ギグワーカーとは?普及の背景・仕事例・メリット・デメリット・将来性
Uber Eats配達員やオンライン講師、エンジニア・プログラマーなどオンラインプラットフォームを活用して単発の仕事を獲得する「ギグワーク」という働き方が注目を集めています。
この記事では、ギグワーカーの仕事例やギグエコノミーが普及する背景、メリット・デメリットなどを紹介します。問題点や将来性についても見ていきましょう。
ギグワーカーとは
インターネット上のプラットフォームを通じて個人が請け負う単発の仕事をギグワークと呼び、ギグワーカーはそのような仕事に従事する労働者の総称です。雇用契約ではなく、仕事の発注者と受注者という関係で業務委託契約を結び、成果物や稼働内容に対して報酬を受け取ります。
ギグとは、ライブハウスでミュージシャンが単発のセッションを行うという音楽用語です。そこから転じ、ギグワーカーはギグ(単発の仕事)をするワーカー(労働者)という意味で使用されています。
Uber Eatsやコロナ禍の副業需要で注目
ギグワーカーの代表格がUber Eats(ウーバーイーツ)の配達員です。コロナ禍で宅配の需要が高まるとともに、すきま時間を有効活用できる職業として注目が高まりました。Uber Eatsへの登録が完了すれば、自分の好きなタイミングで配達員として稼働でき、配達した距離や件数に応じて報酬を受け取れます。
そのほかギグワーカーの仕事は、翻訳やデザイン、ライティング、映像編集、カメラマン、プログラミング、コンサルティング、オンライン講師、専門技師など様々な分野にわたります。
インターネットのアプリやクラウドソーシングサイトなどを利用して在宅ワークやリモートの求人募集も増えており、新型コロナによって収入が減少した人や企業に勤める人の副業としても注目されています。
アルバイト・フリーランスとの違い
アルバイトは基本的に雇用主と雇用契約を結び労働者として雇用関係の下で働くため、雇用関係のない対等な立場で仕事を行うギグワーカーとは契約形態が異なります。
一方で、フリーランスは会社に所属せず個人で仕事を請け負う働き方全般を指します。そのため、ギグワーカーの中には単発の仕事を行うフリーランスも含まれるのです。
フリーランスとギグワーカーの違いは、その仕事が単発であるかどうかという点、インターネットのプラットフォームを介して受発注が行われているかで区別されます。
準委任契約で稼働するITフリーランスはギグワーカーと似た働き方だといえますが、プロジェクトが完了するまで時間が拘束されます。その点、ギグワーカーはより部分的な作業を担当することで、空いた時間に少しの仕事をするという自由度の高さが魅力です。
各国の状況
IT技術の進歩により自由度の高い働き方や新しい労働力調達の仕組みとしてギグエコノミーが浸透してきました。個人間や企業間での受注と発注を仲介するプラットフォームが整ったことにより、世界的にギグワーカーとして働く人が増えています。では、それぞれの国のギグワーカーの状況を考察してみましょう。
アメリカ
アメリカはギグワーク先進国であり、アメリカ全体の労働者の40%がギグワーカーとされています。ギグワーカーとして1000万円以上の年収を得ている人もおり、平均年収も630万円ほどと高めです。アメリカでは博士号や専門スキルのある人がフリーランスとして働くことも多く、アメリカ経済を支える根幹となっています。
韓国
韓国において、ギグワーカーはデリバリー業が中心となります。ギグワークのためのプラットフォームも存在しますが、法的整備が整っていないためアメリカほど浸透しているわけではありません。フリーランスとして専業で働くギグワーカーよりも会社員の副業として注目されています。
日本
日本でもギグワーカーは増加傾向にあり、ランサーズやクラウドワークスなど専用仲介サイトへの登録者は100万人を超えています。日本も韓国と同様に本業というよりは副業として在宅ワークをする人が伸びており、特に20代から30代という若い世代がギグワーカーとして活躍しています。
ギグワーカーの仕事例
ギグワーカーの仕事はデリバリーサービスやIT関連、美容関連など様々な業種に及びます。その中から、いくつか仕事例をご紹介しましょう。
Uber Eats配達員
ギグワーカーの代名詞ともいえるのが、Uber Eats配達員です。自転車一つあればすぐに始められる手軽さがうけています。仕事内容は、アプリを起動して配達リクエストを受け、お店で料理を受け取り注文主へデリバリーするというものです。配達1回ごとに報酬を受け取るシステムです。
Webデザイナー
Webサイトやスマホアプリのデザイン等をおこなうデザイナーも、ギグワーカーとして働きやすい業種です。クラウドソーシングサイト上で発注されている仕事の中から好きなものを選び、制作後に注文主に納品します。仕事選びや作業、送信まですべてオンライン上で行えます。
コンサルタント
コンサルタントも、ギグワークが増加している分野です。企業が抱える1つの相談を単発仕事として行い、コンサルタントとしての報酬を得るというものです。クラウドソーシングサイト上でも発注が増えているほか、企業が期間限定で契約するケースもあります。
ギグワーカーのメリット
ギグワーカーとして働くメリットは、大きく次の3つがあげられます。
時間拘束がなく空いた時間で働ける
ギグワーカーの最大のメリットは、時間的な拘束がないことです。一般企業のように平日の朝9時から夜6時までオフィスに出向いて勤務する必要はありません。好きな時間や空き時間に自分のペースで働けます。
副業収入が見込める
本業が休みの日や隙間時間に仕事ができるので、副業収入が見込めるのもメリットです。特に、コロナ禍で出勤日数が減り給料が下がった人は、空いた時間にギグワーカーとして得意な仕事をして副業収入を得ることができます。
育児や介護と両立
ギグワーカーの仕事は自宅でできるものも多いので、育児や介護と両立できるのも魅力です。Web関連の仕事なら全てオンライン上で完結できるものが多いため、家を簡単に空けられない人でも働きやすいのがメリットです。
ギグワーカーのデメリット
ギグワーカーにはメリットが多い反面、デメリットもあります。
福利厚生がない
ギグワーカーは雇用契約を結んで働くわけではないため、個人事業主となります。そのため、一般企業のような福利厚生がないのがデメリットです。単発仕事を繰り返し行うため、昇給やボーナスなどもなく、万が一病気になった時も保障は得られません。
収入が安定しない
ギグワーカーの仕事はアプリやサイトでリクエストされている単発仕事を行うものですが、毎月必ず同じ量の仕事がリクエストされるわけではありません。自分のできる仕事の依頼が少なかったり、同業のライバルが増えて受けられる仕事が減ったりすると、収入が減ってしまいます。このように、収入が安定しないのがギグワーカーのデメリットです。
すべて自己責任
ギグワーカーは個人事業主であるため、仕事中に生じたトラブルは全て自己責任となります。作業中のケガや事故なども自己責任となり、発注元の会社が何らかの保証をしてくれることはありません。
ギグエコノミーが普及する背景
ギグワーカーによって経済を回すギグエコノミーが普及する背景には、大きく2つの理由があげられます。
単発で仕事を請け負う仕組みの普及
ギグエコノミーが普及する背景には、人々の生活がデジタル化され単発で仕事を請け負うシステムが整っていることがあげられます。ギグワークの仲介サービスも増加しており、インターネット環境さえあればどこにいても仕事を受けられるのが普及の背景となっています。
発注側のメリット
ギグエコノミーの普及の背景には、受注側のメリットが大きいこともあげられます。ギグワークでは単発の仕事に対する報酬を支払えばよいため、社員やアルバイトを雇うようよりも賃金面でコストカットができます。また、社会保険やオフィス整備など福利厚生なども必要なく、受注側はかなりの出費を抑えることができるのです。
ギグエコノミーの問題点
ギグエコノミーは新しい働き方として急速に普及していますが、いくつかの問題点も指摘されています。
格差社会の深刻化
ギグワークは高いスキルを持つ人は年収1000万円以上などの高収入を得られる反面、スキルのない人は単価の低い仕事しか行えないため収入が低くなってしまいます。スキルの有無で大きく収入が変わってしまうため、格差社会を深刻化させる恐れがあります。
不安定な雇用の増加
ギグエコノミーにおいてはギグワーカーとして非正規で働く人がほとんどなので、雇用は保証されていません。失業と常に隣り合わせの状態で働いており、ギグエコノミーが普及していけば不安定な雇用が増加する恐れがあります。
セキュリティや信頼性のリスク
ギグエコノミーにおいては、ギグワーカーだけでなく発注側にもリスクが伴います。インターネットを介しての仕事となるため、情報漏洩の可能性がつきまといます。発注者とギグワーカーが一度も顔を合わせずに仕事を行うのも珍しくはないため、セキュリティや信頼性のリスクに関する対策を施す必要があるでしょう。
ギグワーカーの今後、将来性
ギグエコノミーは、多くの国でさらに普及していく働き方と予測できます。そのため、ギグワーカーのより良い将来へ向けての動きが活発化しています。
立場や権利の整備は今後の課題
ギグワーカーの立場や権利は、社会的に弱いといえます。企業によって雇用されている労働者ではないため休業補償も受けられないほか、厚生年金にも加入できません。労働法の対象とならない安価な労働力とみなされ搾取される可能性もあるため、ギグワーカーの立場や権利の整備が重要な課題です。
ギグワーカーの労働組合や互助組織も登場
アメリカを筆頭に、世界でもギグワーカーの待遇を改善するための動きが見られます。アメリカではギグエコノミー規制法が施行されるなど、ギグワーカーの労働環境の向上が進められています。
日本でも、ウーバーイーツユニオンという労働組合が結成され、ギグワーカーの労働環境改善に努めています。そのほか、世界的にもギグワーカーの労働組合や互助組織が次々に作られています。
世界中で広がるギグワーク
働き方が多様化するなか、世界中でギグワークが広がっています。インターネット上のプラットフォームを利用した仕事の依頼やリモートワーク、副業・兼業、パラレルワークなど、新しいワークスタイルが生まれています。
今後は企業と個人の関係にもますます多様性が生じるなか、ギグワーカーが安心して働ける環境や法整備が望まれます。
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