアには主に、「プログラミング」「ゲームエンジン」「コミュニケーション」「数学や物理の知識」「英語力」といったスキルが求められます。ゲームエンジニアになるために必要な資格というのはありませんが、プログラミング言語の習得は必須です。
しかし、技術面のスキルが優れていれば十分という訳でもありません。ゲーム開発だけに限りませんが、良い仕事にはチームワークが欠かせないものであるため、コミュニケーション能力は大切なスキルと言えるでしょう。
プログラミング
ゲームエンジニアには高度なプログラミング技術が求められます。必要となるプログラミング言語は主に「C言語」ですが、制作するゲームの種類によって使う言語は異なります。オンラインゲームであれば「Ruby」や「Java」などが多く使われ、スマホゲームにおいてはiPhone(iOS)とAndroidによっても使用するプログラミング言語が違います。
そのため、ゲームエンジニアを目指すのであれば「どんなプラットフォームのゲーム開発に関わりたいか」をしっかり定めてから習得する言語を決めると良いでしょう。また、プログラミング技術は日々進化しています。新しい技術を常に追い続け、自分をアップデートしていく向上心も必要です。
ゲームエンジン
ゲームエンジンとは、ゲーム制作のための主要ツールがあらかじめ組み込まれたソフトウェアのことです。昔はゲームごとに一からシステムを開発していましたが、今はゲームのプラットフォームが増え、それぞれの端末に合わせたベース作りは困難となっています。
しかし、基本となるシステムはほとんど変わらず、細かい違いはあっても再利用することは可能です。そのようないきさつがあり、効率の良いゲーム制作のためにゲームエンジンというものが作られるようになりました。
中でも「Unity」は代表的ゲームエンジンと言え、ドラゴンクエストなど、世界的に人気のあるゲームに使われていることでも有名です。ゲームエンジニアであれば「Unity」を扱えるスキルには大きな価値があります。
コミュニケーション
ゲーム開発を円滑に進めるために必要となるのが、コミュニケーションスキル。エンジニアには一人黙々と作業するイメージもありますが、決してそんなことはありません。企画段階からリリースに至るまで、全ての仕事においてチームワークが必要です。
開発現場においては一人ひとり担当領域が決まっており、個人個人での仕事となるタスクの割合は大きいですが、開発や機能の実装について、それぞれ意見を出しあったり、スケジュールや納期の遅れ、トラブルなどについても正確な意思疎通を行うことが成功へとつながります。
数学や物理の知識
ゲーム開発には数学や物理の知識も欠かせません。ゲーム内のキャラクターの動作は、物理演算や座標計算などを元にプログラムされています。開発するゲームの種類によっても違いはありますが、そういった知識があることで仕事はしやすくなると言えます。
特に3Dアニメーションになるとリアルな表現が必要となるため、プログラムには緻密な計算が求められます。ユーザーが満足できるゲーム体験を提供するためにも、数学や物理の知識は身につけておくと良いでしょう。
英語力
英語力のあるゲームエンジニアは重宝されます。最新のゲーム技術、ゲームエンジンなどは海外で発表されることがほとんどなので、翻訳ツールなどなくとも言語が理解できるエンジニアは最新情報をいち早くキャッチできます。
また、日本のゲームは海外需要も大きいため、英語ができれば海外スタッフとのコミュニケーションも滞りなく取ることができます。英語以外にも複数の言葉を勉強することで、ゲームエンジニアとしての活躍の幅を広げることが可能です。
ゲームエンジニアの年収・給料
ゲームエンジニアの年収は個人のスキルや役職、担当する業務などによって大きく異なります。「求人ボックス」によると会社員の平均年収は498万円とされていますが、これはIT系職種全体の平均とほぼ変わらない金額です。しかし「任天堂」や「ソニー」などの大手企業に就職すると年収700万円以上となることもあり、リリースされたゲームがヒットすればボーナスも上がります。
また、最近ではスマホゲーム市場の急成長が著しく、エンジニアの需要も増えています。独立してフリーランスとして仕事を請け負うことで、年間1,000万円を超える収入が見込める場合もあります。
ゲームエンジニアのキャリアパス
ゲームエンジニアが目指すことのできるキャリアパスには、4つの代表的なものがあります。一つ目は「ゲームディレクター・プロデューサー」などの管理職として活躍する道のりです。企画発案から現場のスケジュール管理まで、ゲーム開発において総指揮を取る役割を担います。
二つ目の「リリースマネージャー」はゲームリリースを実現させるため、問題点を開発へフィードバックして解消していく仕事です。そして、三つ目の「ゲームプランナー」の仕事は企画・制作プランを設定し、業界の動向やユーザーのニーズを理解して開発へつなげることです。そのゲームが商業的に成功するかどうかは、ゲームプランナーの手腕によると言っても過言ではありません。
最後の四つ目として「フリーランスエンジニア」があります。個人事業主の立場で現場に参画してゲームの開発や運用を支援する仕事です。プロフェッショナルとして様々なタスクに対応できるよう、幅広い知識と高度な技術力が求められます。
ゲームエンジニアに役立つ資格
ゲームエンジニアになるために必要な資格というのはありません。しかし、持っているとスキルの証明になる資格はあります。下記のような資格は、ゲームエンジニアを目指すのなら持っておいて損は無いと言えるでしょう。
基本情報技術者試験
「基本情報技術者試験」は、独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)が実施する国家資格です。ゲームエンジニアを目指すなら、まずはこの資格の取得を検討してみましょう。ITエンジニアに必要な基礎知識を効率よく学べ、プログラミングを習得する前の準備にもなります。IT業界に関わる人には必須の資格と言えます。
Unity認定技術者
「Unity」は世界的に有名なゲームエンジンです。その「Unity」を扱えるスキルを証明する「Unity認定技術者」の取得は、ゲームエンジニアにとって非常に有益です。この資格は「ユーザー」「アソシエイト」「プロフェッショナル」「エキスパート」と分かれており、取得条件に実際の職務経験が必要なものもあります。取得におすすめなのは「アソシエイト」。持っていると即戦力として見てもらえるチャンスが高まるはずです。
CGエンジニア検定
「CGエンジニア検定(CG-ARTS)」とは、公益財団法人 画像情報教育振興協会が運営するCG分野における開発・設計スキルを証明できる資格です。ゲーム開発にも関わりの深いアニメーションや映像、VR・ARに関する知識が問われる資格なので、3DやVR系ゲームの開発に携わりたい人は取得を検討してみましょう。
ゲームエンジニアになるには
ゲームエンジニアは、学歴や資格が必要不可欠な職業ではありません。企業が募集する採用の求人に応募して、合格すれば入社後にキャリアを積むことが可能です。しかし、中途入社においては経験者を募集する企業が多く、未経験で就職することは難しいという事情もあります。
それでは、未経験からゲームエンジニアになるにはどのような方法があるのでしょうか。以下で詳しく解説します。
大学や専門学校に通う
学生の立場から新卒採用でゲームエンジニアを目指すならば、大学や専門学校に通うのが一般的な方法と言えるでしょう。そして、将来的にディレクターやプランナーなどのビジネスサイドを目指すなら大学に進学することが望ましいです。
しかし大学は研究機関としての立場が強く、教養的な知識やコンピュータの基礎についての技術を修めるには最適ですが、はじめからゲームエンジニアに絞って進路を選択する人には向かない可能性もあります。
ゲームの実践的な講義を求めるなら、現場のエンジニアが講師を務めることも多い専門学校は、スキルを獲得しやすい環境と言えるでしょう。ただし、大学も専門学校も修了には数年かかるため、速やかな就職を望む人は注意が必要です。
社会人向けの講座やスクールに通う
社会に出て就職した後でゲームエンジニアを目指すなら、プログラミングスクールに通うことも一つの方法です。カリキュラムに従って効率よく学べば、短期間に知識やスキルを身に付けることが出来るでしょう。
講座を受講すると独学よりも学習しやすい点はメリットですが、費用がかかるというデメリットもあります。また、スクールで習得できるのはあくまで「プログラミングスキル」であって、ゲームエンジニアの専門スキルでは無いことにも注意しましょう。
ただし、ITの基礎からプログラミングの実践スキルまで勉強できるため、まったくの未経験者よりも中途採用での転職に有利といえるでしょう。通う人には学生も多く、就職対策としても利用可能です。
独学で学ぶ
書籍やオンライン講座などを利用した独学は一番費用がかからない方法です。自分のペースで進められるということも利点の一つとなります。とは言え、学習をサポートしてくれる専門家がいないというのは大きなデメリットです。挫折する可能性もあり、初心者が独学でエンジニアとして就職することはとても険しい道と言えるでしょう。
独学での就職が不可能という訳ではありません。ゲームエンジニアは実力重視の職業なので、開発に必要な最低限のスキルがあれば、学歴や経歴は問わないケースもあります。ただし、採用試験で苦戦したり就職活動が長期化したりして、キャリアチェンジに限界を感じた場合は、他の方法を検討することも必要です。
ゲームエンジニアの将来性
最後に、ゲーム業界の将来性やエンジニアとして求人の需要についてみていきましょう。デバイスの移り変わりにより、従来のテレビゲームといった一部のジャンルは衰退するという見方もありますが、ゲーム全般という括りで見ると、娯楽だけでなく教育やスポーツ、旅行といった分野にも拡張の余地があり、今後も発展の余地は大きいといえます。
将来的なゲームの需要は今よりも大きくなるとされているのは、新型コロナウイルスによって生活スタイルが変わり、家での娯楽需要が世界的に高まったことが理由の一つです。もちろん、家庭用ゲームでは対応するハード機器やジャンルによって、徐々に売り上げが下がっているという不安要素もあります。
しかし、スマホやオンラインゲームのニーズは右肩上がりで、これからも伸びていくことが見込まれます。そして3DやVRといった最先端のゲーム開発は今後も続いていくでしょう。
ソフトウェアエンジニアとしてキャリアアップの観点からも大規模なゲーム開発に関わることはエンジニアの経験として貴重なものです。就職した後も、努力や勉強を続けスキルを磨くことで収入アップも期待できるでしょう。
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