G検定って?試験対策は?勉強方法、資格取得のメリットなど実際に受験した合格者が語る
機械学習やディープラーニングといった人工知能技術に関して適切に理解するためにはどのような学習をすればよいのでしょうか。資格試験に挑戦するのも勉強方法のひとつでしょう。JDLA(日本ディープラーニング協会)が主催し、ディープラーニングを事業に活かすための知識を有しているかを検定する試験に「G検定(ジェネラリスト検定)」と呼ばれる資格があります。
筆者は2019年7月6日に実施されたG検定「JDLA Deep Learning for GENERAL 2019 #2」を受験し、無事合格しました。今回の記事では、「G検定ってそもそもなに?」「どんな職種の人が受けるといいの?」といった疑問を持つ方や「G検定にチャレンジしてみたい!」という方に向けた情報を受験者および合格者の視点で発信していこうと思います。
G検定の概要から受験対象者、試験対策となる参考書・問題集を解説し、勉強方法や受験の感想についても紹介します。
目次
そもそもJDLAって?G検定はどんな資格?
G検定とは一般社団法人日本ディープラーニング協会(JDLA)が提供する資格試験の1つです。JDLAという単語をはじめて耳にする方もいるかも知れませんが、JDLAはディープラーニングを中心としたAI技術による日本の産業競争力の向上を目指し、2017年6月に設立された団体です。日本国内におけるディープラーニング研究の第一人者である東京大学の松尾豊特任准教授が理事長を務められています。
JDLA G検定(ジェネラリスト検定)の概要
G検定の試験内容は、「ディープラーニングを事業に活かすための知識を有しているかを検定する」もので、ディープラーニングや人工知能の基礎知識を持っていることはもちろんのこと、AIをどのように事業に活用するのかを決定し事業に応用する能力までを問われます。ただし、プログラミングやコーディングなど開発に関する能力までは必要ありません。
G検定のGはGeneralistの頭文字「G」をとったものです。受験者は資格取得に向け人工知能を活用するための学習を行うことで、AIに関する知見を深め、分野を限定せず広範な知識を習得することができます。
公式サイト:https://www.jdla.org/
受験対象はどんな職種の人?
受験資格や制限はないため、受講料を支払えば誰でも受験が可能です。AI分野での転職やキャリアチェンジを目指す方以外にも、これからの時代を生きるビジネスマンは一般教養として知っていると良い内容が検定されているのではないかと考えています。また、就職活動を控えた学生も十分対象のスコープに入ってくるかと思います。学習のしやすさという観点でいえば、データ分析を専門にする企業に所属するビジネスマンは分析官として知っていて当然の内容も多く含まれているため、親和性が高いといえるでしょう。
一方で、AIに関する知識を取得すべきという観点でいえば、データ分析官やAI技術を作っていくR&D(研究開発)チームだけでなく、技術を適切に理解し、導入の推進していく側のコンサルタントの方や営業の方、実際にAIを導入される側の事業会社の方などあらゆるビジネスマンが対象になってくると考えられます。AIという言葉がバズワード化している昨今、AIを提案する側はもちろん、AIを提案される側も、AI技術を適切に理解し、導入するための知識を持つことが重要です。AIのどのような技術がビジネスにどのように適用でき、どれだけのインパクトをもたらすことができるのかを適切に試算することで、例えば、人の業務工数を削減し効率化したり、商品の在庫を適切に管理したりするといったことが可能になります。
ディープラーニング G検定に合格する勉強方法は?
JDLAの公式ホームページにて、JDLAの監修書籍や推薦図書を確認することができます。G検定を受験する際は、これらの本を中心に学習を進めていくのが良いです。また、G検定合格者推薦図書についても掲載があるため、時間が許す限りこの中の書籍から学習していくと効率が良いかと思います。AIの活用事例等も紹介されている本文中に掲載されているので、このあたりを読んでみると実際のビジネスへの応用についての考え方を知ることができ、ディープラーニングの理解も深まって良いのではないかと思います。
JDLAの監修書籍や推薦図書:https://www.jdla.org/recommendedbook/
試験対策におすすめの参考書・問題集
G検定の試験対策に特におすすめの書籍を3冊挙げます。私自身もここであげる参考書を使い実際に勉強しました。
深層学習教科書 ディープラーニング G検定(ジェネラリスト) 公式テキスト
1冊目はJDLAが監修する「ディープラーニング G検定(ジェネラリスト) 公式テキスト」です。G検定のシラバスに沿って解説がなされており、初学者から上級者までおすすめできる内容です。この内容を繰り返し学習することで、試験対策としての下地ができるのではないかと考えています。バーニーおじさんに注意してくださいね。(笑)
以下の内容が公式のシラバスになっています。
- 人工知能(AI)とは(人工知能の定義)
- 人工知能をめぐる動向
- 人工知能分野の問題
- 機械学習の具体的手法
- ディープラーニングの概要
- ディープラーニングの手法
- ディープラーニングの研究分野
- ディープラーニングの応用に向けて
AI白書2019
2冊目はAI白書2019です。法律関連の内容がG検定では出題されるのですが、自動運転のレベルや法規制といった最近の動向の内容を確認することができます。とても分厚い書籍なので網羅的にやるのは大変かと思いますが、内容は非常に興味深いものが多いので、時間があるようでしたらじっくりと腰を据えて読むことをおすすめします。
徹底攻略 ディープラーニングG検定 ジェネラリスト問題集
最後に、試験の対策としておすすめするのが、ディープラーニングG検定 ジェネラリスト問題集です。ここから同様の問題がいくつか出題されていたように思います。本番試験の雰囲気を知るという意味で有効なのではないかと思います。
G検定の試験内容や問題の出題傾向は?
試験内容はシラバスの中から非常に幅広く出題される印象です。公式テキストの内容を深掘りした内容を問う問題も出されます。また、法律関連については、つい数ヶ月前に施行されたような内容についても試験問題で問われました。2019年は合計3回開催予定で、すでに2回は行われました。次回試験はJDLA Deep Learning for GENERAL 2019 #3です。11月に実施されるため、興味のある方は参考図書を少しずつ確認し、試験対策を進めていきましょう。
G検定の受験当日の流れは?
受験当日は、パソコンがあればあとは用意するものは不要です。オンライン実施の自宅受験になるので、受験ページにログインした上で開始時間になるのを待ちましょう。13:00~15:00までで試験時間は120分です。小問226問前後ということで、1つの問題を解くのにかけられる時間は30秒ほどになります。集中しないとあっという間に時間が過ぎてしまうので、時間をかけて調べるものと即回答をするものとに試験中に振り分ける必要があると思います。カンペを用意したり、インターネットでの検索をしたりすることができます。逆に早く終わってしまった場合はその時点で回答を終了することも可能です。一旦回答を保留してあとから戻って回答することもできます。
G検定を受けてみた感想・取得するといいことがある?
実際にG検定を受験してみて良かった点については、3点挙げられるかと思います。
1点目は、AIの今の立ち位置を知ることができたことです。AIがどのような歴史的経緯をたどってきたか、なぜ今ブームになっているのか、現時点でどのようなことができてできないのか、導入時のポイントはどのようなものがあるのかといったAIにまつわる幅広い知見を得ることができたように思います。私が初めてAIという言葉を聞いたときはロボットのようなものがなにかを認識して何かをしてくれるような、ソフトとハードの融合というイメージが合ったのですが、実際はそうではないということも理解することができました。また、機械学習とディープラーニングの応用といったやや技術的な内容についても概要を理解することができ、知識の幅を広げることができたように思っています。
2点目は、JDLA及びG検定に関するロゴを名刺に入れることができる点です。商談時にこの名刺を見せることで、AIに関する話題で盛り上がったり、AIの技術を紹介することができたりといった会話の糸口になることがあります。また、シラバスも含めてきちんと体系化された内容を学習しているので、例えばAIビジネスの検討における商談の際に、G検定取得者が取り引き先にいると、質の高い議論を行うことができるということが十分に考えられると思います。一方で、G検定を取得したからと言って、「AIのジェネラリストです!」と胸を張って資格を誇れるかというとG検定自体の現状における知名度不足もあり、今のところはそうではないように思います。
3点目は、G検定/E資格の合格者コミュニティ「CDLE(Community of Deep Learning Evangelists)」に参加できることです。 CDLEは文字通り、JDLAの試験に検定に合格した人のコミュニティです。オンラインとオフラインで交流する機会を持つことができます。オンラインでは、slackというチームコミュニケーションツールで合格者の皆様が繋がり、情報交換を行うことができます。AIに関連するイベントや勉強会の告知を受け取ることができます。オフラインでは、JDLA主催の合格者の会に参加することができます。JDLA理事や会員企業の方々、合格者同士で交流する機会があります。また、ディープラーニングに関わる調査/発表といった事例紹介(LT)が行われることもあります。今後ハッカソンの企画なども行われるようで、コミュニティがどんどん盛り上がっていくことが予想されます。
結論
日本ディープラーニング協会が提供するG検定は、エンジニアだけでなく営業・セールス、企画・マーケティングなど幅広い分野の担当者が受験する資格です。ここまでの内容を以下3点にまとめました。
- G検定は一般社団法人日本ディープラーニング協会(JDLA)が提供する資格試験の1つで、ディープラーニングを事業に活かすための知識を有しているかを検定するものである。
- シラバスの学習することで大きな価値があると考えられ、学習を進めることでAIやディープラーニング、機械学習とそれを取り巻く社会情勢に対する理解を深めることができる。
- 名刺にロゴを入れることができ、商談時の話題になることがある。また、合格者コミュニティ「CDLE(Community of Deep Learning Evangelists)」に参加でき、有益な情報をタイムリーに受け取ることができる可能性がある。
AI(人工知能)技術は、目覚ましく発展しています。AIを適切に活用すれば人間の行う業務を肩代わりして従業員の工数を削減したり、より人間が行うべき本質的な仕事へと導いてくれる可能性があります。また、組織にとっての重大な意思決定を、人間の勘や経験だけに頼るのではなく膨大なデータから学習したAIにも考えてもらうといったことも可能となります。今後はますます多様な業種・ビジネスにおいてAI導入の検討が進み、より我々にとって身近な存在になっていくのではないでしょうか。
G検定はAIを勉強するためのきっかけに最適です。そのため、ITやインターネット企業で働く方はもちろん、これからAI企業への就職・転職を目指す方にもおすすめの資格といえます。
筑波大学大学院 修了
大学院にて経営統計学を専攻し、営業パーソンの研究を行った。
就職後、IoTや音声の時系列データの解析、商品の需要予測、スクレイピングなどの業務に携わる。
現在は、AI研究の動向をリサーチをしながらAI×コンサルティングの領域で仕事しています。