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ITエンジニアの平均年収を徹底解説・エンジニアの給料は高い?安い?

システムの開発や運用などIT業界で働く技術職が「ITエンジニア」です。それでは、ITエンジニアの給料は専門職として十分な水準なのでしょうか。

未経験からIT業界への転職や新卒で就職を考える際にエンジニアが稼げる給料や生涯賃金も気になるポイントです。

この記事では、ITエンジニアの平均年収や給与相場を年代や職業などの切り口で紹介します。転職や独立など年収アップの方法もみていきましょう。

ITエンジニアの給料は高い?低い?

ITエンジニアを目指している人にとって、給料が高いのか低いのかはとても関心のある問題ではないでしょうか。実際のところ、ITエンジニアの給料を高いと感じる人がいる反面、逆に低いと思っている人も存在するのが実情です。

エンジニアの年収が高いといわれる理由

ITエンジニアの年収が高い、あるいは低いと言われるのには、それぞれ理由があります。まずは、一般的な会社員に比べ給料が良いと言われる背景をみていきましょう。主な理由として次の3つが挙げられます。

国内で働く人の一般的な平均年収よりも高い

ITエンジニアの年収は、一般的な平均年収よりも高い傾向にあります。国税庁の民間給与実態調査令和元年版によると、全国の平均年収は約436万円(平均年齢46.7歳)です。

それに対してエンジニアの場合、平均年収は30代で500万円ほどになります。このような全体の傾向に基づき、ITエンジニアの給料は高いと言われることがあります。

スキルが給料に反映されやすい

ITエンジニアは専門的な技術を要する職業です。そのため対応できる技術の難易度や業務上の経験によって市場価値を判断しやすく転職などで給料がアップしやすいです。

もちろん、IT技術者として満足のいく仕事をするためには己の能力を磨く必要がありますし、高度なスキルを身につければつけるほど、給料が上がるというわけでもありません。

しかしながら、人材としての有用性と技術力が密接に関係している点はITエンジニアの特長であり、スキルレベルが向上すると評価に反映され給料が上がりやすいのです。

独立しやすいから

情報システムやソフトウェアの開発需要は年々高まっており、あらゆる業界においてITエンジニアは慢性的に不足しています。システムの開発や保守・運営に関して経験者を求める現場は多く、優秀な人材に限らずとも開発経験がある人材は引く手あまたです。そのためITエンジニアは独立しやすい職業といえます。

そして独立後にフリーランスとして働く場合に、会社員の平均年収を大幅に上回るケースが多いのです。実際に個人事業主として活躍しているITエンジニアは多数存在します。

そのようなフリーエンジニアの中には年収1,000万円を超える人も少なくありません。IT業界は起業や独立で高給取りという印象からITエンジニアの給料は高いと言われることがあるのです。

エンジニアの年収が低いといわれる理由

エンジニアの年収は全国民の平均年収よりも高い水準なのですが、それでもエンジニアの年収は低い、と言われる場合があります。なぜかというと、次のような理由があるからです。

会社や職種で給料に差がある

ITエンジニアの仕事に限らず、会社や職種によって給料に差があるのが一般的です。そのため同じ仕事内容だとしても雇用される会社や団体によって年収に差があります。平均年収の高い外資系企業や東証一部上場企業の中でも、利益率や市場シェアが高い企業に所属するITエンジニアは生涯賃金の期待値が高いです。

その反対に規模が小さかったり、競争力が低かったりする会社では、それほど高い給料は期待できません。そして、ITエンジニアのうち中小のSIerやSES企業と呼ばれる零細企業に所属するエンジニアの数も多く、決して年収は高いとはいえません。

また、同じIT業界でも相対的にプロジェクトの上流工程を担当するマネジメント職種や営業の給料は高く、下流工程の開発やテストにいくにつれて給料は安くなります。こうしたことが原因で、エンジニアの給料は安いと言われることがあります。

年功序列の給与体系のため若手は安い

会社員として働くITエンジニアの給料を年齢別に比較すると、20代よりも30代、40代、50代と年齢を経るほど年収が上昇していく傾向にあります。これは、年齢を経ることで経験を積み能力が向上したり、マネジメントへと出世する割合が向上するためと考えられますが、裏を返せば年功賃金のため若手の給与が抑えられているとも読み取れます。

ITエンジニアが正社員で働く場合、成果主義の会社といっても必ずしも能力や仕事内容に応じた賃金体系を採用しているとは限らず、若手エンジニアの給料はどうしても安くなってしまいます。

そして給料は安いにもかかわらず仕事は忙しいこともあり「頑張っているのになかなか給料が上がらない」という不満を抱える若手エンジニアも存在するのです。この、仕事内容と実際の給料のギャップにより、エンジニアの給料や年収は安いと思うこともあるでしょう。

海外の年収と比べると低い

海外のITエンジニアの年収は、日本と比較すると高い傾向にあります。特にアメリカの場合は、ITエンジニアは専門職と捉えられており、就職のハードルは日本よりも高いですが大学を卒業したばかりでも年収が1,000万円を超える求人も存在します。

日本の場合、新卒の初任給が年収1,000万円をオーバーする例はまだまだ少ないのが現状です。それらは極端な例かもしれませんが、海外の求人サイトで募集されるソフトウェアエンジニアの年収と比較すると、どうしても日本の年収水準は低く見えてしまうため、エンジニアの給料は安いと感じられるというわけです。

ITエンジニアの給料は比較対象によって高くも安くもある

上述したとおり、ITエンジニアの給料は比較対象によって高くも安くもみえてしまいます。30代で年収が600万円のITエンジニアなら全国の平均年収に比べ十分高いとみえますが、年収800万円の銀行員や1200万円のコンサルタントに比べると安く感じるでしょう。

同じ技術職でも海外と比べ日本は安いと思うかもしれません。要は、比較する対象によって、年収を高く感じたり、安く感じたりすることがあるということなのです。

ただし、現時点で給料が安いと不満に思っている人がいたとしても、転職や独立で軌道修正することは可能です。同じ会社に勤務しながら副業や投資などを通してトータルの収入をアップしていくことも十分可能でしょう。

ITエンジニアの平均年収

さて、気になるITエンジニアの詳細な平均年収ですが、実際のところはどのようになっているのでしょうか?ここでは年齢別の平均年収と、職種別の平均年収をそれぞれ紹介します。

年齢別の平均年収

年齢別の平均年収は、20代と30代、そして40代以降の3つに分けて解説します。というのは、それぞれの年代によってスキルの習得度や立場などが異なるからです。

20代

20代前半のエンジニアの年収は330~340万円です。全職種の平均は約275万円であり、この年代ですでに平均を上回っています。とはいえ20代前半では駆け出しエンジニアの割合も多く、全ての年齢のエンジニアの平均年収と比較すると、まだまだ給与は低い水準にあるといえるでしょう。

20代後半ともなればある程度経験を積み、リーダーやテックリードなどへ昇進することが可能であり、平均年収も400万円を超えてきます。なお、20代後半の全職種の平均は約319万円です。

30代

30代のITエンジニアの平均年収は、470万円を超えてきます。職種によっては平均年収が500万円を突破することもあるでしょう。全職種の30代平均は350~400万円ほどであり、30代エンジニアの年収と比較すると100万円ほど差があります。

プロジェクトの中心となってばりばり働くのがこの年代であり、マネジメントスキルを伸ばすことでさらなる高給を手にすることも可能です。

40代以降

40代エンジニアの平均年収は600万円をオーバーします。全職種の平均は450~500万円ほどであり、ここでも100万円以上高い傾向にあります。40代以降になると経験やスキルアップを重ねることにより、プロジェクトマネージャーや管理職などを目指せるようになります。

また、独立が視野に入ってくるのもこの年代の特徴です。年収のピークとなるのが50代で、650万円以上の年収が期待できるでしょう。しかし、最新のスキルや情報を追うことが難しくなる60代以降になると、年収は徐々に下がる傾向にあるようです。

職種別の平均年収

ITエンジニアは、職種によっても平均年収が異なります。エンジニアとしての人生設計をする場合、希望する職種の年収をあらかじめ把握しておくことは大事です。

プロジェクトマネージャー

プロジェクトマネージャーとは、システム開発の総合的な責任者のこと。プロジェクトの計画立案から、各工程の進捗のチェック、参加人員の管理などを行います。プロジェクトを期日までに完成させるのがプロジェクトマネージャーの仕事であり、やりがいはありますが責任は重大です。平均年収は670~680万円で場合によっては800万円を超えることもあります。

ITコンサルタント

ITコンサルタントは、ITを活用することによりクライアントの経営課題を解決するのが仕事です。ITに関するものはもちろん、ビジネスに対する広くて深い知識も必要です。またクライアントとの綿密な打ち合わせを重ね、理解を深めるためにはコミュニケーションスキルも欠かせません。平均年収は900万円ほどであり、その仕事の重要性がうかがえます。

プリセールス

プリセールスの平均年収は、580~600万円です。プリセールスの仕事は営業に同行し、自社のIT製品に関する専門的な説明をクライアントに対し行うこと。営業担当者が、自社のITシステムに関する深い知識を有しているとは限りません。プリセールスが同行することにより、顧客に自社システムについて詳しい解説ができますし、質問に答えることも可能となります。

システムエンジニア

システムエンジニア(SE)は、クライアントの求めるシステムを実際に開発するのが仕事です。プロジェクトマネージャーがいる場合にはそのもとで開発を行います。また、SEがプロジェクトマネージャーの役割を兼任することもあります。プロジェクトの上流工程部分を担うため、しっかりとした知識と経験が必要です。平均年収は550万円ほどですが、スキルによっては600万円以上の年収も可能です。

社内システム企画

社内のシステムに関する様々な業務を担当するのが社内システム企画(社内SE)です。その仕事は多岐にわたり、ヘルプデスクや故障対応、システムアナリストやネットワーク・インフラなどを請け負います。SEのようにクライアント先に出向くことはなく、自社内のみで仕事を行います。社内システム企画の平均年収は510万円ほどです。

プログラマー

SEの設計案に基づき、実際にプログラミングを担当するのがプログラマーです。プロジェクトの下流工程部分を担うため、SEほどは年収が高くはありません。平均年収は約430万円であり、全職種の平均を下回ることもあります。

とはいえスキルによって、年収が大きく変化するのがプログラマー。需要の高いプログラム言語をしっかりと習得すれば、年収600万円以上も狙えます。

ITエンジニアが年収を上げるには

ITエンジニアの年収を上げるための方法は1つではありません。次の3つの方法が存在します。自分の希望するキャリアパスに沿った方法を知り、努力を重ねるのが賢明です。

現職で年収を上げる

現在の職場で今後も働く場合、経験を積み重ねることで年収アップの可能性が高まります。自社でサービスを開発する事業会社ならマネジメントを目指したり、スペシャリストのキャリアパスがあります。

SIerなどの受託企業に入社したのなら、スキルを磨き能力を高めてシステムエンジニア(SE)からプロジェクトリーダー(PL)を目指すのが現実的な方法です。

SEとしてシステムの上流工程を担うようになったら、プロジェクトマネージャー(PM)へのキャリアアップも夢ではなくなります。資格を取得したり、勉強会などで知識を深めたりしながらチャンスを待ちましょう。

転職して年収を上げる

現在の職場では思ったような年収アップが望めないのなら、転職をするというのも1つの方法です。給与テーブルの低い会社に就職してしまった場合、スキルを磨いたからといって高い収入は期待できません。スキルに見合った年収を手に入れることが可能な会社を探し、転職してみましょう。

年収アップを目的に転職する際に役立つのが、転職エージェントです。担当者に希望する条件や自分の有するスキルなどを伝え、相応しい会社を探してもらうことができます。

フリーランスになる

経験と知識やスキルに自信があるのなら、独立してフリーランスになるのもよいでしょう。仕事や取引先を自分の裁量で選べますし、経験のある分野で独立すれば会社員時代の収入を超えることもそう難しくないでしょう。

ただしフリーランスで活動する際は、仕事の獲得や事務処理などもすべて自己責任となりますので注意が必要です。また、フリーランスになるのであれば、事前に人脈を広げておいたり、売りとなるスキルを十分に磨いておいたりするのが肝心です。

高収入なITエンジニアになるために

収入が高く稼げるITエンジニアになるためには、積み重ねておきたい経験というものが存在します。また、高めておきたいスキルもあります。次の3つがそれであり、どのようなキャリアパスを選ぶとしても効果的なので積極的に取り組みましょう。

設計やマネジメントなどの経験

プロジェクトの1部分だけを担当するだけでは高収入は期待できません。年収を上げるためには設計から実際の構築、運用までの一連の流れを経験しておくのが大事です。全体を俯瞰して見ることができるようになりますし、それにより管理者やフリーランスへの道も広がります。

小さなプロジェクトのマネジメントを積極的に担当し、プロジェクトマネージャーになるための経験を重ねておくのも効果的です。

ニーズの高い領域での経験

IT関連の進歩と変化は早く、使われるプログラム言語や需要の高い技術分野も移り変わっていく傾向にあります。ERPやCRMなど従来よりある分野に加え、クラウド、セキュリティ、AIなど需要の高い技術について経験を得ると年収向上に役立つでしょう。かつて流行っていた技術が、使われなくなるのもよくあることです。

エンジニアとして年収を上げるためには、将来にわたり需要が途切れない技術を習得し経験を重ねておくのが大事です。また、最新の技術動向に関する情報を集め、経験する努力を惜しまないようにしましょう。習得者が少なく、かつニーズの高い技術について第一人者となれば、容易に収入を向上することができるでしょう。

コミュニケーション力

プロジェクトを成功に導くためには、クライアントや事業部門のスタッフなど他のプロジェクトメンバーとのコミュニケーションが欠かせません。高収入のエンジニアを目指すにあたって、コミュニケーションスキルは必須となる能力だと言えるでしょう。

開発における要望をできるだけ達成するのがエンジニアの役割ですが、計画に無理があるようなら交渉して修正を図るのも大切な仕事です。そのためにもコミュニケーションスキルを高めておくのが大事です。

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