フリーランスとフリーターの違い
働き方が多様化する中で、あえて組織に属さない働き方を選択する人もいます。フリーランスやフリーターという働き方もそのひとつです。
インターネットを通じた仕事発注や請負のプラットフォームが整い、時間や場所にとらわれないギグワーカーやリモートワークという言葉を耳にする機会もふえてきました。
この記事では、フリーランスとフリーターと個人事業主の違いや共通点を紹介します。フリーターからの転職・就職やフリーランスになる方法も解説します。
目次
フリーランスとフリーターの定義
フリーランスとフリーターについて言葉の意味は知っていても、社会での立ち位置や雇用契約など法律上の違いはわからないという人も多いでしょう。ここでは、それぞれの定義や働き方の意義などについて解説します。
フリーランス
フリーランスは、自らのスキルや専門知識などを活かして個人で仕事を請け負って働く人のことです。カメラマンやデザイナー、ライター、プログラマー、スタイリストなどクリエイティブな職種では、以前からフリーランスで働く人が多いことで知られています。働き方改革やリモートワーク・テレワークの普及などに伴い、フリーランスとして働ける職業が増えつつあります。
会社に属さない働き方
フリーランスは会社や組織に所属せず、案件ごとに企業と個別に契約を交わして働きます。プロジェクト単位で仕事をするため、スキルや専門性を活かせる案件を自分で選択することができます。仕事内容はもとより作業場所や働く時間についても個人の意思で決めることができます。
準委任契約や請負契約などの業務委託で働くフリーランスは、契約見直しや新規契約の機会が頻繁にあり、報酬を交渉するタイミングが多いです。単価や給料も自分の実績やスキル次第で上昇の余地があるため、安定して仕事を得ることができれば収入を増やすことができるでしょう。
ただし、自由業である以上は自分で営業して仕事を獲得しなければならない点は注意しましょう。企業と雇用契約を結び毎月所定の金額を給料として得られる会社員と異なり、フリーランスは仕事が入らなければ収入を得ることができません。
フリーランスと個人事業主の違い
フリーランスと同じような言葉に「個人事業主」があります。個人事業主は、法人を設立せずに個人として事業を営む人のことです。フリーランスのなかには法人を設立して活動する人もいるため、必ずしもフリーランス=個人事業主というわけではありません。
独立する際には、個人事業で開始するか、法人を設立するか、を決めておくとよいでしょう。独立後に法人を設立することも可能なため、開業時は個人事業主でスタートすることも多いです。フリーランスは働き方、個人事業主は税務上の区分と理解するとよいでしょう。
税務署に開業届を提出する際に「所得税の青色申告承認申請書」を提出しておくと、確定申告の際に白色申告ではなく青色申告を行うことができます。青色申告は複式簿記での帳簿作成など必要書類が複雑になりますが、認められる経費や控除額が大きくなるなど税制上の大きなメリットがあります。
フリーター
フリーターは、アルバイトやパートなどの非正規雇用者、または非正規雇用者になろうとしている人のことを指します。勤務先と雇用契約により給与を得る「給与所得者」であるという点が、自営業や業務委託など「事業所得」を得るフリーランスとの違いです。
アルバイトで生計を立てること
フリーターの主な収入源はアルバイトです。そもそもフリーターの語源は「フリーアルバイター」といわれますが、明確な定義はありません。フリーターはアルバイト先によって決められた時間、決められた仕事をすることによって時給を得ます。
社会人経験という点で、フリーターを社会人と見なすかどうかは、意見がわかれています。学校を卒業してから「パート・アルバイト」を含め仕事に従事した経験を含めるとする意見がある一方で、「正社員・契約社員・派遣社員」などで企業に籍をおいた経験のみとする意見もあります。
ニート・無職との違い
ニート(NEET)はイギリス英語でNot in Employment, Education or Trainingの頭文字をとった言葉です。仕事に就いていない、学校に行かない、職業訓練もしない人という意味になります。日本でもニートの定義は同様ですが、厚生労働省、内閣府はこれに15歳から34歳までという年齢制限を設けています。
一方、無職の定義は職業を持たないことです。会社を定年退職した人や解雇されて職がない人も無職となります。ニートと無職の違いは、働く意思の有無によって分けられています。働く意思がある場合は無職であってもニートではありません。
フリーランスとフリーターの共通点
フリーランスとフリーターにはいくつか共通点もあります。どのような共通点があるのかを解説します。
働く時間が比較的自由
フリーランスは雇用形態にもよりますが、時間の自由度が高い働き方です。フリーターもシフトが決まっている場合が多いものの、シフトを選ぶことはできます。会社員のように平日9時から17時まできっちりと就業時間が決まっているわけではありません。
朝が弱い人は午後から仕事を始めることもできますし、逆に早朝から昼まで働いて午後以降を自分の趣味や仕事以外のことをすることも可能です。休みも土日に限らず、自分の裁量で決めることができます。
社会的な信用が低い
会社や組織に所属していないフリーランスやフリーターは、社会的信用度は低くなります。会社員や公務員であれば、勤続年数によって社会的信用度は上がり、クレジットカードや住宅ローン、自動車ローンなどの審査にも通りやすくなります。しかし、同じ勤続年数であってもフリーランスやフリーターの場合は審査が下りない場合もあります。
フリーランスであれば所得や納税を証明する書類を提出することで、審査を通過する可能性はあります。しかし、フリーターの場合はローンの審査通過は難しいでしょう。また、アパートやマンションなどを借りる際も、フリーランスやフリーターの場合は正規雇用の人より審査が難航しがちです。
収入が安定しづらい
フリーランスやフリーターは、働けば働いた分だけ収入が増える半面、仕事がなかったり休んだりすると収入がなくなります。また、会社員のように雇用が守られているわけではないので、契約が切れた後の保証がありません。
フリーランスであれば、請け負っている仕事が終わった後に、新たな仕事を得られなければ収入が得られません。フリーターなど非正規雇用の場合は雇用先の経営状態によって、いつ契約が打ち切られるかわかりません。雇用が不安定な分、収入が安定しづらいのです。
婚活に不利
社会的信用がなく、収入が安定しないフリーランスやフリーターは婚活も厳しいと言わざるを得ません。とくに、男性の場合は、女性が産休などに入った際は収入を支えなければならないので、相手の女性にとっても安定収入がないことは不安材料になります。親世代の理解を得られにくい可能性もあります。
フリーランスとフリーターの違い
次に、フリーランスとフリーターの違いについて解説します。
専門知識・スキルが必要かどうか
フリーランスとフリーターの最も大きな違いは、専門知識やスキルの有無といえるでしょう。フリーランスの場合は、高い専門性や他人を持って替えがたいスキルを身に付け、それらを売って報酬を得ています。誰もが簡単にできる仕事ではないため、高い報酬に結びつけることもできるのです。人によっては、会社員よりもずっと高い収入を得ている人もいます。
一方、フリーターの仕事は誰でもできる補助的業務の場合が多いため、専門知識やスキルは不要です。したがって、時給は低く抑えられがちになります。時給が低いため、ある程度の収入を得るためには長時間労働を余儀なくされてしまいます。
雇用契約および制約の有無
フリーランスの場合は業種にもよりますが、案件ごとの契約や、成果に対する報酬となる場合が多くなります。請け負った仕事を完了させ、契約によって決められた成果を出せば良いので、どこでどのくらい仕事をするかは原則として自由です。仕事の進め方や方法も本人の自由裁量となります。
しかし、フリーターの場合は雇用契約の際に時間や場所、服装などに至るまで細かく制約されます。仕事の進め方についてもほとんど雇用主の管理下に置かれます。
報酬の決め方の違い
報酬についても、フリーランスの場合は雇用主と直接話し合って決めます。スキルや専門知識によっても報酬は変わります。フリーターの場合は時給である場合が多く、時給に時間を乗じた額が報酬です。
着地点と通過点
フリーランスの場合、下積みをしてスキルを磨き、知識を身に付けてそのポジションにたどり着いた人が多いはずです。現在フリーターでいる人も、いずれはフリーランスとして働きたいと思っている人もいるかもしれません。いずれにしろ、フリーランスはそこが着地点となっているのです。
対して、フリーターはあくまでバンドやお笑い芸人、俳優、声優、小説家など本業で食べていくことが難しい場合の一時的な立場であると考えている人が多いでしょう。今のポジションは通過点であり、どのようにシフトしていくか、そのために必要なことは何かを考えながら働いている状況かもしれません。
フリーターのメリット
フリーターにもさまざまなメリットがあります。主なメリットを紹介します。
自由に時間を使いやすい
フリーターの一番のメリットは時間が自由に使えることです。自分が働きたい時間に、働きたい時間だけ働けるのはフリーターの特権です。演劇や音楽など、仕事以外にやりたいことがある人などには適した働き方といえるでしょう。
責任が比較的軽い
フリーターの仕事は補助的な仕事が多く、比較的責任が軽いのもメリットといえるでしょう。マニュアル通りに仕事をしていればリスクも少ないはずです。
サービス残業がない
フリーターの仕事は時給のため、サービス残業はありません。決められた時間が来れば、仕事は終わりです。万一時間外に仕事を頼まれた場合は、その分は別途賃金を請求できます。
フリーターのデメリット
メリットもあれば、当然デメリットもあります。フリーターのデメリットについて解説します。
雇用が不安定
非正規雇用である以上、雇用は安定しません。フリーターの場合、いつまで働き続けられるのかは雇用主の経営状況次第です。失業するリスクは常に覚悟しておかなければなりません。
スキルが身につきにくい
フリーターの仕事は補助的な仕事が多く、誰でもできる仕事がほとんどです。したがって、働き続けたとしても、専門性やスキルが身に付きません。転職や就職の際にもスキルとして認めてもらえない可能性が高いでしょう。
収入が少ない
フリーターの時給はあまり高いとはいえません。また、長期で働いたとしてもなかなか昇給しません。ボーナスなどもないため、収入は低くなります。
フリーターからフリーランスになるには
フリーターからフリーランスになることは、本人の意思と努力次第で可能です。専門知識は専門学校などでも得られますし、そのほかにも方法はあります。
独立したい分野をアルバイト先に選ぶ
独立したい分野でアルバイトをするのもフリーランスへの道につながるでしょう。フリーランスのアシスタントなどになって働きながら勉強することもできます。ある程度の下積みは必要ですが、下積みを通してフリーランスに不可欠な人脈を作ることもできるでしょう。
正社員として就職する
正社員として就職したのち、フリーランスとして独立するのがフリーランスの王道です。正社員として安定収入を得て働きながら、専門知識とスキルが得られるので、フリーランスを目指す人のライフプランとしては最良といえるでしょう。
フリーランスで仕事を続けるために
フリーランスになるのは簡単ですが、続けていくのは容易なことではありません。報酬に見合った実力が伴わない人に、仕事は来ないからです。フリーランスとして仕事を続けるためには何が必要かを解説します。
目標をしっかり立てる
まずは、目標をしっかり立てましょう。どのタイミングで独立し、フリーランスとしてどういう仕事をしていくか、年収はどのくらい必要か、そのためには何をすべきかを明確にしておく必要があります。フリーランスはいつでもなれる半面、タイミングを逸するとなれずに終わってしまいます。
複数の手段で仕事を確保する
フリーランスは安定収入を得ることが難しく、収入が安定しないと仕事の質を維持するのも難しくなってきます。フリーランスは質の高い仕事をし続けなければ、いずれ仕事が来なくなります。仕事の質は絶対に落としてはいけません。そのために、複数の手段で仕事を確保することが大切です。
積極的に実績を作っておく
仕事の実績は積極的に作っておくことも重要です。仕事が安定しているときこそ新しいチャレンジを試みたり、営業をかけたりしておくのです。仕事の幅を広げ、人脈を広げることがフリーランスの仕事を続けていくために何より重要なことです。
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