フリーランスSEになるには?メリット・デメリット・年収・単価相場・手続き方法
業務委託でプロジェクト毎に案件に参画するフリーランスのシステムエンジニア(SE)という働き方が社会に浸透してきました。会社員として働くSEのなかにも、将来的にフリーランスとして独立したいという方も多いのではないでしょうか。
この記事では、フリーランスSEとして独立する方法、年収、単価相場、メリット・デメリット、必要な手続きなどを紹介します。
フリーランスSEになるには?
少子高齢化が進み、労働力の確保が困難になるなか、あらゆる業界で働き方が多様化しており、それはIT業界も例外ではありません。経験のあるシステムエンジニア(SE)であれば、正社員、派遣社員といった雇用契約のほか、独立してフリーランスのSEとして働くケースも珍しくありません。
それでは、SEが個人事業主として開業するにはどうすればいいのでしょうか。最初にフリーランスSEの種類を紹介した後、具体的なキャリアの作り方や仕事の探し方を解説していきます。
フリーランスSEの種類
フリーランスSEは、大きくわけて2つの種類の働き方があります。
常駐型
常駐型はプロジェクト毎に顧客と業務委託(準委任)契約を結び、相手のオフィスや指定された場所に出向いて仕事をする形態です。週5日間フルで出勤するスタイルが一般的ですが、週2日や週3日などの案件もあります。提供する技術や工数に応じて契約時に決めた1ヶ月分の報酬が毎月支払われるため、フリーランスとはいえ安定した収入を得られる点が特徴です。
常駐型はエージェント経由の案件に多くみられる形態ですが、コロナ禍以降はリモート可の求人も増えています。とはいえ、SEはプロジェクトメンバーと離れた場所ですべての作業を遂行するのはなかなか難しいため、週1日の出社や対面での打ち合わせが必要となる現場も多いのが現状です。
在宅型
在宅型のフリーランスはSOHOなどとも呼ばれる働き方です。請負契約などで顧客から受注した仕事を自宅や事務所などのテレワーク環境で行い、決められた期日までに納品する形態が一般的です。期日さえ守れば勤務時間や場所の拘束がなく、自分の都合で仕事を進めることができるので、家事や育児などとの両立をしやすい点がメリットといえます。
しかし請負契約での案件となると、仕事の内容はプログラミングやドキュメント作成などの成果物が明確な依頼がほとんどで、SE経験者が保有するスキルセットを考えると、仕事の選択肢が少ないことがデメリットです。クラウドソーシングで仕事を探す際は、単価が低い案件も多くなる点には注意しましょう。
フリーランスSEになる方法
会社を辞めてフリーランスのSEになるには、どのような過程を経ればよいのでしょうか。ここからは、フリーランスSEとしての独立方法を解説します。
会社勤めを経て独立が多い
独立してフリーランスのSEとして開業する際に、取得しなければいけない特別な免許や資格はありません。しかしだからといって誰でもすぐにフリーランスで活躍できる訳ではなく、安定的に仕事を受注できるだけの経験は必須となります。そのため、まずはSIerやITベンダー、SES企業などに就職して社員として働き、システム開発に関する一通りの業務を経験してからフリーランスになるというパターンがほとんどです。
最低1年間は経験を積む
SEの業務には、プログラミングはもちろん、要件定義や基本設計、仕様策定、システム分析、開発、総合テストなど様々なものがあります。これらを一通り経験するには、最低でも3年はかかるでしょう。そのためフリーランスSEになるには、会社員SEとして少なくとも数年の業務経験を積んでおくのが望ましいです。
プロジェクトリーダー・プロジェクトマネージャーなどの管理職を任されるには、組織によって違いはありますが、5年ほどの経験を積むのが相場となっています。また、自分が独立後に受注したい仕事では、どのような経験やスキルが求められているのか確認して会社員時代に経験が積めるよう計画的にキャリア構築することも大切です。
会社を辞めるタイミングを判断する際には、先に独立した先輩などに、市場から求められている経歴やスキルの条件を自分が満たしているか相談してみるのも一つの方法でしょう。
フリーランスSEの仕事の探し方
フリーランスSEが仕事を探す方法は大きく分けて3つあります。ここでは、それぞれの方法について特徴を確認しておきましょう。
エージェント
一つ目はフリーランス向けにサービスを提供するエージェントを利用して案件を獲得する方法です。登録にスキルシートの提出や面談が必要ですが、自分の希望条件や経歴にマッチする案件を提案してもらえます。まずは、エージェントのWebサイトから応募しましょう。
この方法では、案件開拓の法人営業や日程調整をエージェントが代行してくれるため、クライアントとの商談に集中できるのがメリットでしょう。初心者向けの案件から高度な技術が必要な高単価案件まで様々なものが揃っていて、キャリア相談なども可能なため駆け出しのフリーランスにおすすめの仕事の探し方です。
クラウドソーシング・情報サイト
クラウドソーシングサイトは多数あり、うまく活用することで、フリーランスSEの案件獲得にも役立つでしょう。プラットフォーム上でSE向けの案件を探してコンペに応募したり、自身のスキルを商材として登録して企業からの問い合わせを待つことも可能です。
SEとして副業をおこないたい場合などにも、クラウドソーシングは適している方法です。在宅ワークや低稼働率の仕事が多いため、本業があるなかでも仕事を受注しやすいからです。実績を積んで高い評価を得ると、スカウトが来る仕組みがあるサイトも多いので継続すると仕事の幅は広がるでしょう。
同様の方法として、情報サイトやSNSなどに掲載された求人募集に応募する方法もあります。企業が掲載する外注したい業務や求人内容を確認していくと、その中から自分の希望する条件に合った仕事も見つかるでしょう。クライアントと直接契約する際は、自ら契約の締結をして仕事を受注することになるため、その点は注意しましょう。
伝手や紹介
フリーランスで多い、仕事の経路に伝手や紹介があります。仕事を辞める前の会社から独立後も案件をまわしてもらったり、前職の同僚から紹介をうけ仕事に発展するなどは、SEの業界でもよく耳にする経路といえるでしょう。
過去に仕事をしたことがある企業からまた仕事を任されることや、他の顧客を紹介してもらえることも考えられます。しかしそのような紹介で仕事を探すことができるのは、フリーランスとして独立した後に仕事の実績を積んでいて評価も高いベテランの場合です。
独立した当初は、顧客がゼロということも考えられますし、案件の探し方は複数の方法を組み合わせて並行するケースも多々あります。フリーランスSE向けのエージェントやクラウドソーシングサイトにはあらかじめ登録しておき、いざというときにすぐ仕事を得られるようにしましょう。
フリーランスSEのメリット
独立した個人事業主として働くのは大変ですが、その分メリットもあります。
収入アップが期待できる
SEという職種は、会社勤めよりも、フリーで働くほうが、会社に抜かれるマージンがなくなる分だけ、収入が増えることが期待できます。会社員SEとして客先に常駐する際は、常駐先から支払われた単価から必要経費などを雇用主となる会社が差し引きます。それから残りを社員に給料として分配するという仕組みです。
一方フリーランスSEの場合には、会社が差し引く金額はなく、顧客から支払われる単価が自分の報酬となります。エージェント経由の案件では、手数料が発生するのですが、正社員が会社から引かれる金額よりも少ないため、フリーランスで働くと年収アップが見込めるという訳です。
希望の仕事を選べる
自分の希望する条件で参画するプロジェクトを選べるのは、フリーランスSEならではのメリットでしょう。具体的にどのように仕事を選ぶことができるのか説明していきます。
興味のある分野
案件を指定されることの多い会社員SEに対して、フリーランスは、自分の興味のある分野に限定して、仕事を受けることができます。興味のあることならば仕事に対する意欲が湧きやすく、作業効率も上がることでしょう。
仕事の精度が上がり高い評価を得ることも期待できるため、収入アップに繋がりやすいです。ただし技術的に遅れたジャンルの仕事ばかりをしていると、スキル面の衰えが懸念されます。先端分野の学習をしておくことも大切です。
場所や時間に融通が利く
フリーランスは働く場所や時間に融通がきくので、希望する勤務地や時間帯に合わせて仕事を選ぶのも良いでしょう。例えば勤務先が自宅から近い案件を選んだり、業務開始が昼からの仕事を選んだりもできます。労働時間を抑えたいなら、稼働日が週3日などの仕事を請けることもできます。家事や育児と両立しなければならない人にとっては、大きなメリットです。
掛け持ちや副業も可能
会社勤めだと副業が禁止されていることもありますが、フリーランスは好きなように副業ができ、掛け持ちも問題ありません。常駐と在宅の仕事の両方を、時間が重ならないよう注意して同時進行で作業を進めることもできます。SEとは関係のない仕事や、YouTubeアフィリエイトなどで広告収入を得る人も多いです。
ただし、タスク量やスケジュールを考えて仕事を受注しましょう。本業の納期を守れないと信頼を失うことになり、フリーランスSEとしては大きな痛手です。また、案件によっては掛け持ちを禁止しているものもあるので、契約前に確認するようにしましょう。
経費で節税が可能
フリーランスSEは個人事業主となり、確定申告の際に青色申告で届け出ると最大65万円の控除が受けられます。また勉強のために買った参考書や仕事で使うためのパソコンなどを、経費として計上することも可能です。このように節税ができる点は、会社勤めにはないメリットとなります。
フリーランスSEのデメリット
ここまで紹介したように、フリーランスSEには多くのメリットがありますが、やはりデメリットも存在します。
収入の不安定さ
フリーランスSEのデメリットとして最初に考えられるのは、やはり収入面の不安定さです。雇用契約に基づき会社から雇われる会社員は、労働者として法律に守られている点もあり、会社が倒産するなど、よっぽどのことがない限りは、安定した収入をえることができます。一方で、フリーランスは、収入を得ることができるかどうかは、すべて自己責任です。案件が途切れたり、病気や怪我など様々な原因により、会社勤めの時より収入が下がることも考えられます。
不景気に弱い
不況や不景気に弱い点もフリーランスのデメリットです。不景気になった時、まっさきに契約を破棄されるのが業務委託の外部スタッフです。過去のリーマンショックや東日本大震災、コロナショックなどでも、企業がIT関連のプロジェクトを中止するケースがみられました。
会社勤めならば仕事が減っても一定の給料が保証されていますが、フリーランスSEの場合はそうではありません。収入がゼロになることもあるのです。今後の日本経済や景気の動向によっては、収入が下がることも懸念されるでしょう。
ただしIT関連は、市場が拡大していますし、景気に関係なくやらなければならないことも多くあります。そのため、あまり悲観しすぎないことも重要です。
高齢になると案件が減る
スキルや経験が重視されるフリーランスSEとはいえ、50歳以上になると、単価が下がってしまったり、企業から声が掛からなくなるなど仕事を請けづらくなる傾向が出てきます。IT業界は若手のスタッフも多く、プロジェクトチームのメンバーが20代や30代中心の場合、コミュニケーションが上手くいかないことを懸念して年齢制限をすることもありえるのです。
40代や50代の起業で注意したいのは、独立して数年後に年齢のせいで仕事が確保できず、結果として収入が下がってしまうということです。講師や在宅ワークなど年齢に関わらない仕事もあるため、フェーズに応じて案件内容を切り替えるように対応できるとよいでしょう。
福利厚生や手当・有休・ボーナスがない
会社勤めだと当たり前のようにある福利厚生や手当、有給、ボーナスはフリーランスSEにはありません。考え方によっては、これもデメリットと感じることでしょう。特に社会保障制度の事業主負担がなくなり、保険料が高くなることは注意して下さい。
本業以外の雑務が増える
案件を獲得するための営業に加え、請求書の発行や帳簿を付けること、確定申告など、経理に関する雑務が増えるのはフリーランスの特徴です。このような事務作業が苦手な人にとってはデメリットと感じるかもしれません。会計ソフトや代行サービスを利用することも検討してみましょう。
社会的信用が低い
フリーランスSEはどうしても社会的信用が低くなってしまいます。そうなると住宅ローンが組めない、クレジットカードの審査が通らない、アパートの賃貸契約ができないといったデメリットが生じるので注意が必要です。しかし、持ち家や車のローンなどが全て不可能という訳ではなく、あくまでも会社勤めの人と比べるとハードルが高めということなので、そこは覚えておいて下さい。
フリーランスSEの年収
フリーランスSEの年収について、平均年収と単価相場の面から確認し、正社員SEと比較してみます。
フリーランスSEの年収
フリーランスSEの年収相場は、およそ700~800万円です。年代別にみると、20代で700万円、30代で800万円です。40代が最も高く、50代以降は下がる傾向にあります。リーダーやマネジメントなどポジションによっても報酬レンジが変化するため、上位のSEでは、年収が1000万円以上になることも珍しくないでしょう。
案件の単価相場
フリーランスのSE案件に関して、平均的な単価は60万円から80万円です。プロジェクトマネージャーやITコンサルタントなどの案件では、報酬額がさらに上がり120万円から200万円程度を稼ぐことが可能です。
正社員SEとの比較
厚生労働省の調査によると、正社員SEの平均年収は550.8万円です。この数字はフリーランスSEの年収相場よりも低い金額であるため、短期的にみるとフリーランスになると収入アップが見込めそうです。ただし、企業により給与体系が異なるため、退職金や賃金上昇を加味した生涯賃金では、会社員の収入がフリーランスを上回るケースもあります。
フリーランスSEが収入を上げるには?
ではフリーランスSEとして収入を上げるためには、どうすれば良いのでしょうか。
マネジメントなど高単価な領域で仕事をする
労働時間が同じであれば、時間あたりの単価が高いほうが、より収入が高くなります。フリーランスSEの仕事の中にも、プロジェクトマネジメントやアーキテクチャ設計を任されるような案件もあり、この場合、一般的な開発や運用の案件に比べ単価は高めに設定されています。そのような上流工程の仕事にチャレンジすることで、収入を上げていくこともできるでしょう。
トレンドの技術やジャンルで実績を作る
IT業界は常に進化しているため、トレンドの技術を身に付け、それを活用するプロジェクトに参画して経験を積んでいくことも重要です。AI、IoT、RPA、セキュリティなど需要が高まる技術では、そのような経験のあるSEを求めています。新しい分野の技術に対応することで受注できる仕事が増え、収入アップに繋がります。
単価を交渉する
クライアントと交渉して稼働する際の時給や単価をあげたり、見積もり金額の設定を見直すなども高収入を得るうえでは大事です。単価を交渉する際のポイントとして、事前に相場を把握しておきましょう。相場とあまりにもかけ離れた金額で交渉すると、信頼を失う恐れもあります。高単価で契約したい気持ちも分かりますが、自分のスキルも考慮して適正な単価で値段設定することが収入アップへの近道です。
フリーランスSEの手続き
フリーランスSEになる際には会社を退職した後と、フリーランスを開始する時にそれぞれ手続きが必要なことがあります。以下で、それぞれの詳細について解説していきます。
退職後に必要な手続き
勤めていた会社を退職した後の手続きは、まず健康保険の切り替えが必要となります。基本的に会社の健康保険から国民健康保険に切り替えることになりますが、これは自動で切り替わるわけではないので手続きを忘れないようにしましょう。また厚生年金から国民年金への切り替えも、手続きが必要です。
開始時に必要な手続き
フリーランスとして開業する際には、自分の住んでいる地方自治体に「個人事業開始等申告書」を提出する必要があります。また確定申告で青色申告を希望するなら、税務署に「個人事業の開業届出」と、「所得税の青色申告承認申請手続」の提出を忘れずに行いましょう。申請書は地方自治体や税務署に直接出向いて入手する他に、ホームページからダウンロードして入手することもできます。記入例も確認できるので、ミスなく記入してスムーズに申請するようにしましょう。
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